ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「八月が終わった……」

摩耶「とっくにね。」

神姫「なんていうかしつこい」

悠「ねばり強いといってくれ」

雨「ものは言いようね」

悠「どやぁ!」

神姫「……」

ゲシッ!
悠「ありがとうございますっ!」

【マリク】

千世子「じゅぎょーしますなのだ。マリクは、イスラム教の経典『クルアーン』に登場する天使なのだ。彼は死んだ人間の魂を地獄に連れてくるのだ。また、地獄を管理し守る役目もあるのだ。」

悠「っか、今素で蹴られたんですけど」

摩耶「悠君の業界では?」

悠「ご褒美で……もないかな」

亘理『噛もうか?』

悠「ノーサンキュー」

千世子「れっきとした天使であるマリクだが、その性格は「実は悪魔なのでは」と勘違いするほど無慈悲で、悪意すら感じられるのだ。マリクの仕事のひとつに、地獄に落ちた魂を火あぶりにする仕事があるのだ。焼かれた魂はマリクに助けを求めるのだが、マリクは手加減をしないどころか、彼らの必死の訴えを冗談であしらうというのだ。」

摩耶「でも、お月見とかこれからもいろいろ楽しい行事あるじゃない」

悠「楽しい行事もいいんだが……寒くなるのがな…」

神姫「常にスクワットでもしてたら?」

悠「ザックスさんじゃあるまいし…」

摩耶「防寒に白巳ちゃんを装備」

悠「娘からその案は出されたよ」

千世子「マリクが地獄で行う仕事の内容は『クルアーン』に書かれているのだ。それによればマリクは自分とともに地獄を管理する19人の部下「サバーニーヤ(別名スビレス)」をひきつれているのだ。彼らザバーニーヤの名前には「乱暴に突く者」という意味があり、マリクとともに地獄の魂を苦しめる役目があるのだ。地獄でもアッラーを讃える者は、ザバーニーヤの責めだけは免れるのだ。しかし、逃れられるのはあくまでザバーニーヤからの責めだけなのだ。どれだけ信心深さをアピールしても、厳格なマリクの責めを誤魔化すことはできないのだ。」

悠「そうなんだよ……季節が過ぎるのはいいんだよ。問題は寒さなんだ」

亘理『私が憑いとこうか!』

悠「既に憑いてるのが居る」

アリス『ふふっ、ブフダイン覚えとくね。』

悠「氷結系最上位スキルを覚えなくていい!」

千世子「罪を犯せばだれでも容赦なく罰するマリクだが、やはり信者に対してはイスラム教徒以外よりおだやかな態度で接するのだ。彼は例え、今地獄に居る魂であっても、イスラム教を信じる者は罪を許され、天国に行けることを知っているのだ。」

雨「そこまで寒さに敏感なのは気色悪いな」

悠「虫は寒さで死ぬ」

雨「キチキチキチキチ!」

悠「うぉ……久々の発狂モード」

神姫「でも、複眼とか丸出しだし逆に弱点っぽくない?」

悠「確かに……狙い撃ちだよな」

雨「お前らやめろォ!」

千世子「キリスト教における地獄には様々な説があり、聖書にも正確な描写がないのだ。しかしイスラム教では、経典であるコーランに地獄の描写が詳しく描かれているのだ。」

摩耶「人間は怖いから気をつけようね」

雨「人間って言うかコイツらが怖い」

悠「怖くないよーユウダヨー」

摩耶「ミクダヨー」

悠「僕らの天使ミクさん!」

千世子「イスラム教の地獄は地表よりもかなり下の地下にあり、中東にある荒れ果てた砂漠に似ているのだ。地獄の中には灼熱の炎や、底なしの落とし穴といった7つの階層があり、生前に罪を犯した魂はここに落とされるのだ。」

悠「ちなみに家で一番大きなフィギュアはミクです」

亘理『何情報?』

悠「二番目に大きいのがリオレウス及びジンオウガ」

摩耶「無差別っぷりが悠君だね!」

神姫「家で一番大きいのは……九頭竜の木製フィギュアかしら」

悠「それフィギュアちゃう、木彫りの像や」

千世子「イスラム教では、死ぬと必ず神の前に出て、神自身の手で天国と地獄のどちらに行くか決められるのだ。このとき神を信じない物は、生前にどんな裕福であっても問答無用で地獄に落とされるのだ。こうして地獄に落ちた魂は、マリクたちによって炎で焼かれることになるのだ。以上、マリクのじゅぎょーだったのだ。」
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