ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「もうすぐ今年も終わりなのだ」

悠「おれが押さえる!!さぁ、早く来年を倒すんだ!!」

神姫「いってる意味が分からない」

摩耶「人間てホントワケ分からなくなるんだね。」

雨「人間かどうかもいよいよ妖しいけどね」

神姫「確かに」

悠「なんでやねん!」

【マーヤ・ザレシュカ】

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。吸血鬼ドラキュラ伯爵には娘がいた!この衝撃的なキャッチコピーとともに登場した吸血鬼マーヤ・ザレシュカは、1936年のアメリカ映画「女ドラキュラ」で創作された、映画オリジナルキャラクターなのだ。」

悠「全身全霊立派な人間だよ。立派すぎて世界が羨んでるよ」

神姫「殺意が目覚める?」

悠「一文字もあってないよね」

摩耶「まぁ、でもそっちのがバッチリだよね」

悠「なにが?ねぇ、なにがバッチリ?」

千世子「女優グローリア・ホールデンが演じるマーヤは、いかにも上流階級といった雰囲気のある、黒髪の女性なのだ。彼女は、左手の薬指に緑色の大きな宝石がついた指輪をはめており、この指輪を使って相手を意のままにあやつる事が出来るのだ。こうして相手の自由意思を奪い、首筋から血を吸うのが、マーヤの得意とする吸血スタイルなのだ。」

悠「洗脳プレイ」

亘理『悠ちゃん?』

神姫「私は洗脳なんかしなくても言うことを聞かせられると思うけどね。」

摩耶「力づくで?」

神姫「ただお願いするだけよ」

悠「圧倒的恐怖でひれ伏させるんですね。わかります。」

神姫「弾針剄」

チュドン!!

千世子「ロンドンの女性を欲望のままに食い荒らしたドラキュラ伯爵の娘とは思えないほど、マーヤ・ザレシュカは「人間らしい」倫理観を持っていたのだ。彼女は人間の血液を求める自分の本能を嫌っており、人間に戻りたいと願っていたのだ。マーヤは胸に杭を打たれたドラキュラの死体を探しだし、これを火葬して灰にしてしまったのだ。父であるドラキュラが完全に滅びれば、自分は人間になれると考え出したのだ。しかし、それでもマーヤの本能は消えず、再び人間を襲ってしまうのだ。」

悠「ぅ……がっ……」

亘理『なんで余計なこと言うの…』

摩耶「それが悠君の本能なんだよ」

神姫「迷惑過ぎるわね。存在もろとも消し去るべきだわ」

亘理『許してあげてください!』

千世子「次にマーヤは、医学によって吸血鬼の本能を克服しようと考え、精神科医のガース意志を頼るが、もちろん治療はうまくいかず、度重なる吸血行為のせいで警察に追われる身になってしまったのだ。」

摩耶「そんなことして泣くのはがりゅーちゃんだよね」

神姫「……」

摩耶「あはっ♪」

亘理『な、何か背筋が寒い…』

雨「あの二人の温度差もきつい…」

悠「それよりおれの心配して…」

千世子「人間になるという夢を奪われたマーヤは、本能への抵抗を諦め、欲望に屈してしまったのだ。彼女は自分の治療をしてくれたガース医師に恋心を抱き、彼を永遠の伴侶にするため、ガース医師の恋人を攫って、ドラキュラ城へガース医師をおびき寄せたのだ。」

亘理『どうしたらいい?』

悠「とりあえず背中さすってくれ」

神姫「はい、鉋(かんな)」

悠「さすると同時に皮膚が削げていく!!」

神姫「死にはしないわ」

摩耶「痛くはあるだろうけどね。」

悠「そんなスプラッタヤダー!」

千世子「しかし、ガースに嫉妬したマーヤの従者によって、彼女は矢で心臓を貫かれ、永遠の命を閉じてしまったのだ。怪物の本能と女性の本能に振り回されたマーヤの人生は、嫉妬という人間の本能によって終わりを告げたのだ。以上、マーヤ・ザレシュカのじゅぎょーだったのだ。」
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