ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「南瓜を可能な限り裏ごしして餡を作って形を整えてジャクオーランタンの形に仕上げてみた。」

千世子「可愛いのだ!」

亘理『悠ちゃんが作ったとは思えない!』

悠「褒められてる?」

摩耶「バッチリバッチリ」

悠「ならよしっ!」

【ミスラ】

千世子「むぐむぐ、ごっくん。はい、じゃあ、じゅぎょーしますなのだ。ミスラはゾロアスター教で信仰されている天使なのだ。天使の中でも特にくらいの高い存在で、全ての天使たちのトップとみられることも多いのだ。非情に人気のある天使で、最高神の「アフラ・マズダ」ではなく、いち天使にすぎないミスラを信仰する人々もいたほどなのだ。」

神姫「単純ね。」

摩耶「それが数少ない悠君のいいところだし」

亘理『単純ていところ?』

神姫「良いところよ。うちのがりゅーも単純過ぎてトコロテン頭だけどそれが良いところだし」

亘理『トコロテン頭?』

神姫「一個のことを考えると今まで考えてたことが頭から出ていくのよ」

千世子「天使ミスラがつかさどるのは太陽なのだ。ミスラは朝になると、朝日よりも先に「ハーラー山」という山頂に現れ、地上の人間たちを見守るのだ。ミスラには人間を見守ると同時に、人間が悪行を行っていないか監視する役目もあるのだ。先の耳と一万の目を持つミスラにかかれば、地上の出来事などすべてお見通しなのだ。」

悠「すべてまるっとお見通しだ!」

摩耶「例えば?」

悠「えーと……雨は蜘蛛だとか」

雨「今さら過ぎ」

悠「ノーパン過ぎ?」

雨「使ってない耳ならちぎってしまえ」

千世子「太陽のほかに、ミスラは司法、契約、戦いをつかさどっているのだ。その中でも「司法」と「契約」は、ミスラという天使を語る上で重要な要素なのだ。」

摩耶「小鳥遊悠の耳、剥ぎ取り素材かな」

悠「二個しかないからやめて、あと福耳」

神姫「福耳ってほどではない」

悠「なんと……」

雨「福耳ってことにどれだけ自信を持ってたのよ…」

千世子「司法の天使としてミスラは、ほかのふたりの天使とともに死者の魂を裁く「裁判官」なのだ。手に持った天秤に、死者が生前行った善行と悪行とをかけ、死者は善行が多ければ天国へ行き、悪行が多ければ地獄に行くのだ。」

悠「劉備くらい福耳だと思ってた」

神姫「バケモノじゃない」

亘理『え、劉備って人間でしょ?』

摩耶「演技だと肩まで垂れ下がる耳とか膝の下まで届く腕とか紅をつけたような唇とか再現したら、何このバケモノ的な感じになるんだよ」

亘理『うわぉ……』

千世子「契約の天使として、ミスラの役目は、全ての国と地域に支配する権利を与えることなのだ。ただし、契約を破ったり、嘘をついたら、ミスラは容赦なくその国を滅ぼし、破壊するのだ。ゾロアスター教では、人を欺いたり嘘をつくことは「ドゥルジ」と呼ばれ、1、2を争うほどに重い罪だからなのだ。」

悠「なにごともそこそこにしとくのが良いんだよ」

神姫「その髪はいきすぎてるわよね?」

悠「ちょっと何いってるかわからないです」

神姫「分かるまで身体に教えましょうか?」

悠「理解しています。でも、勘弁してください」

神姫「最初っからそういえばいいのよ。」

摩耶「素直にいっても場合によれば?」

神姫「投げる」

千世子「ミスラはもともと天使ではなく、ゾロアスター教が成立する以前からペルシア(現在のイラン)のいたるところで信仰されていた土着の神だったのだ。このころからとても人気のあったミスラは、紀元前6世紀ごろに栄えていたペルシア王朝「アケメネス朝ペルシア」で、国の守り神として信仰されていたのだ。この国では、ミスラと一緒にアフラ・マズダとアナーヒターも信仰されていたことから、3柱はもともと同格の神だったことが分かるのだ。今日はここまでで続きは次回なのだ。」
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