ー奇談ー學校へ行こう9

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「あー……」

神姫「……」

悠「神姫さん?」

神姫「なによ。」

悠「いや、ご機嫌いかが?」

神姫「普通だけど何?」

悠「いゃ、なんでもないです。」

亘理『悠ちゃんどしたの?』

悠「いや、なんでもないんだ…」

【アルノルト・パウル】

千世子「じゅぎょーしますなのだ。セルビア人傭兵アルノルト・パウルは、ペーター・プロゴヨヴィッチと並んで、もっとも有名な「公式に認められた吸血鬼」なのだ。パウルが吸血鬼になったのは、ペーターの3年前にあたる1722年ごろらしいのだ。それから5年後の1727年、オーストリア帝国への公式報告書が作られているのだ。」

摩耶「悠君どうかしたの?らしくないよ」

悠「いやいや、神姫が別嬪だからちょっとご機嫌を窺っただけだって」

亘理『別嬪はここにもいますけど!』

悠「アッハイ」

亘理『その返事はなんだー!』
ガブッ!
悠「あぁ、この感じ久々…」

千世子「ペーターの事件とパウルの事件の大きな違いはパウルの事件の方が事件の全貌が詳しく説明されていること、パウル事件ではパウル本人以外にも吸血鬼になった者がいること、ペーターの報告書を書いたのが、地方の聖職者であったのに対し、パウルの報告書は軍人と軍医によって書かれたのだ。宗教的概念より事実の報告を重視する軍人と、最先端の科学知識を持つ医者が報告書をまとめたことで、吸血鬼パウル達にの身体に何が起きていたのかはっきりわかるのだ。」

神姫「なんか気に食わないわね。」

摩耶「頭は食われてるよ」

亘理『ガジガジ』

悠「あんまり生え際は噛まないでくれよ」

雨「ハゲろ」

悠「ハゲねーし!」

千世子「パウル事件の詳細を書いた「検査報告」という報告書が作られたきっかけは、バルカン半島西部のセルビア地方にあるメドヴェキア村で、傭兵アルノルト・パウルが吸血鬼化して村人を殺しているという報告が入り、それを軍隊が調査したからなのだ。まずは村人への聞きこみをもとに、パウロの特徴と行動を説明していくのだ。」

摩耶「一応、気にしてるんだね」

悠「気になんてしてないけど……剥げたくはないじゃん?」

亘理『悠ちゃん髪柔らかいし平気でしょ』

悠「だよな!」

雨「ストレスでハゲろ」

悠「やめろよ!」

千世子「アルノルト・パウルは、セルビア人の傭兵だったのだ。メドヴェキア村に戻ってきたパウルは、傭兵として活動中に吸血鬼に襲われたが、吸血鬼の墓の土を食べて血を呑むことで、吸血鬼の害から解放されたと常々話していたというのだ。その後パウルは、干し草運搬車に押しつぶされて死に、メドヴェキア村に埋葬されたのだ。ところが20~30日後、村でパウルに襲われた者が複数現れ、そのうち4人が死亡してしまったのだ。さらに、パウルは、村人たちが飼っている家畜も殺したというのだ。」

神姫「ストレス何かと無縁でしょ?」

悠「いやいや、こう見えても私苦労してますよ」

摩耶「女の子を口説くのに?」

悠「いやいや、そんな口説くだなんてうぇっへっへ」

亘理『ガジリッ!』

悠「本気噛みはらめぇ!」

千世子「パウルの吸血鬼化を疑った村人たちは、パウルの墓を開いてみた。すると死後40日たつのにパウルの遺体には腐臭がなく、目、耳、鼻、口から鮮血が流れ出て、棺の中が血まみれになっていたのだ。また、手足の皮膚や爪ははがれおちて新しくなっていたというのだ。村人たちがパウルの心臓に杭を打ち込むと、パウルは苦しげな呻き声をあげ、全身から血を噴き出した……と立ち会った村人は証言しているのだ。」

神姫「本当にストレスがあるのかしら」

摩耶「ムラムラしてイライラするとか」

神姫「発情した犬みたいね」

悠「くぅん」

神姫「潰すわよ」

悠「まさかの見つめただけで潰す宣言…」

千世子「その後、パウルの遺体は火葬され、その灰は川にまかれたのだ。パウルに殺されたという四人も同様に処理されたが、事件はこれで終わらなかったのだ。はい、今日はここまでで続きは次回なのだ。」
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