ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(1/28/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

悠「うーむ…」

花描「どした?」

悠「またイヤホンの調子が悪い」

花描「どんな使いかたしてるんだ?一ヶ月に一、二本壊してないか?」

悠「二ヶ月に一本くらいだよ」

千世子「あんちんはクラッシャーだな」

摩耶「フラグもブレイクするしね」

悠「しねぇよ!」

千世子「とりあえずじゅぎょーをするのだ今日はこれなのだ」

【カンヘル竜】
生息地域:マヤ帝国(メキシコ)
出典:マヤ神話『チラム・バラムの預言』

悠「マヤ、摩耶神話だってよ」

摩耶「うん、逆だね」

千世子「カンヘル竜はメキシコ南部付近のマヤ地域で栄えた「マヤ文明」で信じられていた竜人間で、キリスト教と深い関係があるのだ。じつはこのドラゴンは、ドラゴンであると同時にキリスト教の天使でもあるのだ。」

花描「竜と天使のハイブリットか」

悠「魔改造じゃね?」

千世子「カンヘル(cangel、あるいはcanhnel)とはマヤ語で「風の精霊」を意味する言葉だったが、のちに「天使」をあらわすマヤ語になったのだ。また、マヤの支配者が権力の象徴として持つ、竜の頭部をかたどった棒も「カンヘル」と呼ばれていたのだ。」

悠「竜頭骨だな」

神姫「違うでしょ」

千世子「カンヘルについて記録した書物で有名なのは、大航海時代まっただなかの15~16世紀、マヤの北西にあるアステかにスペイン人が流入したのと同時期にマヤの最高神官が書いた、難解な預言書「チラム・バラムの預言書」なのだ。この本でカンヘルは「風の竜」と表現されるのだ。」

悠「クシャル?」

神姫「悠はモンハンネタ好きね」

千世子「その姿は詳しく書かれていないけど、手のひらがあると読める記述があるため、前足は人間の腕に近い形状かもしれないのだ。「チラム・バラムの預言書」は、キリスト教の神話とマヤ土着の神話が融合した内容になっているのだ」

悠「魔法カード超融合発動!カンヘル竜で攻撃」

摩耶「ライフで受けるよ」

花描「それ別のだな…」

千世子「この書物においてキリスト教の神は、まだ天も地もなかった時代に、四匹のカンヘル竜をしたがえて宇宙に現れたのだ。この四匹はそれぞれ、赤、白、黒、黄色とべつべつの色を持っているのだ。マヤ文明ではこの四色は東西南北をあらわす色で、神はセルピヌスというカンヘル竜をつくったのだ。」

摩耶「中国の四聖獣みたいなものかな」

悠「やはり摩耶神話か」

摩耶「僕が新世界の神になる。」

神姫「デスノ?」

千世子「セルピヌスは天使に神の祝福を授けるのが仕事だったのだ天使たちが立つ地面がないので「掌上で父の祝福を行った」とあるのだ。これが神の掌かセルピヌスの掌かはわかないけど、もしセルピヌスの掌なら、彼はかなり巨大な体だったことになるのだ」

悠「摩耶が金剛の掌に乗るわけだな」

摩耶「全然違うよね。流石に金剛くんでも僕を掌にのせるのは無理だよ。踏み潰すのはいけるけど」

悠「……(どっちがどっちのをだ)」

千世子「マヤの最高神官が、なぜ外来の宗教であるキリスト教を自分達の神話に取り入れたのか?それはキリスト教の宣教師が、キリスト教の信仰を広めるための手段として、キリスト教の教義を現地の信仰とからめて説明したからだなのだ。元々は竜型の棒や風の精霊だったカンヘルが天使扱いになったのは、キリスト教の天使をマヤ神話の登場人物で表現し、人々に理解させやすくするためだったと考えられるのだ。以上、カンヘル竜のじゅぎょーだったのだ」
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