ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(1/23/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

悠「寒いなぁ」

神姫「今日はいつものツナギじゃなく、スタジャンなのね」

悠「こっちのが俺の本スタイルなんだけどな。軍パンに和柄のシャツとか、ほれ見合いの時そうだったろ」

神姫「ちゅーと半端なチンピラみたいなかっこよね」

悠「チンピラて…」

花描「ケラケラ」

悠「笑うな!」

摩耶「もぉ、プンプン」

悠「なんで怒ってる…」

千世子「みんなー、集まってるなー?じゃあさっそくじゅぎょーを始めるのだ。今日からは新章で竜人(ズメウ)についてなのだ。」

【勇士ペトレアのズメウ】生息地域:ルーマニア
出典:ルーマニアの民間伝承

摩耶「竜人かぁ。ゲームとかだとありありだよね」

悠「俺はケモナー派」

千世子「ルーマニアの民話には、ほかのヨーロッパ各地とは違う独特のドラゴンが登場するのだ。このドラゴンは「ズメウ(zmey)」といい、得体の知れない姿をした文字通りの化け物の場合もあるのだ。たいていの場合はドラゴンの特徴と人間の特徴をあわせ持つ「竜人」としても表現されているのだ。」

摩耶「竜と人ねぇ…。八重歯は?」

悠「わてを見るでない。」

摩耶「あはは。」

千世子「ズメウはおもに、人間の勇者に退治される悪役として登場するのだ。ズメウたちの性格はたいへん男らしく、敵とは正々堂々とした戦いを好み、とくに素手での格闘戦を好むことが多いのだ。」

悠「男前だな。」

摩耶「悠くんは?」

悠「口八丁手八丁、騙し討ち上等ってなんでやねん」

摩耶「僕なにもいってなけどね」

神姫「馬鹿ね」

千世子「また自分の大事なものが人間に盗まれたときも、すぐに相手を殺すようなことはせず一度は見逃し、ふたたび相手が目の前にあらわれたときには一切容赦をしないのだ。」

花描「仏の顔は三度まで、竜人の顔は二度までか。」

千世子「ルーマニア文学研究の日本における第一人者、往谷春也によれば、このようなズメウの男らしい性格には、かつてルーマニアをトルコ系の民族が支配していたところ、その支配に対抗して戦ったという野武士「ハイドゥク」たちのイメージが投影されているのではないかと推測されているというのだ。」

悠「竜の心(ドラゴンハート)だな。」

千世子「ズメウが登場するルーマニアの民話は多いのだ。そのなかに、ここで説明したズメウのイメージとはかなり違ったズメウが登場するものがあるのだ。「勇士ペトレア」という物語に登場するズメウは、力が強いわけでも男らしいわけでもないのだ。むしろずる賢い性格の策略家で、そして目を見張るほどね美形だったのだ。」

摩耶「よかったね」

悠「いやぁ、照れるなぁ。って、だから俺は竜人じゃねぇての。」

千世子「今日はここまで続きは次回なのだ」
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