ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ハロウィンということで……南瓜の煮物を作ってきた。」

千世子「お菓子でも無くなってるのだ!」

悠「自分でいうのも何だが相当の出来だぞ。煮物」

神姫「南瓜だけ煮たの?」

悠「鳥ミンチと一緒に煮た。ご飯のおかずにももってこいですよ。奥さん」

亘理『奥さんやります!』

摩耶「じゃあ、嫌味な姑やるね」

千世子「いや、じゅぎょーしますよなのだ。」

神姫「どうぞ」

【アブディエル】

千世子「天使の中には誘惑にかられて堕天してしまったり、神の命令に背いて叱られたりするものが少なくないのだ。ここで紹介するアブディエルは、そんな心の弱さとは全く無縁で、天使の中でも特に強い忠誠を捧げている天使なのだ。」

悠「しかし、次はクリスマスマスと正月か」

雨「マスが多い」

摩耶「この時期になるとイベントゴリ押しだからねぇ。商戦にはもってこいだ」

神姫「クリスクスツリー的な物が既に置いてある店あったし、年賀はがきも始まってたわよ」

悠「年賀状なんて書いたことねぇな」

千世子「アブディエルには「アルカデ」「アルガード」という名前もあるが、本来の名前はヘブライ語で「神の下僕」を意味するのだ。名は体を表すとはこのことなのだ。」

摩耶「ボクは毎年、出してるけどね。悠君に」

神姫「手書き?」

摩耶「手書き」

亘理『摩耶君、豆だね』

摩耶「まぁ、4、5人しか出さないからね。あとはメール」

神姫「最近は大抵メールよね」

千世子「マイナーだったアブディエルという天使を有名にしたのが、17世紀の詩人「ジョン・ミルトン」が書いた「失楽園」なのだ。この作品で、アブディエルはその名前の由来にもなった忠誠心を存分に発揮しているのだ。」

悠「おれはメールすら送らないぞ」

神姫「知ってる」

悠「アッハイ」

亘理『年賀状欲しいなぁ……。』

摩耶「じやあ、送ってあげるっていいたいけど……ここって届くの?」

亘理『どうなんだろう?』

千世子「「失楽園」第5巻で、神に反逆することを決意したルシファーは、部下の天使たちを仲間に誘うのだ。だが神への不動の忠誠心を持つアブディエルだけは従わなかったのだ。そればかりかアブディエルは「自分たち天使を創造した存在に反抗するというのは、操り人形が人形師に反抗するようなもので、正気の沙汰ではない」と宣言し、天使の中で最強の存在であるルシファーを、逆に説得しようとしたのだ。」

冥「ちゃんと届くナ。」

悠「へーい、管理人ちゃん。」

冥「どうもナ。」

摩耶「届くんだ」

冥「ここの住所でちゃーんと届くのナ。郵便ポストにいれなくても大丈夫ナ♪」

神姫「それは実にホラーね」

千世子「アブディエルは忠誠心が厚いだけでなく、勇敢な戦士でもあるのだ。結局神に反逆したルシファー達が、天使たちと激しい戦いを繰り広げたとき、アブディエルはかつての上司であり、最強の悪魔であるルシファーに、強力な一撃を見舞っているのだ。あまりの攻撃に、ルシファーは10歩後ずさって膝をついているのだ。」

摩耶「切手は?」

冥「それはちゃんと必要ニャ」

悠「あぁ、必要なんだ」

摩耶「まぁ、なんにしても届くんなら書いて送るね」

亘理『ありがとう!』
チラ

悠「……え?なに?」

千世子「余談だが、アブディエルの名前には「神の下僕」という由来のほかに、もう一つ説があるのだ。旧約聖書のひとつで、ユダヤの歴史書である「歴代誌」に「アブディエル」という人名があり、これこそが名前の元になったというのだ。」

神姫「一応聞くけど……私のも欲しい?」

渡り『ご迷惑でないのなら頂けたら嬉しいです』

悠「丁寧だな」

神姫「なら書いてあげる。」

悠「この流れで書かないとおれって非難される?」

冥「私はするナ」

悠「わかった、おれも書こう。書けたらだが」

亘理『書くの!』

千世子「アブディエルが登場する「失楽園」は、17世紀のイギリス詩人ジョン・ミルトンが、「創世記」の第3章を元に書いた、天使と悪魔の物語なのだ。この作品はダンテの「神曲」とともに、キリスト教文学の代表作と言われているのだ。「失楽園」の世界観は当時のカトリック教会からも高い評価を受け、のちのキリスト教の教義に影響を与えるほどだったのだ。以上、アブディエルのじゅぎょーだったのだ。あと、私も書くのだ。」

亘理『チヨちゃん……大好き!ハロウィンて凄い!』

悠「ハロウィン関係ないな」
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