ー奇談ー學校へ行こう7
ー校舎前:出入り口付近ー
毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。
「よっし!!」
素早く立ちあがってガッツポーズをとる摩耶。足元にぶっ倒れているデモンも起きあがろうとしたので、おれは反射的に飛び出して全力でヤツの頭を踏み潰す。起きあがりかけた上半身を地面に叩きつけてやるとビグンッと全身が跳ねた。
それでも、効いていないのか獣足を振り上げて下半身から起きあがる体勢に入ろうとするデモン、しかし今度は摩耶が両足で跳ねて力のこもった腹筋を踏み潰す。
「とりゃっ!」
「ごあ゛っ!!」
ぐぐもった短い悲鳴をあげるデモン。コイツを起きあがらせちゃならない。
「摩耶!」
「うん!」
おれと摩耶は気合を入れて顔面と腹部に拳を叩き込んだ。それも一発ではなく、連続で何度も何度も何度も何度も何度ももうちこんでいく。
炊きたてのもち米だったら餅になってるだろうと思うほど振り下ろした拳のにはさすがに耐えられなかったらしく、おれの拳はついにデモンの頭を砕き潰した。そのことに摩耶も気づいて打拳を止める。
「動かなくなったね。」
「さすがに……死んだみたいだな。」
頭だった物からおれはゆっくりと拳を引き抜くとどろりとした白濁の液体が手にこびりついていた。
「うわ、卑猥~……」
この液体がついてるのがおれじゃなくて摩耶だったら萌えエロなのに、おれにこびりついてたら卑猥なだけでなんにも楽しくない。白濁液を振り払いつついった。
「なんだコレ……精子、じゃないよな。油か?」
「蛋白質じゃない?」
「蛋白質……。」
なるほどと思った。状態変化はともかくコイツの体内形成が筋肉によるものではなく蛋白質となればあの異常なほどのスタミナや硬質化も説明がつく。なんにせよ。コイツは人の皮をかぶった化け物だったってことだ。
「おい、メフィスト!テメェにはいろいろと……」
これを作りやがった張本人に文句を言ってやろうと思ったその時、背後に何かが起きあがった。おれと摩耶はゆっくりと振り返る。そこにたのはもはや人の形も保っていない円錐形の頭部を持った肉塊の化け物がそびえたっている。
人間は得体の知れないものを目のまえにすると硬直する。それが圧倒的であるほど、醜悪であるほど。結果、おれと摩耶は逃げるのが遅れた。痛みだけを追求したような原始的かつ醜い塊りがふたつこっちへ向かってくる。当たれば死ぬ。せめて摩耶だけでもと突き飛ばそうとおれが動いた。
その時、静かで冷酷な声がした。
「動くと真っ二つになるわよ」
その言葉を理解する前に迫って来ていた肉塊が裂けた。傷口から血液のように白濁の液が噴き出す。おれと摩耶はあっけに取られていたがすぐに我を取り戻して左右に移動した。そこに進み出てきたのは神姫だ。
「本も読み終わったし。この汚いの消したら私は帰るわよ」
そう言い終わるや否や神姫は大きく深呼吸をする。翠龍を使うようだ。おれも援護をしようと龍剄気孔の体勢に入るが、彼女の動きは文字通り「超越」していた。関節の可動域を限界以上に拡げ、人間とは思えぬ動きで空間に蹴りをあらゆる角度から繰り出すたび、真空の刃が目のまえに居る肉塊の化け物を切り刻んでいく。普段おれにぶつけている蒼龍の爪とは比べ物にならない威力。
そのとき初めて理解した。翠龍は身体強化だけにあらず、他の龍剄と合わせることでさらなる真価を発揮させるものだと。
見る見るうちに円錐形の頭部だけを残し、ほとんどの肉をそぎ落とされた。神姫はピタッと蹴りを止め地面に降ろすと、腕を上げ地面にたたきつけるように振り下ろした。
「灰龍剄気孔……大地の抱擁(グラビトピエタ)」
目のまえに何も無くなった。聳え立っていた楕円形の頭部をした肉塊は地面と一体化した白濁色の染みが地面に広がるばかりで形状は何も残っていなかった。
「……ふぅっ、さすがに疲れるわ。それじゃ、お先に」
最後までクールかつ冷淡に神姫は静かに去っていった。
毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。
「よっし!!」
素早く立ちあがってガッツポーズをとる摩耶。足元にぶっ倒れているデモンも起きあがろうとしたので、おれは反射的に飛び出して全力でヤツの頭を踏み潰す。起きあがりかけた上半身を地面に叩きつけてやるとビグンッと全身が跳ねた。
それでも、効いていないのか獣足を振り上げて下半身から起きあがる体勢に入ろうとするデモン、しかし今度は摩耶が両足で跳ねて力のこもった腹筋を踏み潰す。
「とりゃっ!」
「ごあ゛っ!!」
ぐぐもった短い悲鳴をあげるデモン。コイツを起きあがらせちゃならない。
「摩耶!」
「うん!」
おれと摩耶は気合を入れて顔面と腹部に拳を叩き込んだ。それも一発ではなく、連続で何度も何度も何度も何度も何度ももうちこんでいく。
炊きたてのもち米だったら餅になってるだろうと思うほど振り下ろした拳のにはさすがに耐えられなかったらしく、おれの拳はついにデモンの頭を砕き潰した。そのことに摩耶も気づいて打拳を止める。
「動かなくなったね。」
「さすがに……死んだみたいだな。」
頭だった物からおれはゆっくりと拳を引き抜くとどろりとした白濁の液体が手にこびりついていた。
「うわ、卑猥~……」
この液体がついてるのがおれじゃなくて摩耶だったら萌えエロなのに、おれにこびりついてたら卑猥なだけでなんにも楽しくない。白濁液を振り払いつついった。
「なんだコレ……精子、じゃないよな。油か?」
「蛋白質じゃない?」
「蛋白質……。」
なるほどと思った。状態変化はともかくコイツの体内形成が筋肉によるものではなく蛋白質となればあの異常なほどのスタミナや硬質化も説明がつく。なんにせよ。コイツは人の皮をかぶった化け物だったってことだ。
「おい、メフィスト!テメェにはいろいろと……」
これを作りやがった張本人に文句を言ってやろうと思ったその時、背後に何かが起きあがった。おれと摩耶はゆっくりと振り返る。そこにたのはもはや人の形も保っていない円錐形の頭部を持った肉塊の化け物がそびえたっている。
人間は得体の知れないものを目のまえにすると硬直する。それが圧倒的であるほど、醜悪であるほど。結果、おれと摩耶は逃げるのが遅れた。痛みだけを追求したような原始的かつ醜い塊りがふたつこっちへ向かってくる。当たれば死ぬ。せめて摩耶だけでもと突き飛ばそうとおれが動いた。
その時、静かで冷酷な声がした。
「動くと真っ二つになるわよ」
その言葉を理解する前に迫って来ていた肉塊が裂けた。傷口から血液のように白濁の液が噴き出す。おれと摩耶はあっけに取られていたがすぐに我を取り戻して左右に移動した。そこに進み出てきたのは神姫だ。
「本も読み終わったし。この汚いの消したら私は帰るわよ」
そう言い終わるや否や神姫は大きく深呼吸をする。翠龍を使うようだ。おれも援護をしようと龍剄気孔の体勢に入るが、彼女の動きは文字通り「超越」していた。関節の可動域を限界以上に拡げ、人間とは思えぬ動きで空間に蹴りをあらゆる角度から繰り出すたび、真空の刃が目のまえに居る肉塊の化け物を切り刻んでいく。普段おれにぶつけている蒼龍の爪とは比べ物にならない威力。
そのとき初めて理解した。翠龍は身体強化だけにあらず、他の龍剄と合わせることでさらなる真価を発揮させるものだと。
見る見るうちに円錐形の頭部だけを残し、ほとんどの肉をそぎ落とされた。神姫はピタッと蹴りを止め地面に降ろすと、腕を上げ地面にたたきつけるように振り下ろした。
「灰龍剄気孔……大地の抱擁(グラビトピエタ)」
目のまえに何も無くなった。聳え立っていた楕円形の頭部をした肉塊は地面と一体化した白濁色の染みが地面に広がるばかりで形状は何も残っていなかった。
「……ふぅっ、さすがに疲れるわ。それじゃ、お先に」
最後までクールかつ冷淡に神姫は静かに去っていった。