ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「単純な菓子ならすぐに出来るんだけどな。彩とか適当になるけど」

摩耶「お客受けはイマイチそうだね。」

悠「そこが問題」

神姫「普通にケーキとかにしたらいいじゃない」

悠「うちは茶屋だ」

神姫「今時どこの茶屋でもケーキのひとつふたつは出すわよ」

千世子「はーい、ミスラのじゅぎょーの続きを始めますなのだ。ミスラは天使になる前、まだ神だったころのミスラがどんな属性を持っていたかは明確ではないが、真実と秩序、万物の創造者、人類の救済者、太陽神といった属性が有力な候補に挙げられているのだ。天使ミスラとの類似点も多いようなのだ。」

悠「それをいわれたら辛い」

神姫「なにも辛くないでしょ。」

悠「お兄さんは和菓子専門なんだよ」

亘理『和菓子もいいと思うよ!』

摩耶「和菓子風ケーキはセーフなの?」

悠「ケーキ風和菓子ならセーフかな」

千世子「ゾロアスター教に吸収されたとき、開祖ゾロアスターはミスラをアフラ・マズダにつかえる天使としたが、昔から深く信仰されていたミスラの影響力は、天使となった後にも消えなかったのだ。ミスラに対する信仰は根強く残り続けたのだ。」

雨「違いが分からない」

悠「蜘蛛とザトウムシみたいな違いだ」

雨「蜘蛛を引き合いに出すな!」

亘理『ザトウムシって何?』

摩耶「蜘蛛みたいな虫だけど実際はダニに近い系の虫」

神姫「蜘蛛は体が頭部と腹部の二つに分かれてるけど、ザトウムシは一体型で区別がないの。ちなみに昆虫は頭部、胸部、腹部と三つね。それと、糸を出したり巣を作ったりすることも無いわ」

亘理『なんで皆虫に詳しいの…』

千世子「これを証明するようにゾロアスター教の経典「アヴェスタ」には、ミスラへの讃美歌があり、アフラ・マズダと同等の「神」としてあがめられているのだ。」

悠「いや、雨の場合はとりあえず蜘蛛を引き合いに出した方が分かりやすいかなって」

雨「そんな気遣いは無用」

悠「あ、ちょっと聞きたいことあるんだけど」

雨「なによ」

悠「最終進化は上半身が人間で下半身が蜘蛛なアラクネタイプになるのか、それとも背中から巨大な足が出て阿修羅みたいになるのか、はたしてネルスキュラみたいになるのかどれなんだ?」

雨「顔の形がジャガイモみたくなるまで蹴り飛ばしてやろうか」

千世子「ミスラの信仰はゾロアスター教の中に取り込まれたが、一方で独立した宗教としても生き残った。「ミトラス教」と呼ばれるその宗教は、西はイングランドや北アフリカから、東はインドにまでかなり広く伝わっていて、各地からミトラスを崇めるための神殿や遺跡が見つかっているのだ。」

悠「最近気がついたんだが女妖は足を使うのが多いな」

摩耶「そう?」

悠「恋もことあるごとに蹴ってくるし、亘理と飛び蹴りとか足で絞めてくる、そしてネルスキュラ亜種もけっ飛ばそうとしてきた」

雨「ネルスキュラいうなっ!」

神姫「蜘蛛は足が多いからそれならそれで分かるけど天井下りと座敷わらしはどうなの?」

千世子「当時のミトラス教は宗教としての力がとても強く、研究者たちの中には「もしもヨーロッパがキリスト教化しなければ、ミトラス教がスタンダードになっていただろう」という意見もあるほどなのだ。実際。紀元1世紀頃にローマ帝国に持ち込まれたミトラス教は、当時ローマ帝国と敵対していたペルシアの宗教であったにも拘らず、大いに歓迎され、国中で信仰されていたと言われているのだ。」

悠「そのあたりどうなんだ?」

亘理『どうと言われましても……あ、生前陸上部だったよ!』

摩耶「なるほど、足には関わりあるね」

悠「とすると……問題は恋か。運動するタイプじゃないしなぁ」

雨「殴る程度じゃ気が済まなくなって仕方なく蹴りを体得したんじゃない?」

摩耶「それだね!」

悠「えぇ……」

千世子「しかしそんなミトラス教も、ローマ帝国がキリスト教を国教としたことがきっかけで勢力の縮小をまねき、結局は滅んでしまったのだ。以上、ミスラのじゅぎょーだったのだ。」
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