ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(1/27/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

悠「毎日毎日寒いなぁ。」

摩耶「だね。」

悠「いや、摩耶は薄着に見えるけど」

摩耶「これでも中は着込んでるよ」

千世子「そろそろじゅぎょーを始めるのだ」

悠「え~…あ、この体勢のままじゅぎょーもとい授業しないか?」

千世子「あんちんの膝の上だと黒板に字が書けないのだ」

悠「しかし、ぴよこに離れられると俺の人間カイロが…」

神姫「暖をとるな」

花描「子供は体温高いからな」

千世子「よいしょ、じゃあじゅぎょーをするのだ。今日はこれなのだ」

【スコルピア一家】
生息地域:ルーマニア
出典:ルーマニアの民間伝承

悠「ぐっ…(マジでさむい)」

神姫「……」

ポイッ

悠「ん?(カイロだ)」

千世子「東ヨーロッパの国ルーマニアには、人間と同じように家族で暮らすズメウ(竜人)たちがいたのだ。この一家は、父と母とその娘ふたり、そして娘婿ふたりという六人家族で、悪魔が子供を育てたという土地に家を建てて住んでいたのだ。」

摩耶「けったいな処に住んでるね」

花描「悪魔の住む館なら知ってるけどな」

千世子「ちなみに「スコルピア」とは母親の名前なのだ、家族の竜人たちの名前は民話には記されていないのだ」

悠「カイロ、ありがと」

神姫「別に」

千世子「竜人であるスコルピア一家は人間よりもかなり強力な存在だったのだ。男たちは力が強く、女たちは魔法でほかの生物、無機物に変身することができたのだ。」

悠「九頭竜は衝撃をぶつけることができた、百目鬼は怪力を発揮することができた」

神姫「カイロ返せ」

千世子「そしてもっとも強力だったのが、母親のスコルピアなのだ。スコルピアは物語に「グレウチャーヌを一口に呑み込もうと、天と地に届かんばかりに、両顎をあけて追ってきた」と書かれるくらいだから、肉食恐竜のように大きな頭部と力強い顎があったのだろうなのだ」

悠「狂暴竜か…」

摩耶「僕は狂暴竜よりアグナのが苦手だね」

悠「俺はボルボ亜種とアグナ亜種、ベリオ、ウルク、ネブラ…」

神姫「それ、凍土が嫌なだけよね?」

千世子「この恐るべき、竜人一家を倒したのが、先に名前の出た勇者グレウチャーヌなのだ。グレウチャーヌは強く、知恵が回り、魔法まで使えるという完全無欠の勇者で、その名は竜人たちのあいだにも轟いていたのだ。」

悠「勇者は基本チートだからな。他人の家にいきなり入ってタンスと壺の中強奪していくし」

花描「宝箱も余裕で拝借するしな」

千世子「スコルピア一家に太陽と月を盗まれて困っている国があると聞くと、勇者は早速、太陽と月を取り返しに向かったのだ。グレウチャーヌは鳩やハエに変身して竜人たちの行動パターンを探ると、竜人の男たちがそれぞれひとりで帰ってくるのを待ち伏せたのだ。竜人に次々と素手で格闘戦を挑んで勝利。三人の男竜人を全員殺したグレウチャーヌは、閉じ込められていた太陽と月を見つけて解放することができたのだ。」

悠「ある意味ごり押しだな…」

摩耶「力の勝利だね」

千世子「帰り道では夫を殺された娘の竜人が、変身魔法ををつかってグレウチャーヌをだまそうとしたが、見破られて殺されてしまうのだ。」

花描「容赦ないな。」

千世子「母親のスコルピアだけは、いかに勇者でも正面から戦って倒すのは困難だったのだ。グレウチャーヌはこんなこともあろうかと思って仕込んでおいた罠の使用を決断するのだ。」

悠「落とし穴とタル爆Gですねわかります」

千世子「じつは勇者の義兄弟に鍛冶屋がいて、グレウチャーヌは鍛冶屋に自分の等身大の鉄像を造らせ、それを出発前から火であぶり続けさせていたのだ。鉄像をグレウチャーヌと勘違いし、その血を吸い付くそうとかぶりついたスコルピアは、灼熱した鉄像のせいで体が破裂。その体は鉄屑に変わってしまったというのだ。以上スコルピア一家だったのだ」
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