ー奇談ー學校へ行こう7

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

摩耶「アレから調子どう?」

悠「問題はないがワガママを聞く以外のコミュニケーションが成功している気がしない」

摩耶「パーフェクトコミュニケーションとらないと駄目じゃない」

悠「おれにプロデューサーの才は無いってことらしい」

アリス『ふふっ』

千世子「でも、アリスちゃんは悪い子に見えないのだ」

アリス「アリスはいい子よ。ふふっ。ふふふっ。」

神姫「邪悪が渦まてるわね。」

【ヴィクター】

千世子「はーい、それじゃーじゅぎょーしますなのだ。ヴィクターは、アイルランドにキリスト教を布教した聖人「聖パトリック」に神のお告げを与えた天使なのだ。彼は聖パトリックの夢に現れると、アイルランドでキリスト教を広めるように導いたのだ。」

亘理『あれ……アリスちゃん、どこいったの?』

悠「さぁ……消えてるだけかどっかフラフラしてるか行動は気まぐれなんだよ」

神姫「悠と同じね」

悠「そんなことないだろー」

摩耶「そんなことないことがない。」

千世子「ヴィクターの姿や役割については、ほとんど知られていないのだ。ある神学者の説によれば、ヴィクターは勝利者(Victor)なのだ。つまりヴィクターは、キリスト教が異教徒から勝つために、聖パトリックに導いたのだというのだ。」

悠「コホン……でも、危ない事とかヤバいイタズラはしない感じだから」

亘理『じゃあ、どんなことするの?』

悠「いきなり背後に現れて「ふふっ」て笑ったり、視界の端に現れるけどちゃんと捉えられなかったり」

摩耶「典型的なお化け行為だね」

神姫「お化け行為って単語初めて聞いたわ」

摩耶「僕も始めて使った」

千世子「ヴィクターからお告げを聞いた聖パトリックは、432年にアイルランドに渡り、キリスト教の布教活動を開始しているのだ。」

悠「ちなみにウチでの犠牲者はもっぱら恋だ」

摩耶「苛められてるの?」

悠「アリスは遊んでるつもりらしいし、恋のことは気にいってるっぽい。」

神姫「座敷童子と西洋霊……妙な組み合わせね。」

摩耶「悠君は和洋折衷を揃えたんだね!」

悠「えぇ……」

亘理『私は?ねぇ、私は?』

悠「妖怪頭かぶり」

亘理『がぶりっ!』

千世子「聖パトリックがアイルランドに広めたキリスト教は、ヨーロッパで信仰されていた一般的なキリスト教徒はかなり違ったものだったのだ。聖パトリックは独自の信仰「ドルイド」を持っていたアイルランド人にキリスト教を受け入れてもらうため、本来のキリスト教の信仰にアイルランド的な要素を取り入れたのだ。」

悠「おれは何か間違っただろうか……?」

亘理『がじがじ!』

摩耶「正解したから噛まれてるんだよきっと」

神姫「歯が脳に食い込むほど噛まれたらきっと覚醒もするわよ」

悠「おれは人間を超越……痛い痛い!本当に痛い!」

亘理『ガリリ!』

千世子「例えば彼は、キリスト教のもっとも重要な教えである「三位一体」を伝えるために、アイルランドの国花であるシャムロック(クローバー)を使ったのだ。クローバーの三つの葉はそれぞれ神、イエス、聖霊を現し、それがひとつの茎につながっている様子を「三位一体」の象徴として教えたのだ。」

神姫「随分と噛みこんでるわね」

摩耶「嫉妬パワーってヤツかな」

神姫「がりゅーもいつか目覚めるのかしら嫉妬に」

摩耶「……想像できない」

神姫「私もよ。でも、ああやって悠に八つ当たってくれた方が安心できるんだけどね。」

摩耶「神姫さんも大変だね。」

神姫「ふんっ、別に。大変なのはわたしじゃなくてがりゅーだし」

千世子「またキリスト教の象徴である「十字架」もアイルランド風にアレンジされたのだ。ドルイド信仰において太陽の象徴である「円環」を十字架と組み合わせ、さらにアイルランド風の模様で装飾して、新しい十字架を作ったのだ。この独特の十字架はアイルランドに住んでいた「ケルト民族」から名前を取って「ケルト十字」と呼ばれ、アイルランドのキリスト教を象徴するものとなったのだ。以上、ヴィクターのじゅぎょーだったのだ。」
94/100ページ
スキ