ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「恐怖!近づく十二月!」

摩耶「近づくっていうかもう十二月だよね。」

悠「……えんやーこらやーわちゃちゃこらやー!」

亘理『なぜにドリフ?!』

摩耶「悠ー、後ろ後ろー。」

悠「後ろ……」

神姫「……」

悠「ひゃあ、美人!」

神姫「弾針剄」

チュドン!
悠「ぐぶぁっ!?」

【ブルンヒルダ】

千世子「じゅぎょーします。吸血鬼は何を求めて血を吸うのだろうか?一般的には「血液は生命の源であり、吸血鬼の偽りの生命を保つ不可欠なもの」と介錯されることが多いのだ。だが、今回じゅぎょーするブルンヒルダという女吸血鬼の場合は事情が違うのだ。彼女が求めるのは「生命の炎」という精神的なもので、人間の血液からも摂取できるのだ。ところが彼女は血液の味を覚えてしまい、怪物として退治されてしまうのだ。」

悠「」ほ、褒めたのに撃たれた。

摩耶「言葉が飛び出てるよ」

悠「おっと驚き過ぎてつい」

神姫「第四の壁を超えるのはやめなさいよ」

悠「亘理なんて物理的に超えてるぞ」

亘理『超えてないよ?!』

千世子「ブルンヒルダは、ドイツの小説家ヨハン・ルードヴィッヒ・ティークの短編小説「死者よ目覚めることなかれ」の主人公で、長い金髪の美女なのだ。若くして死んだ彼女は、夫のウォルターと出会った謎の魔法使いの力で復活するのだ。復活したブルンヒルダには、相手を威圧する神通力のような視線という特殊能力があるが、日光が苦手だったり、新月の晩にすべての能力が封印されるという弱点があったのだ。」

悠「しかしクリスマスとか爆発しないかな」

雨「どういう状況よ」

悠「24、25日はただの24、25日になればいい」

摩耶「悠君は25日特別な日じゃん」

悠「ホワイ?」

摩耶「家賃の集金日」

千世子「ブルンヒルダが生命を維持するには「生命の炎」を燃やし続ける必要があるのだ。これは人間の愛情やスキンシップなどの「暖かみ」からも摂取できるのだ。」

悠「特別は特別でも特別気分の悪い日だな」

神姫「多分。悠が気分悪いと気分良くなる人も居るのよ」

悠「さらっと辛辣なこと言われてる」

摩耶「笑えるね!」

悠「笑えませんよ?!」

千世子「あるときブルンヒルダし、のどの渇きに耐え切れず、ある青年の静脈から「暖かみ」つまり血液を吸ってしまうのだ。以降、血の味を覚えた彼女は近所の子供を優しい笑顔と言葉で安心させ自分の家に連れ込み、膝の上で子供が寝たところを見計らって、子供の胸から血を吸うようになるのだ。血を吸われた被害者は、髪は灰色となり、生き残ったとしても死人のように皺だらけになってしまうのだ。」

亘理『悠ちゃん元気出して』

悠「いや、元気は元気ですよ?」

摩耶「これから無くなっていくんだよね」

悠「おやおや、今日の摩耶君はすこぶる毒舌が冴えてるなぁ」

摩耶「調子が良いんだよ」

悠「はは…」

千世子「夫のウォルターだけは襲わないようにと我慢していたブルンヒルダだが、やがてガマンに限界が訪れ、ウォルターの血を吸おうとするのだ。驚いたウォルターは逃走して、謎の魔法使いから彼女を倒す方法を聞きだして逆襲するのだ。ブルンヒルダは力を失う新月の晩に、夫に胸を刺されて二回目の死を迎えたのだ。」

雨「摩耶はいったい悠をどうしたいの?」

摩耶「どうにもしたくないよ?今のままの仲良し関係でオッケー」

悠「仲良しこよしです」

摩耶「ねー」

悠「ねー」

雨「……」

神姫「考えたら負けよ」

千世子「「死者よ目覚めることなかれ」は、吸血鬼小説の決定版「ドラキュラ」よりも90年近くも昔、西暦1800年に誕生した作品なのだる吸血鬼を題材にした小説の中で最も古い部類に入る作品で、アメリカの吸血鬼研究家マシュー・バンソンの吸血鬼解説書「吸血鬼辞典」では、文学の世界にはじめて登場した女性吸血鬼として彼女のことを評価しているのだ。以上、ブルンヒルダのじゅぎょーだったのだ。」
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