ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

義鷹「よう」

悠「ハーイ!」

義鷹「は?」

悠「ハーイ、お元気ー!」

義鷹「……頭大丈夫か?」

悠「挨拶してるだけなのにこの言われよう…」

摩耶「謎のハイテンションをみたら疑うよね。」

【イワン・ワシリー号】

千世子「はーい、じゅぎょー入りますなのだ。吸血鬼になるのは人間だけではないのだ。ロシアで1897年に完成した蒸気船「イワン・ワシリー号」は、実在した「吸血鬼船」として知られているのだ。この船が紹介されているのは、バミューダトライアングルという名前を初めて使ったといわれている超常現象研究家ヴィンセントガディスが書いた「見えない水平線」という本なのだ。」

悠「で、どした?」

義鷹「肉食うか?」

悠「何の肉?」

義鷹「駱駝みたいなのだ」

悠「駱駝ではないのか」

義鷹「駱駝みたいなのだ」

摩耶「アルパカ?」

亘理『アルパカって駱駝なの?!』

千世子「当初はなんの問題もなく動いていたイワン・ワシリー号だったが、1903年になって突如乗組員に牙をむいたのだ。乗組員は身体の奥からシビレていくような悪寒に悩まされ、突突然の麻痺や理由もなく恐怖に取りつかれるなど、身体と心に異常をきたすようになるのだ。さらに、船の甲板のうえに人間の姿をした炎や霧の塊のようなものが出現するようになり、それを見た乗組員が発狂して廃人になったり、時には命を落すようになったのだったのだ。」

摩耶「アルパカは駱駝系だよ」

亘理『そうなんだ……。馬か何かかと思ってた』

神姫「で、駱駝風ってなんの肉?」

義鷹「駱駝風の妖怪だ」

悠「食えるか!」

義鷹「毒はないぞ」

千世子「船員の相次ぐ不幸に気を病んだのか、はたまた船の呪いか、船長が三人も自殺してしまうと、この船の舵を取ろうという人間はいなくなってしまったのだ。結局、乗組員の命を吸いとる吸血鬼として恐れられたイワン・ワシリー号は、生き残った船員が見守る中で焼却処分されてしまったのだ。」

悠「だからって妖怪の肉は食えんよ」

摩耶「後楽さんに食べさせれば?」

悠「あぁ、有りだな」

神姫「有りね。」

雨「容赦ない…」

亘理『まぁ、妖怪同士だし問題はない、かな?』

千世子「イワン・ワシリー号が完成したのと同じ年に発表されたブラムストーカーの「ドラキュラ」には、この吸血鬼船の悲劇を予知するかのように、恐ろしい難破船「デメトル号」の物語が書かれているのだ。」

義鷹「で、いるのか?いらねぇのか?」

悠「じゃあ、貰う」

亘理『貰っちゃうんだ…』

悠「うちのエンゲル係数は高いからな」

摩耶「主にゆえちゃんだね。」

千世子「ドラキュラに登場するデメトル号は、実在した難破船をモチーフにして、ブラムストーカーが創作した物なのだ。その実在する難破船とは、イギリスの港町ホイットビーの沖合に流れ着いたデミトリ号という船なのだ。この船は乗員不在の状況で発見され、幽霊船としてイギリスで話題になったのだ。」

悠「ホントになぁ。」

クラフト「私がもっと提供しよう…か?」

悠「いや、それは……大丈夫です」

摩耶「触手」

神姫「何かの触手」

亘理『妖怪の肉と何かの触手……何か大変な料理ができそうだね。』

千世子「ドラキュラのデメテル号は、生きている乗員が不在、船長が船の舵に縛り付けられて死んでいる状態でイギリスに流れ着くのだ。デメテル号の場合は、乗員が居なくなった理由が鮮明に描かれているのだ実はデメトル号は、吸血鬼ドラキュラの寝どことなる「泥の入った棺」を詰み込んでいたのだ。ドラキュラはイギリスまで後悔するあいだ、デメテル号の乗員を襲って食料がわりにしていたのだ。こうしてイギリスに辿りついたドラキュラは、ロンドンで暗躍するのだ。以上イワン・ワシリー号のじゅぎょーだったのだ。」
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