ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

神姫「たまに懐メロっていうかちょっと古い歌って聞きたくなるわよね」

悠「エロティカセブンとか?」

神姫「……いい曲ではあるけどね。なんでそれをチョイスしたの?」

悠「……君はエロティカセブン~」

神姫「……蒼龍の三爪疵」

スバッ!ズバッ!スバァァンッ!
悠「ぎゃあああぁぁぁぁっ!」

千世子「はーい、じゅぎょーしますなのだ。キリスト教グノーシス派には無数の亜流が存在するため、ソフィアとデミウルゴスの描かれ方はバラバラで一定しないのだ。今回はもっとも有名なグノーシス文献「ナグ・ハマディ文書」の記述を基本に、ふたりをじゅぎょーしていくのだ。」

摩耶「見事な三爪疵(トライエッジ)ができてるね。」

悠「は、ハセヲ……」

摩耶「摩耶です」

悠「ぐふっ……」

アリス『トドメ?トドメいっちゃう?傷口ぐちゃーってしちゃう?』

悠「おい、やめろ小娘」

千世子「ソフィアはもともとギリシャ語で「知恵」を意味する単語なのだ。「グノーシス」とよく似た単語を呼び名としていることから、ソフィアがグノーシス主義の中でいかに重要なのかをうかがい知れるのだ。」

亘理『なにげに元気だね。あんな大技くらったのに』

悠「男の子はやせ我慢してナンボだからな」

摩耶「やせ我慢いっちゃったね。」

悠「最近気がついたんだけど、殴る蹴るは何とかなるんだけど、斬撃とか焼かれるのはキツイ」

亘理『悠ちゃん、人間て焼かれたり斬られたりしたら普通にダメだからね。妖怪の私が言うのも何なんだけど』

千世子「グノーシス主義の宇宙に女性のアイオーン、すなわち善の天使として生まれたソフィアは、自分を産んだ神という存在がどれだけ偉大なのかをしりたくなったのだ。その思いは暴走し、やがてデミウルゴスという存在を生みだしてしまうのだ。」

摩耶「でも、三爪疵ってどうやったの?」

神姫「←タメ→←→+P」

亘理『サイコクラッシャーコマンド?!』

雨「なぜ分かる?!」

亘理『え、常識じゃない?』

雨「何処の常識で格ゲーコマンドを暗記してるやつがいる」

千世子「デミウルゴスは天国から遥かに遠い地に、自分が王として君臨する「物質界」を作りだしたのだ。ソフィアは「神のことを知りたい」という高慢の代償として、とてつもない過ちを犯してしまったのだ。」

悠「ひとついいか?」

雨「なに?」

悠「今のはスーパーコンボ版でハイパーコンポは↓↘→+PP(空中可)だぞ」

雨「しらねぇええ!」

亘理『コマンド暗記は基本だよ』

摩耶「さすが格ゲーマニア」

千世子「後世、ソフィアは世界の知恵を象徴する女性として、グノーシス主義だけでなくキリスト教の世界にも取り入れられたのだ。キリスト教の母である聖母マリアもソフィアの知恵の側面を吸収しており、現在のマリア信仰につながっているのだ。」

悠「立派な格ゲーマーになり過ぎて既におれの勝率は10%をきっている」

亘理『悠ちゃん……そこそこだもんね。』

摩耶「格ゲーはそこそこなんだよね。ホント」

悠「そこそこ、そこそこいうのやめれ。そこそこが事実でも!」

雨「事実かい」

千世子「神の偉大さを知ろうとしてかなわなかった、ソフィアの絶望から生み出された両性具有のアルコーン。それがデミウルゴスなのだ。その名前はギリシャ語で「職人」を意味する単語であり、世界を作った創造主という意味が込められているのだ。」

神姫「格ゲーで負けるのはいいんだけど……やり口によってはリアルファイトに持ち込みたくなるわよね。」

悠「あの、なんで私を見ているんでしょうか?」

アリス『ハート(心臓)を射貫く(物理)から』

悠「それ死だから。ただの射殺だから」

摩耶「レベルをあげて物理で殴る」

悠「王道戦術!!」

千世子「デミウルゴスは神の光が届かない遠い世界に産み落とされたのだ。そのため彼は自分が神であると思いこみ、天地を創造し、彼の子供であるアルコーンを作りだしたのだ。また、ソフィアたち善のアイオーンが神の威光を知らしめるために、霊的な存在である、「光のアダム」と「光のエヴァ」を送り込むと、デミウルゴスはそれに対抗して、「肉のアダム」と「肉のエヴァ」を生みだしたのだ。彼らが地上に降りてわれわれ人間の祖先となったのである。」

神姫「私も嫌いじゃないわね。レベルをあげて物理で殴る」

悠「もうレベルも物理もカンストしておりませんか?」

神姫「全然」

悠「清々しい。だが、そりが逆に怖い」

摩耶「生涯現役タイプだね。」

悠「いわゆる、最高にハイってやつかあぁぁぁっ!」

神姫「……蒼龍の三爪疵」

ズバッ!ズバッ!ズバッ!
悠「今度は背中ァァァァ!」

摩耶「バランスがとれたね。」

千世子「デミウルゴスは、ソフィアの干渉によって自分が神でないことを知ったが、それを人間やアルコーン達に知られないために虚勢を張り続けたのだ。グノーシス主義の考え方では、旧約聖書に登場する残忍なヤハウェはデミウルゴスが神になりすました姿なのだ。そのため彼は、ヤハウェに関連する呼び名である「ヤルダバオト」という名前で呼ばれることも多いのだ。以上、ソフィアとデミウルゴスのじゅぎょーだったのだ。」
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