ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

摩耶「そういえば結局、銀はのこってるの?」

悠「ほんの少しな。摩耶にも送ろうかどうか悩んでたんだけど…」

摩耶「その理由をコンコンと聞いていい?」

悠「まぁ、それは今度ゆっくりラーメンでも啜りながらしよう」

雨「お茶とかじゃなくてラーメンて…」

亘理『にま~』

神姫「亘理は亘理で、ネックレス見ながらニヤケてるわね。」

千世子「はーい、じゅぎょーしますなのだ。映画評論家には名作として名高い「吸血鬼ノスフェラトゥ」だが一般向けの知名度は、これまで制作されてきたドラキュラ映画などに比べて非常に低いのだ。なぜなら、この映画は原作小説「ドラキュラ」の権利者に無断で製作され、著作権違反で発売処分になった作品だからなのだ。」

悠「それで銀がどうかしたか?」

摩耶「いや、なんで換金しなかったのかなって。もしくは溶かして銀の延べ棒にでもするとか」

悠「換金も取っておくのも駄目だ」

雨「どうして?」

悠「そんなことしたら後楽が全部持っていく」

摩耶「なるほど」

千世子「「ノスフェラトゥ」を製作したドイツの映画会社プラナ・フィルムは、登場人物の名前や特徴、物語の筋に手を加えることで「吸血鬼ドラキュラとは関係ないオリジナル作品」だと主張し、利権保有者であるブラム・ストーカーの遺族に無断で映画を公開してしまったのだ。」

悠「だからあいつが肉片になってる間に加工したんだ。」

神姫「血肉を浴びた呪いの銀なのね。コレ」

悠「銀には魔除け効果があるから大丈夫、大丈夫」

摩耶「でも、効果は薄いのかもね。」

悠「なんで?」

摩耶「だってその銀弾を浴びてしっかり再生してるじゃん。後楽さん」

千世子「ブラム・ストーカーの遺族は「吸血鬼ノスフェラトゥ」の公開後に裁判を起こして勝利。「吸血鬼ノスフェラトゥ」は、著作権違反の罪で公開禁止処分になってしまったのだ。映画のフィルムも焼却処分され、この傑作映画は、映画の歴史から抹消されるはずだったのだ。」

悠「言われてみたら確かに…」

神姫「銀ぐらいじゃ浄化できないくらい汚れてるのね。」

悠「ある意味すげぇな……後楽」

雨「……どうでもいいけど、私ソレ貰ってないわね。」

悠「なに、貰ってくれるの?」

摩耶「デレ?デレ期?」

千世子「しかし、焼却処分になったフィルムは原版1本だけで、コピーされた海賊版フィルムが各地に保管されていたのだ。監督のムルナウが事業に成功したり、アメリカで吸血鬼ブームが巻き起こるなどの追い風を受けて1929年にはアメリカで「吸血鬼ノスフェラトゥ」が公開されることになったのだ。現在では、映像の著作権が期限切れになったことで、誰でも自由に「吸血鬼ノスフェラトゥ」の映像を公開できるようになったため、我々もDVDなどで安価に視聴することができるのだ。」

雨「違う!もらえるものは貰っとくだけよ!」

神姫「銀に触れたら爆発四散しない?」

雨「私は吸血鬼でもなかったらそこまで穢れてもない!」

悠「じゃあ、残った銀で蜘蛛のアクセ作って持って来るわ」

雨「別に頼んだわけじゃないわよ」

摩耶「ツンツンツンツンツンツン」

神姫「デレデレデレデレデレデレ」

雨「そこ五月蠅いっ!」

千世子「作品の出来不出来以外の部分でゴタゴタのあった本作品だが、吸血鬼映画としての評価は高く、なみいる吸血鬼映画を押しのけて「吸血鬼映画の最高傑作」と呼ぶ声まであるのだ。1978年には、ドイツでこの作品がリメイクされているほか、2000年にはアメリカで「オルロック伯爵を演じたマックス・シュレックが、実は本当に吸血鬼だった」というユニークな設定の映画「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」が作成されているのだ。「ノスフェラトゥ」が吸血鬼映画の世界にどれだけ大きな衝撃を与えたのかが良く分かるエピソードなのだ。以上、ノスフェラトゥのじゅぎょーだったのだ。」
82/100ページ
スキ