ｰ教室ｰ

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「いって～……あたま割れたらどうしてくれるんだ」

亘理『ぷんっ!』

摩耶「なにが生まれるかな」

悠「おれの頭はゼウスじゃないぞ」

神姫「でてくるのはインベーダーじゃない?」

悠「そんなもの沸いてない!!」

千世子「はーい、あんちんの頭の中身は置いておいてじゅぎょーしますのだ。」

悠「中身は脳だよ!あ、いや……夢が詰まってる☆」

神姫「……」

摩耶「神姫さん、拳が震えるほど握り締まってる」

悠「ひ、ひぇぇ…」

【ラグエル】

千世子「天使は人間より高い能力を持っているが、そのかわり、欲望に負けやすい心の持ち主だと言われているのだ。欲望に負けて悪の道に走った天使は「堕天使」、つまり悪魔になってしまうのだ。そもそも悪魔の王であるルシファー自身が、もともと天界で最強の天使だったかのだから、天使の堕落がいかに深刻な問題かが分かる。」

悠「おれは今、顔面が潰れるかもしれない深刻な問題が出来ている」

神姫「殴らないわよ」

悠「ほっ…」

神姫「頭に押し付け続けるだけ」

悠「なん……だと?」

千世子「しかし天界も天使たちの堕落を手をこまねいてながめているだけではないのだ。これ以上天使たちが堕落しないように、天使自身の行いを見張る天使がきちんと定められているのだ。それがこの大天使「ラグエル」なのだ。」

雨「耳から脳みそ出さないようにね」

悠「おっそろしいこというな!」

摩耶「でも、あえて硬い部位を攻めるところに男義を感じるよね。」

悠「感じるって言ったら余計痛い目見そうだから頷かない」

神姫「どっちにしろ最後にはやるけどね。」

悠「どう転んでも絶望…」

千世子「ラグエルは「神の友」という名前を持つ天使で、他の天使の善行や堕落を監視しているのだ。また同時に、ラグエルは七層に分かれているという天国の二番目の層を守護する役割も与えられているのだ。そこは大天使ラファエルが統治する層で、罪を犯した堕天使たちが裁きを待つ場所だというのだ。」

悠「勘弁してくれよ。ただでさえ、亘理に噛み噛みされて結構響いてるんだから」

摩耶「美味しかった?」

亘理『味わうの忘れてた』

悠「ヤバい、そのうち本気で食われる…」

雨「身体壊すでしょうね。」

千世子「ラグエルが天使の監視者となった理由は、旧約聖書の外典で、予言者エノクが天国へ行く物語「エノクの書」のエチオピア語版にあるのだ。この資料でラグエルは「光の世界に復讐をもたらすもの」と書かれているのだ。この記述が「天使を監視する者」という意味に解釈され、現在のイメージが出来上がったのだ。」

悠「腹壊すじゃなくて、身体壊すかい」

雨「まんま毒じゃない」

悠「失礼な。こうなったら……」

摩耶「食べられる前に食べてやる?」

亘理『私をたべる……悠ちゃんの助平///』

ベチンっ!
悠「なばらっ!?」

千世子「皮肉なことに天使が堕落しないように厳しく監視しているはずのラグエル自身が、堕天使になってしまったことがある……とはいってもこれは、ラグエル自身の行いが原因ではなく、あくまで人間界の事象によるものだったのだ。」

摩耶「あはは」

雨「……何か悪魔がいるわよ」

神姫「本物の悪魔と知り合いでしょ?」

雨「いや、そうじゃなくて」

神姫「小悪魔って言うのよ、ああいうのは」

雨「「小」かしら…?」

千世子「西暦745年、ローマ教会のザカリアス教皇は、それまで世間で信じられていた7人の天使を堕天使だと定めたのだ。そのなかにラグエルも含まれていたのだ。このときラグエルは「聖人になりすます悪魔」と非難されているのだ。」

悠「なにすんじゃい!」

亘理『え、あ、てへぺろっ♪』

悠「いや、誤魔化されないからな!」

摩耶「これで誤魔化しとけば神姫さんにグリゴリされないかもよ?」

悠「まったくこいつぅ～」

亘理『……悠ちゃん、それは気持ち悪い』

千世子「ザカリアス教皇がこのような処置を行ったのは、統治庶民のあいだで天使崇拝が過熱していたためだとされているのだ。本来キリスト教に置いて信仰すべき対象は唯一絶対の神だけであり、度が過ぎた天使崇拝はキリスト教の教義をゆがめてしまう恐れがあったのだ。そのため、このように強硬な規制が行われたのだ。以上、ラグエルのじゅぎょーだったのだ。」