ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「あんちん、あんちん」

悠「どした?」

千世子「最近元気だけど寒くないのだ?」

悠「寒いけど、最近は幾分かましだからな。頑張ってる」

千世子「頑張ってるあんちんは偉いのだ」

悠「ありがとうよ。」

【サモス島の吸血鬼】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。吸血鬼(vampire)という言葉は、ふつう「墓からよみがえり、人間の血吸う死者」のことを指すのだ。だが吸血鬼研究が本場である欧米では、血を吸わない怪物にも「vampire」の名前を使うことが少なくないのだ。」

悠「ただ、こうなると風邪が怖いよな」

摩耶「どっちのカゼ?」

悠「どっちって?」

摩耶「龍剄気孔的な風か」

神姫「……」
ごおぉぉぉ

摩耶「病気的な風邪か」

悠「怖いのは圧倒的前者だな」

千世子「その一例がギリシャの東側にある美しい海「エーゲ海」に浮かぶ島、サモス島に伝わっているのだ。この吸血鬼は人間から血を吸わないどころか、人間の仕事を手伝うお役立ち吸血鬼なのだ。」

神姫「病気になるのは体調管理ができない愚か者よ」

亘理『じやあ、もし神姫さんが風邪引いたら?』

神姫「私も愚か者のひとりってことになるわね」

悠「高圧的に自分は違うって言わないんだな」

神姫「なに?」

悠「お口チャックノリス」

千世子「サモスの吸血鬼はもともと地主から借りた土地を耕す小作人だったのだ。昔話の小作人と言えば、地主に利益を搾り取られていじめられているイメージがあるが、この小作人は単純かつ真面目な性格で、地主のことを尊敬して良く働いていたのだ。ところがある日、小作ンは死んでしまい、その日のうちに(誰にも気づかれず)吸血鬼として蘇ったのだ。」

摩耶「がりゅーゃんとかは風邪になっても気づかなそうだよね」

雨「どんなのよ、それ」

神姫「トコロテン頭だからね。体調不良っていうのが分からないのよ」

悠「さらっと酷いな」

神姫「言いたくはないけど……馬鹿なのよ、あの娘……」

摩耶「わー、神姫さんがこれまで見たことないぐらい落胆してる」

千世子「吸血鬼となった小作人は、人間を襲うどころか、毎日夜中に墓から出て、地主がやり残した農作業を手伝うようになった。地主は仕事が早く進むのに驚くばかりで、吸血鬼の存在には気づいてなかったが、しだいに飼っている牛が、よわっていくのに気がついた。実はこの小作人、毎晩のように寝ている牛を起こし畑を耕せていたので、不眠不休で働き続けた牛がダウンしてしまったのだ。これがきっかけになって小作人が吸血鬼になったことが明らかになり、小作人は墓を暴かれて滅ぼされてしまったのだ。」

悠「がりゅーは馬鹿なのがいいところだし」

神姫「いいところばかり伸び過ぎて伸びに伸びきっちゃってるけどね……」

摩耶「パラメーター表を作ったらすっごい形になりそう」

悠「足りない分は勇気で補えばいい!!!」

神姫「弾針剄」
ズパァァン!
悠「がおがいがぁぁぁ1」

亘理『結局撃たれたね』

摩耶「撃たれて完成の形だから」

千世子「サモスの吸血鬼が人間を襲ないのには理由があるのだ。東ヨーロッパに吸血鬼伝承を広めたスラブ人の文化ではなく、古代ギリシャの「動く死体」伝説に近いのだ。以上、サモス島の吸血鬼だったのだ。」
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