ー奇談ー學校へ行こう7

ー校舎前:出入り口付近ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

ようやく終わった。体内も体外も感電させて大振りの浴びせ蹴りもぶつけ、めりめりと横倒れになっていくデモン。ホッと息を吐こうとしたそのとき……目が合った。

殺気と憤怒の混じった眼光。やつはまだ倒れていない。おれは咄嗟に後ろに跳んだ。無意識的に距離を取ろうとしたのだが……。

「あ゛あ゛うぁぁぁ!」

デモンは咆哮とともに折れかけていた身体をビンっと元に戻して腕を振るう。今までのような「拳」ではない。鞭のように細く長い触手状の形態となった腕でおれを弾いたのだ。

パァンッと空気が破裂する音とともにおれの額が裂ける。触手の先が頭に触れる寸前に首を後ろに倒したので額の皮を少し抉られるだけで済んだが……直撃していたらと思うとぞっとする。そのまま上半身を逸らし、地面に手を着いて一回転して着地した。

おれは顔を引くつかせていった。

「おいおい……そんの有りかよ」

一瞬目を離しただけなのにデモンの姿が様変わりしてしまっていた。下半身は獣、犬の足の形状で上半身には無数の目玉、腕は四本の触手代わりその先は鋭利な棘がついた殺傷だけに特化し、唯一人間味を残している頭だが、逆にそこだけ人間っぽいので気持ち悪さは今までの比ではない。

「バイオハザードのボスかなんかかよ…」

「はぁぁぁ……こ・ろ・す……」

「喋っちゃったよ……っか、喋った初めての言葉が殺意の塊りってどうよ」

冗談にしては笑えな過ぎる。しかし、敵は待ってはくれる相手じゃないらしい。四本の触手を自分の周りに高速で振りまわして勢いを付けると四方からぶつけてきた。

この距離なら届かないと思っていたが伸縮性は高いらしくおれの予想を裏切って容易に襲い掛かって来た。

「くっそ……風衝壁!」

風のバリアーでとりあえず受け止めたのだが……ベリッバリッとへぐ様な音を立てて触手は風の衝壁を割り砕いた。これは死んだ。身体がバラバラになる自分のヴィジョンが脳裏によぎった。これがいわゆる走馬灯かと諦めた瞬間、後ろに思いっきり引っ張られた。

「うぉっ!?」

「お前、固まってんじゃねーよ」

首を傾けて後ろを見ると義鷹がムスッとした顔でおれを睨んでいた。惚れそうになる。

「た、助かったわ。義鷹」

「目のまえで人間に死なれたら気分悪いからな。」

「ツンデレさんめ」

「黙れ」

『なんで義鷹とばっかりフラグが……』

向こうで亘理が唸るようにぼやくのを無視して義鷹はいった。

「おい、メフィスト。アレはもういいだろ。とっとと止めろ」

「ええー、あー、んー、あれぇ?」

ガイゼル髭のおっさんが小首を傾げやがった。可愛くもなんともない。おれはイラつき気味に言った。

「おい、おっさん。アレはもう論外だろ。一回止めろよ」

「そーれがデスねー。先ほどの雷撃が悪かったのか……コントロールが効かないのデス。てへ☆」

「てへ☆じゃねーだろボケ!」

「アイムソーリー!ヒゲソーリー!」

こっちでやいのやいの行っている間に暴走状態のデモンは動いた。やつが向かったのはおれらの方ではなくて観客として見ていた亘理達の方へだ。

「ヤバいっ!お前ら逃げろ!」

おれの叫びを無視して触腕を振りまわし無差別的に殺意を振りまくそれを止めたのは摩耶だった。

「とりゃっ!」

「あ゛ぁっ?!」

触手の鞭は縦横無尽に振り回されていたがデモンの足元には僅かな空間があった。それにしてもキルゾーンを掻い潜り飛び込むのは危険極まりない。だが、摩耶はあえてそこに飛び込むと地面をすくうように足を払いデモンをスッ転ばせたのだ。
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