ー奇談ー學校へ行こう7

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「さて、いつのまにか魔女のじゅぎょーもラストになったのだ。」

悠「ほう」

摩耶「ほう」

亘理『え、ほ、ほう』

千世子「なんか馬鹿にされてるっぽいのだ……」

神姫「馬鹿にしてるんでしょ。」

千世子「むーっ!」

悠「してないしてない」

【シット・ル・フスン】
英字表記:SittslHusn
出典:物語集「千一夜物語」

千世子「アラビア半島で語られた物語を集めた「千一夜物語(アラビアンナイト)」には、さまざまな魔法的な物語が収録されているが、女性が魔法を使う話しはあまり多くない。その少ない例のひとつが、1001夜にわたって語られたという物語の13~14夜目に登場する王女なのだ。彼女は父親から「シット・ル・フスン」すなわち「美しい姫」と呼ばれているので、じゅぎょーではこの名前で紹介するのだ。」

悠「いきなり何を言い出す」

神姫「あら、ちがった?」

悠「馬鹿になんてするわけ無いだろ」

摩耶「そうだったんだ。僕は乗らないとダメかと思ってやったんだけど」

悠「うぉい!」

千世子「彼女は年若い姫ではあるが、王の宮殿に住んでいた魔女の老婆から教えを受けて170の魔術をマスターしており、大きな石を世界の果てまで瞬間移動させたり、都市を海の底に変えて住民を全て魚にすることもできるというのだ。そのほかにも引き抜いた髪の毛を鋭い剣に変えたり、さまざまな動物に変身することができるというのだ。さらには命をかけた究極魔法として、全身を炎に変えて戦う術も身につけていたのだ。」

悠「ゲッター炉を暴走させる感じだな」

摩耶「数ある例えのなかで何故にゲッター炉」

神姫「関係ないけど地獄には漆黒の炎があるらしいわよ」

亘理『究極魔法っぽい?!』

摩耶「多分、そっちが原点なんじゃないかな」

千世子「シット・ル・フスンが登場する13夜目と14夜目の物語は、左目を失った僧侶が語った体験談なのだ。この僧侶は、とある国の王子であり、他国への使者として旅をしていた途中、盗賊に襲われて地下の国に迷い込み、そこでジャルジャリースという悪の精霊の妻と一夜の愛を交わすのだ。このことがジャルジャリースに露見し、王子は彼の魔法で猿に変身させられてしまったのだ。」

悠「ワンナイトラヴ」

摩耶「悠君はいっぱいあるでしょ」

悠「そんなことねーって」

亘理『悠ちゃん……けがらわしい』

悠「ひでぇ」

雨「いや、当然な反応でしょ」

千世子「身体は猿に変わっても、知恵は聡明な王子のままだったので、王子は「達人級の文字と詩を書く猿」として話題となり、ある国王に献上されることになったのだ。国王の娘であるシット・ル・フスンはすぐに猿の正体が王子であることを見抜き、国王の頼みで、猿の王子の呪いを解く魔術を行うことになったのだ。」

悠「だから、そんなには無いって言ってるだろ」

神姫「そんなにはってことは何回かはあるってことよね」

悠「……」

摩耶「墓穴(はかあな)とかいて墓穴(ぼけつ)と読む」

亘理『むー』

ポコッ!ポコッ!
悠「どうせ叩くなら肩でも叩いてくれ」

神姫「……」
コォォォっ!

悠「いやいや、そんな超闘気を纏った肩叩きはいらんから」

千世子「ユダヤ人が使う「ヘブライ文字」が刻まれたナイフで魔法円を描き、姫が呪文を唱えると、突然イフリートのジャルジャリースが乱入し、呪いが溶かれるの妨害しようとするのだ。姫とジャルジャリースはたがいに変身魔法を使って死闘を繰り広げ、姫は究極の炎の魔術をつかって相討ちに近い形でイフリートを滅ぼすのだ。姫は最後の力で水に魔法をかけ、それを猿にかけて人間に戻すと、父王への遺言を残して燃え尽き、ひと握りの灰になってしまったというのだ。シット・ル・フスンのじゅぎょーだったのだ。」
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