ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(1/20/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

悠「だるい…」

千世子「あんちん、疲れてるのだ?」

悠「疲れてるな…。ちょっとマジ疲れに近い疲れだな」

千世子「千世子が肩揉んであげよっかなのだ?」

悠「いや、そーゆー疲れじゃ無いんだよな。」

千世子「そっかー。難しいのだ。よいしょ、それじゃーじゅぎょーを始めるのだ。」

千世子は悠の膝から降りて、黒板に文字を書き始める。

悠「花描くん」

花描「なんだ?」

悠「俺が寝てたら適当に誤魔化してくれ」

花描「わかった。」

摩耶「起こすんじゃなくてごまかすんだね」

悠「まぁな。」

神姫「……」

千世子「ヴィーヴルはフランスで非常によく知られているドラゴンなのだ。母国であるフランスはもちろんのこと、隣接するドイツやスイスにもヴィーヴルが活躍する物語が伝わっているのだ。逆にフランスでは、他国の飛竜であるワイバーンやリントヴルムのことをヴィーヴルと呼ぶこともあるので、混同しないようにじゅうぶんな注意が必要なのだ。」

悠「……すぅすぅ」

花描「うわ、本当に寝てる」

摩耶「完全に寝てるね。これ誤魔化しとか無理じゃない?」

花描「うーん…とりあえず、背筋伸ばさしとけば髪で顔は見えないし大丈夫じゃないか?」

摩耶「おー、なるほど」

千世子「また、ヴィーヴルと名前や外見上の特徴が違う亜種も数多く知られているのだ。そのひとつが「ギーヴル」と呼ばれている蛇竜なのだ。」

摩耶「あ、ダメだ。首がガクンってなる」

花描「これは気持ち悪いな」

摩耶「悠くんて寝てるときは首が座らないタイプなんだよ。」

花描「赤ん坊か。てゆーか、首が座らないタイプってなんなんだよ。」

千世子「ギーヴルの姿はここまでじゅぎょーをしてきたドラゴンとは違い、手も足も翼もない蛇のような姿をしているのだ。ただしその頭部は蛇というよりはドラゴンに近く、頭には角が生えているというのだ。」

摩耶「いっそのこと首を後ろに倒すのはどうかな」

花描「前から見たらマミられたみたいにならないか?」

摩耶「大丈夫、後ろ髪が恐ろしく垂れ下がってるのは見えるから」

花描「首がなくて髪ダラーのが怖くね?」

千世子「ギーヴルの、ヴィーヴルとの大きな違いは毒を持っていることなのだ。ギーヴルは多くのヨーロッパのドラゴンと同様に毒を吐くが、その毒性は強く、伝染病を広めるほどだというのだ。また体の表面にも毒性があり、体の下敷きになった草はいずれ枯れてしまうというのだ。」

神姫「弱点は無いの?」

千世子「ヴィーヴルと同じで男性の裸体が苦手なのだ。川で水浴びをして居た農夫に出くわすと頬を赤らめて正気を失い、一目散に逃げ出してしまったというのだ。この弱点を利用して村人はギーヴルを追い払い、平和に生活できたというのだ。」

悠「なるほどな」

摩耶「最後の〆ではちゃんと起きたね。」

千世子「じゃ、今日のじゅぎょーはここまでなのだ。」
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