ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「あークリスマスクリスマス。」

摩耶「投げやりだね」

亘理『もっとロマンチックになろうよ!』

神姫「無理よ。悠であの顔よ?」

悠「顔は関係ないでしょ!顔は!」

雨「存在から否定されてることを気にしなさいよ」

【オルロック伯爵】

千世子「じゅぎょーしますなのだ。ドイツ映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」の主人公、オルロック伯爵には、あの有名な吸血鬼との共通点があるのだ。実は彼は、世界一有名な吸血鬼ドラキュラ伯爵と、ある意味で同一人物といっても良い存在なのだ。」

悠「最近、おれの顔いじり酷くね?」

摩耶「いじられやすい顔ってことで」

悠「なにも嬉しくないなぁ」

亘理『っていうか、顔が見えない…』

悠「いゃん」

神姫「チッ」

千世子「黒いコートをまとった吸血鬼オルロック伯爵は、ドラキュラと同じく、ルーマニアのトランシルヴァニア地方出身の吸血鬼なのだ。彼は美女の血液を求めて国を出て、大都会で暗躍し、女性の血を吸いつくして吸血鬼にしてしまう……ここまで説明すればピンとくる人も多いだろうなのだ。映画吸血鬼のスフェラトゥは、ブラム・ストカーの小説ドラキュラを原作にした作品であり、オルロック伯爵は、ドラキュラ伯爵の変わりに置かれたキャラクターなのだ。」

悠「神姫さん、最近舌打ちが目立っていませんか?」

神姫「舌打ちをさせるような言動行動が多いせいね。」

悠「誰だまったく」

神姫「……」
バチチッ

悠「赤龍はやめてください。」

千世子「ただし、オルロック伯爵の姿は、ドラキュラ伯爵とはかなり違うのだ。毛髪の全くない頭部に大きな目と尖った耳があり、犬歯ではなく前歯二本がネズミのように伸び、鋭く長いかぎ爪をもっているという、怪物じみた外見なのだ。」

摩耶「悠君もある意味では化物じみた外見だよね。」

悠「酷くね?」

雨「鏡見てみなさい」

悠「イケメンが映る!」

神姫「赤龍踏」
トッ……バチリッ!!
悠「ぎぃっ!」

千世子「その不気味な外見と、俳優「マックス・シュレック」の好演もあって、劇中のオルロック伯爵は、いかにも何かを企んでいるような不気味な雰囲気を漂わせているのだ。余談だが、オルロック伯爵役のマックス・シュレックはその迫真の演技から公開当初「これは本物の吸血鬼ではないか」と噂されたというのだ。」

神姫「いい加減にしときなさい。次は本気で撃つわよ」

悠「ひ、ひどい…」

亘理『悠ちゃん、だいじょ…痛っ!せ、静電気?』

摩耶「埃とかぶつけよう」

雨「悲惨な結果が浮かぶわね」

千世子「この映画のストーリーは、いくつかの重要な部分を除いて、「ドラキュラ」と同じだが、主人公である吸血鬼には、かなり変更が加えられているのだ。さっき説明したように、名前が変わり、外見が東欧の伝統的な吸血鬼像に近づけられているほか、ネズミを操って「黒死病(ペスト)」という伝染病をはやらせたり、日光を特に苦手とするという新しい特徴が付け加えられているのだ。」

神姫「もっと雷(赤龍)力あげる?」

悠「ノーセンキュウ。」

摩耶「火力が良いって」

神姫「火力……」

悠「やめて、熱いのと温かいのは違うから!」

神姫「チッ」

亘理『本当に舌打ち多い…』

千世子「ストーリー面でもっとも大きな変更点は、物語のクライマックスなのだ。小説「ドラキュラ」では、ドラキュラ城へ逃げる伯爵を追いかけた若者たちが、伯爵にトドメをさしているのだ。だがノスフェラトゥでは、オルロックを殺したのはヒロインの女性なのだ。オルロックに狙われ続けていた彼女は、この吸血鬼をわざと自室に招きいれ、自分の血を吸わせるのだ。夜明け間近であることを忘れて血を吸い続けたオルロックは、弱点である日光を浴び、灰になって消滅したのだ。今日はここまで、続きは次回なのだ」
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