ー奇談ー學校へ行こう8

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「はー、タオルが必需になってきたなぁ」

摩耶「真っ赤なロングタオル?」

悠「元気ですかぁー!っておれはアントニオ猪木か」

神姫「ふっ」

悠「鼻で笑われた?!」

神姫「笑ったわ」

悠「あ、はい……」

千世子「はーい、それじゃあ、ベツヘレムの星のじゅぎょーの続きをするのだ。じつはクリスマスがイエスの誕生日というのは真っ赤なウソなのだ。」

摩耶「笑ったと認められたら頷くしかないよね」

悠「まったくだ」

亘理『あつい~、悠ちゃんタオル貸して~』

悠「おれの血と汗と涙がしみ込んだタオルをか?」

亘理『なんだろう……使いたくなくなった…』

Q子『とりあえず絞って飲んだらいいんじゃない?』

千世子「12月25日がクリスマスになったわけはキリスト教徒が、異教徒の祭日に便乗して祭りをしたことに由来しているのだ。つまりキリストの誕生日と12月25日は、本来まったく関係ないのだ。そして世界中で使われている歴「西暦」では、イエスが生まれた年が西暦1年だと定めているのだ。ところが後述する根拠により、どうやらこの数字もいい加減なものであるらしいのだ。」

悠「黙れ淫霊!……神姫、タオルとか持ってない?」

神姫「は?」

悠「あ、いえ、あの……」

神姫「は?」

悠「な、なんでもないです……」

摩耶「暑いときってイライラが増すからね。仕方ない仕方ない」

千世子「すると当然、イエスの誕生日は何年の何日か、という疑問が生まれるのだ。ベツレヘムの星は、このイエスの誕生日を知るうえで非常に重要な存在なのだ。なぜなら、ベツヘレムの星は特殊な天文現象だと考えられるため、ベツヘレムの星がどのような天文現象だったか調べれば、イエスの誕生日を日単位で算出できるからなのだ。」

Q子『塩分も取れていいと思うのよ。ということで、亘理ちゃん、私のタオル使っていいわよ』

亘理『あんなこと聞いて借りれますか!』

摩耶「変態は発想が凄いよね。」

悠「かき氷の氷を口で砕いて貰ったりとかもはや鉄板だもんな」

神姫「なんの鉄板なんだか。あぁ、「変態」か」

千世子「まずはイエスの誕生が何年のことだったのか調べるのだ。『マタイの福音書』によれば、イエスが誕生したのは「ヘロデ王の在位中、ローマの人口調査が行われた年」ということになるのだ。現在の研究では、ローマの人口調査が始まったのが紀元前7年、ヘロデ王が死亡したのは紀元前4年または1年だとされているから、イエスは紀元前7年~紀元前1年のあいだで生まれたことになるのだ。」

悠「へ、へんたいじゃないよぉ」

神姫「は?」

悠「神姫さんの「は?」はめっちゃ心にザクッとくるわ」

摩耶「それが心地よいと?」

悠「違う違う違う。」

千世子「つまり、紀元前7年~紀元前1年のあいだに発生した特殊な天体現象を調べれば、その現象こそが「ベツヘレムの星」である可能性が高いのだ。」

神姫「はぁ……ハンドタオルくらいは持ってた方がいいんじゃない?」

亘理『あ、どうもありがとうございます』

Q子『今ならあのタオルには神姫ちゃんと亘理ちゃんの汗が!』

悠「手を出したら死ぬぞ。って、もう死んでるか」

摩耶「生きてる人間より性欲はあり余ってるけどね」

Q子『イエス!イエス!イエーース!』

千世子「ベツヘレムの星の正体については研究途上であり、いくつも説があるのだ。今回は代表的な説を列挙してベツヘレムの星のじゅぎょーを終わるのだ。」

・惑星会合説
17世紀初頭、ドイツで活躍した天文学者「ケプラー」が提唱した有名な説。紀元前7年の5月27日、10月5日、12月1日と3回連続で木星と土星が接近する「惑星会合」が発生しており、この現象がベツヘレムの星だというのだ。この節によれば、イエスの誕生日は3回目の会合日、12月1日だという。

・超新星説
古代中国の記録に書かれている超新星(恒星の爆発)がベツヘレムの星だという説。超新星は紀元前4年の2月23日に観測されている。

・彗星説
紀元前5年と4年に観測された水星のどちらかがベツヘレムの星だ、という説。

・木星食説
1991年に発表された比較的新しい説で木星が月に隠れる「木星食」がベツヘレムの星だとする説。木星食は3月20日と4月17日に連続して起こっており、二回目の木星食である4月17日がイエスの誕生日だと主張されているのだ。
6/100ページ
スキ