ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「今日からヴァンパイアの授業だっけ」

神姫「らしいわね」

悠「吸血鬼っていったらもうDIOしか浮かばないんだけど」

摩耶「最高に?」

悠「ハイってヤツだぁぁぁ!WRYYYY!」

雨「やかましいわ!」

【ルスヴン郷】

千世子「はーい、じゅぎょーしまーすなのだ。やせ形の体型に青白い肌、コートを着こなした紳士というのが、多くの人がイメージする吸血鬼像なのだ。有名なドラキュラが、こういう吸血鬼の元祖だと思われがちだが、実は違うのだ。紳士的吸血鬼の元祖となったのは、ドラキュラより78年も前に書かれた小説「吸血鬼」の主人公、ルスヴン郷なのだ。」

悠「目からビームだしたり、柱を垂直移動するのも吸血鬼」

神姫「初期DIOね」

悠「気化冷凍法って超ヤバいよな……」

摩耶「悠君は冷凍って言葉にびくびくしてない?」

悠「うん。それ、超してる。」

千世子「ルスヴン郷は、灰色の瞳と鉛のような色の肌を持つ、正体不明の貴族なのだ。人物の好き嫌いを露骨に表に出す性格で、派手な美女や嫌いな人物には目もくれないが、無垢な少女や貞淑な人妻相手にはプレイボーイに変身するのだ。」

悠「露骨なヤツだな」

神姫「ひとのこといえるの?」

悠「おれはそんなことないよー」

摩耶「柏さんとか」

悠「あいつ死なねぇかな…」

亘理『わー、露骨だぁ』

千世子「ルスヴン郷には、とびぬけた能力こそないものの、弱点が少ないのだ。圧倒的な腕力や変身能力、生命力はないが、日光を苦にしないのだ。また、ドラキュラなど一般的な吸血鬼には「故郷から遠くに離れられない」という制限があるが、ルスヴン郷はイギリスからギリシャまで人間の青年と一緒に旅行するなど、長距離移動が可能なのだ。ただし、ニンニクや十字架などが弱点かどうかわからないのだ。ルスヴン郷は作中で、こうした「吸血鬼退治の定番アイテム」で攻撃されたことが無いからなのだ。」

悠「いやいや、露骨じゃないよ。博愛主義」

摩耶「窈さんとは最近話ししてる?」

悠「誰?」

神姫「隣に住んでる親戚をコレだからね。」

悠「やだな、神姫。ウチの隣は空き家だよ。あははは」

亘理『目が笑ってない…』

千世子「ルスヴン郷の特殊能力は、復活、呪い、誓いの強制の3つなのだ。まずルスヴン郷は、肉体が死んでも、月が昇るときの光で復活できるのだ。そして、小さな罪を犯した人間に呪いをかけ、さらに堕落させるのだ。最後の能力「誓いの強制」は、物語の鍵となる能力なのだ。ルスヴン郷と約束した人物は、その約束を破れなくなるのだ。ルスヴン郷は、人間の青年との旅の途中「自分の身に起きたことを誰にも話さない」という誓いを青年にたてされるのだ。その後青年はルスヴン郷の正体を見破るのだが、誓いのせいで誰にも話せない。やがてルスヴン郷は、なにもできない青年に見せびらかすように青年の妹と結婚し、彼女の血を吸いつくしてしまうのだ。」

悠「まぁ、大丈夫だ。男はともかく女の毛嫌いはほとんどない」

摩耶「大から小まで人から妖までなんでもかんでも大好きで蕩かしまくりだもんね!」

悠「そんなことないですよ?!」

亘理『ガジガジッ!』

悠「久々に食いつかれた……」

神姫「じゃあ、私は貫くわね」

悠「意味が分かりませんやめてください。月の光で復活できません!!」

千世子「この作品で、吸血鬼が貴族的な美系として描かれたのには理由があるのだ。作者のジョン・ポリドリは、バイロン郷という有名な詩人貴族の専属医師だったが、彼は、美系で話し上手だが傲慢で嫌味なバイロン郷のことを嫌いになっていたのだ。そこでポリドリは、バイロン郷の嫌な部分をモデルに、ルスヴン郷というキャラクターを生み出したのだ。これがヨーロッパ各地で大人気となり、以降の吸血鬼の多くが、ルスヴン郷のような外見とキャラクター性を持つようになったのだ。以上、ルスヴンのじゅぎょーだったのだ。」
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