ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(2/3/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

悠「……」

神姫「その手首折れてるの?」

悠「奇跡的な捻挫だ。」

摩耶「動かせる?」

悠「無理だ。指先を動かしても痛い。けど、ゲームはできる。」

花描「やるなよ」

摩耶「利き手じゃなくて良かったね。」

悠「確かにな…。」

千世子「えと、じゅぎょーして大丈夫かなのだ?」

悠「気にするな。右手があれば文字も書けるし、オナニ…」

神姫「右手をデスロールするわよ?」

悠「クロコダイル!?」

千世子「デスロールとはワニが獲物に噛みついて何回も身体ごと回って止めをさす狂気の技なのだ。」

花描「なんでもよく知ってるなぁ」

千世子「えっへんなのだ。さて、じゅぎょーなのだ。応龍が次にあらわれるのは、現在実在が確実視されている中国最古の王朝「夏」王朝の誕生神話なのだ。夏王朝の創始者といわれる伝説上の人物「禹(う)」が、まだ別の帝王の家来にすぎなかったころ、応龍は治水事業に協力するために当時の帝王に呼び出され、事業の責任者である禹の部下として働くことになったのだ。」

摩耶「ドラゴンが治水事業って、世知辛いね」

悠「おれなんか酒ので茶屋営まされて、訳のわからん超人に腕おられかけたけどな」

千世子「応龍たちの仕事は水路を切り開くことなのだ。応龍が大水路を掘り、ほかの龍はその支流をつくるのだ。作業は順調だったけど、これに共工(きょうこう)という怪物が怒りを爆発させたのだ。」

摩耶「共工って?」

悠「中国の伝説に登場する狂暴な水の神だ。紙は赤く、人の顔に蛇の身体を持ってたらしい。」

千世子「共工は、王が自分に与えた「洪水をおこす権利」を無視して、禹のような若輩者に治水を行わせることに我慢ならなかったのだ。」

悠「嫌な奴だな。」

神姫「そうね。力があるものが上に立つのは当然なのに」

悠「それはそれでどうだろうか」

千世子「共工はさらに激しい洪水を起こして中国を水浸しにしてしまうのだ。軍を率いて共工を討伐した禹は、中国の再建にとりかかるのだ。先頭を応龍に歩かせて、応龍の尻尾のたどった場所を禹が採掘するのだ。」

悠「なんか可愛いのをそうぞうした」

花描「どんな?導師服のクリクリドラゴン幼女キャッキャしながら水遊びしてるの」

神姫「病院行け。」

千世子「禹が掘った溝に沿って中国を覆う水は流れていき、水の底から大地が現れたのだ。禹はさらに奥地まで応龍を進ませて溝を掘っていく。こうして掘られた溝が、中国を東西に横切る大河「黄河」なのであるのだ。以上、応龍のじゅぎょーは終わりなのだ。」
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