ー奇談ー學校へ行こう7

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「身体が痛いでございます」

摩耶「そこはお礼言うんだよね。」

悠「ご褒美、ありがとうございます!」

神姫「……唾でもはきかけようか?」

悠「本格的に目覚めたら困るから許して下さい」

【アダメル&ヘルメシエル】

千世子「じゅぎょーしますなのだ。ユダヤ、キリスト教にはたくさんの天使が登場するのだ。しかし、すべての天使に由緒正しい由来があるわけではないのだ。中には、後世の学者や作家の妄想によって作られた天使もいるのだ。アダメルとヘルメシエルはその典型的な例なのだ。」

悠「それより、本当に見なかったか?青いドレスで金髪色白の少女」

摩耶「多分、悠君の心が生んだ妄想だよ」

亘理『悠ちゃん、大丈夫。大丈夫だからね。』

悠「優しい声をかけないで!」

雨「可哀想な人…。」

千世子「アダメルは、この世に初めて生まれた人間「アダム」を元にした天使なのだ。聖書の正典ではアダムはあくまで神に作られた人間なのだ。だが旧約聖書の偽典で、1世紀ごろに成立した文書「アダムとイヴの生涯」では、彼はアダメルと名前を変え「輝く天使」とされているのだ。また、旧約聖書の外典で、多数の天使が登場する「エノク書」でも、アダメルは「第二の天使」と呼ばれているのだ。」

悠「ひでぇ、みんなして心の病んだ奴扱いだよ」

神姫「病んでなかったの?」

悠「…………全面的に否定はできない」

摩耶「人間なんてそんなものだよ。みんなもそうだよ
……ねっ?」

亘理『黒い、摩耶君から黒い何かがあふれ出てる!!』

千世子「一方のヘルメシエルは、ギリシャ神話に登場する伝令の神「ヘルメス」から生まれた天使なのだ。ギリシャ神話のヘルメスは、魂を冥界へと導く役目と、神の言葉を人間に伝える役割を持っているのだ。」

神姫「ストレスがたまってるんじゃない?」

悠「摩耶、ちゃんとストレス解消してるか?」

雨「悠がいるだけでストレスがマッハなんじゃない?」

悠「なんでやねん」

摩耶「大丈夫、適度に発散してるよ。いろいろなことで、ね」

亘理『……なんか怖い』

千世子「ユダヤ教の学者たちは、ギリシャ神話のヘルメスの持つ役割が、天使の役割と似ていることに注目したのだ。そしてヘルメスを神に仕える天使「ヘルメシエル」としてユダヤ教に取りこんだのだ。」

神姫「摩耶君のような人間ほど怒らすと怖いものなのかもね。」

悠「神姫に怖いものなんてあるのか?」

神姫「悠という存在が怖いほどムカつく事があるわ」

悠「おう、何いってもおれが悪い感じになる」

亘理『大丈夫、大丈夫だよ。悠ちゃん……』

悠「だから優しい声をかけるな」

千世子「古代ユダヤ教徒は、もともと天使でないものや、他宗教の神の名前に、ヘブライ語で神を意味する「el」をつけることで、天使の名前に変えていたのだ。」

青いドレスの少女『ふふっ』

摩耶「ところでさ」

悠「ん?」

摩耶「悠君が生んだ妄想の女の子が廊下を歩いていったよ」

悠「居たんでしょ!それは居たってことでしょ!」

神姫「妄想を他人に見せられるほど濃い妄想をしてるのね……ドン引きだわ」

千世子「この習慣はヨーロッパにキリスト教が広まるにつれてエスカレートしていくのだ。人々は自分たちの生活に密着した様々なものに、かたっぱしから「el」をつけて、天使の名前に変えていったのだ。このように民間レベルでいい加減につくられた天使のことは、名前の接尾語「el」がつくことから「接尾語の天使」と呼んでいるのだ。」

悠「いや、もしかして……おれのスタンドか?」

摩耶「違うよ。悠君のスタンドだったら呪いのデーボとかノトーリアス・B・I・Gとかハイウェイ・トゥ・ヘルだし」

悠「切り刻まれて発動したり、死んでから発動したり、自殺したら発動したりなスタンドばっかりだな」

神姫「マゾ」

悠「違います。違いますから!」

千世子「キリスト教社会に広まっていった天使信仰の過熱と相乗効果もあり、接尾語の天使として作られた天使の数は何百、何千という数が有ったと思われているのだ。」

亘理『か、噛もうか?』

悠「マゾじゃねーってんだろ!」

摩耶「マゾではないけど殴られたり投げられたり蹴られたりする人だよね。」

悠「おれはサンドバックか…」

神姫「何かしら、そう思ったら悠の好感度があがったわ」

悠「物扱いであがる好感度って辛いわぁ…」

千世子「加熱する民間の天使信仰を重くみたローマ教会は、745年、聖書正典に書かれた天使以外は信仰してはならないと決定したのだ。これにより天使の過剰な量産はようやく沈静化していったのだ。以上、アダメル&ヘルメシエルのじゅぎょーだったのだ。」
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