ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「痛っっ……」

摩耶「まぁ、いつもの落ちだったよね。」

悠「安産型じゃなかったら即死だった…」

亘理『悠ちゃんは別に安産型じゃないでしょ』

悠「きゅっと締まってて良い尻だと自負している」

雨「謎の自信にイラッとするわね。」

【吸血鬼王女】

千世子「はーい、じゅぎょーしますなのだ。若者が冒険に成功し、お姫様と結婚するというのは、昔話の典型的なパターンなのだ。だがこれに吸血鬼という要素が加わると、物語は陰惨な内容に様変わりするのだ。東ヨーロッパ北部の国ポーランドに伝わる「吸血鬼になった王女」という民話は、王女が吸血鬼になり、城の人間を食い殺すというという恐ろしい物語なのだ。物語には王女の名前が登場しないので、今回のじゅぎょーでは彼女を「吸血鬼王女」と呼ぶことにするのだ。」

悠「まぁ、摩耶のケツには負けるけどな」

摩耶「男のケツを観察して楽しい?」

悠「相手によりけりかな。」

神姫「引くわ…」

悠「でも、性別不明相手にはケツのラインで判断するじゃん?」

亘理『聞いたことないよ…』

千世子「この物語にはいくつものバリエーションがあるので、まずは基本的な設定から紹介するのだ。彼女はポーランドの王女だったが、若くして死に、吸血鬼となったのだ。王様は王女が眠る棺を見張るために兵士を派遣するが、その兵士は毎回、復活した吸血鬼王女に、吸血、毒殺、首絞めなどで殺されてしまうのだ。」

摩耶「でも、悠君のケツ性別判断は百発百中だよ」

悠「ふふん」

亘理『謎の自信にあふれている』

雨「アホね。」

神姫「一生に何度その能力が役に立つ時があるのかしら」

悠「既に一度は使い終わった後だ」

千世子「王女が吸血鬼として活動するのは、真や12時からニワトリが朝を告げるまでの数時間で、この時間までに棺の中に戻る必要があるのだ。活動中の吸血鬼王女は、城の礼拝堂を破壊したり、吸血鬼を100人呼び出して舞踏会のような大騒ぎをするなど好き放題にふるまうのだ。」

亘理『一度でも役に立ってるんだ?!』

悠「昔話さ」

神姫「カッコつけてる意味が分からない」

雨「キモウザイ」

悠「蜘蛛がぁ!」

雨「なによ!」

千世子「吸血鬼王女には、祈祷書や香袋のような神聖アイテムを越えては進めない、祈りの言葉に弱いなどの弱点があるのだ。あるバリエーションでは、人間がチョークで描いた円に入れば、王女はその人間を見失うとか、棺の中に戻るには、もともと身体につけていた服をそのまま切る必要があるのだ。」

摩耶「悠君は無駄スキルマスターだからね。」

悠「そんな褒めなさんな」

亘理『今の褒められてたかな?』

雨「知らない」

亘理『もー、雨ちゃん怒ってるよ!』

千世子「吸血鬼王女の末路には、王女が成仏するパターンと、生き返るパターンがあるのだ。前者の場合は、王女が吸血鬼となった原因(呪い)を解決する必要があるのだ。あるパターンでは、吸血鬼化の原因は王女に送られた「貧しい人々から奪った品物」だったのだ。これを持ち主に返し、儀式をすれば王女の魂を解放できるのだ。」

悠「今度ミルワーム買って来てやるよ」

雨「いらんわい!」

摩耶「冷凍マウスがいい?」

雨「どっちもいらん!」

亘理『冷凍マウスって…』

悠「蛇とかのエサだな。」

亘理『ひぃぃ…』

神姫「何を怯えるのよ」

亘理『ゾッとしますよ!!』

千世子「後者の生き返らせる場合は、吸血鬼王女を棺から出さないことが重要なのだ。なぜなら彼女の棺こそが、吸血鬼の力の源だからなのだ。ある物語では、棺の監視を命じられた名も無き兵士が、、王女が棺から起き出した後に棺の中に入って蓋を閉め、そのまま居座ることで王女を人間に戻しているのだ。この物語の王女は、呪いを受けて生まれたため肌が黒かったのだが、呪いが解けたことで肌が白くなり、人間として復活。彼女の呪いを解いた勇敢な兵士と結婚し、末永く幸せに暮らしたというのだ。以上、吸血鬼王女のじゅぎょーだったのだ。」
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