ー奇談ー學校へ行こう9

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ドッジャァァァン!」

神姫「……あぁ、バレンタインだからヴァレンタイン大統領?」

悠「分かってくれる神姫が好き」

亘理『?!』

神姫「私はそんなに悠のことを好きじゃないわ」

亘理『!!』

悠「心に響くストレート…」

神姫「おべっかまみれよりいいでしょ」

悠「ふぁぃ…」

千世子「はーい、じゅぎょーしますなのだ。前回の続きからで、吸血鬼アルノルト・パウルから退治されてから五年、メドヴェキア村を再び原因不明の疫病が襲い、、3ヶ月で17人の死者が出る大惨事になったのだ。この事件が5年前に滅ぼされた吸血鬼パウル事件の後遺症だという噂で大騒ぎになったため、セルビアを支配するオーストリア帝国は、メドヴェキア村に3人の軍医と二人の将校をによる調査隊を派遣したのだ。」

亘理『悠ちゃん、私今回は頑張ったよ』

悠「ほう」

亘理『じゃん、バレンタインにこれを作りました!』

【おにぎり】

悠「おにぎりだ」

摩耶「おにぎりだね」

神姫「おにぎりね」

千世子「村人によると17人のうち最初に死んだ女性は、5年前にパウロに殺された家畜の肉を食べたらしいのだ。そのため村人は、この大量死は新しく生まれた吸血鬼の仕業だと考えていたのだ。」

亘理『そうおにぎりです!これなら失敗しない!そして、チョコでもない!』

摩耶「色々と迷走したんだねきっと」

神姫「これも全て悠が悪いわね」

悠「おれぇ?」

雨「ちゃんと食べてあげなさいよ」

悠「食べますけどね。」

千世子「この話しを聞いた調査隊の軍医たちは、死亡した17人全員の墓をあばき、遺体を解剖して、犠牲者たちが本当に吸血鬼になったかどうかを調べて記録したのだ。この記録は複数の軍医によって行われたため信頼度が高く、その後の吸血鬼文化の研究で重要な資料となっているのだ。」

亘理『ガッツリたべてね!』

悠「じゃあ、遠慮なくガブッ……?!」

摩耶「具は何?」

亘理『悠ちゃんがトマト好きだからトマト』

神姫「お味は?」

悠「もしゃもしゃ……できれば別々に食べたかった…」

千世子「報告書によれば、17人中12人の遺体が、、死後1ヶ月半以上経っているのに腐敗が無く、皮膚は生き生きとして、爪が生え換わり、内臓も健康そのものという状態だったというのだ。また、12の遺体の多くは、肺や胃袋の中に大量の血液が溜まっていたのだ。軍医たちはこれを見て「吸血鬼化した状態である」と断言しているのだ。」

亘理『はい、次これ』

悠「……ガブッ……ん!?」

雨「具は?」

亘理『豆腐!』

摩耶「あぁ、この前豆腐食べたいって騒いでたもんね」

千世子「報告書には、ここにあげた例以外にも、遺体の状態について生々しい記録が残されているのだ。3人の軍医たちに吸血鬼と認定された遺体は、現地のジプシーたちの手で首を切り落とされ、パウルと同様に火葬され、その灰を川に流されたのだ。こうして吸血鬼アルノルト・パウル事件は終わり、詳細な報告書はヨーロッパの知識人たちのあいだで注目の的になったというのだ。」

神姫「お味は?」

悠「不味くはないんだけど……やっぱり別々がいいな」

亘理『はい、今度これね』

悠「いったいいくつ握った」

亘理『んっ、沢山♪』

千世子「「調査報告」には、吸血鬼に襲われたパウルが、その害を防ぐために「吸血鬼の墓の土を食べ、吸血鬼の血を呑んだ」という記述があるのだ。信じられないほど不潔な行為だが、実はこの方法、東ヨーロッパでは比較的に良く知られていた方法らしく、パウル事件以外にもあちこちに同様の言い伝えが残っているのだ。」

摩耶「愛って偉大だね」

神姫「そうね。」

悠「ガブッ…かりこり…んん?」

雨「言い音してるわね」

亘理『それカシューナッツ』

千世子「吸血鬼の害を防ぐために吸血鬼を食べるという習慣は、他の地方にもあるのだ。東ヨーロッパ北部の国ポーランドの風習「血のパン」なのだ。これは、滅ぼされた吸血鬼の棺から少しずつ集めた血液を小麦粉に混ぜて練り上げ、焼いたものなのだ。このパンを食べれば、吸血鬼に襲われても平気になるらしいのだ。」

摩耶「他にどんなのがあるの?」

亘理『アボガドとキューリとちくわと……』

神姫「……なかなかのチョイスね」

悠「」どうせならチクワキューリとアボガドとトマトのサラダにしてくれたらよかったのに……もぐもぐ」

千世子「ただし、ヨーロッパを放浪する民族「ジプシー」たちは全く反対のことを教えているのだ。吸血鬼の血液を浴びたものは、死後に吸血鬼になるというものなのだ。アルノルト・パウルのたどった末路を見ると、どうやらこの一件に限っては、ジプシーたちの言い伝えの方が正しかったようなのだ。以上、アルノルト・パウルのじゅぎょーだったのだ。」
9/100ページ
スキ