ー奇談ー學校へ行こう7

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「へくちっ!」

亘理『可愛いくしゃみ』

悠「鼻水が出たら髪の毛に付着して地獄を見るけどな。唾液だけでもけっこうべたべたになるし」

亘理『髪切ろうよ……』

悠「やだ」

【人魚姫の魔女】
英字表記:WitchDenLilleHavfrut
別名:アースラ
出典:童話「人魚姫」

千世子「童話作家アンデルセンの作品「人魚姫」に登場し、人間の王子様に恋する主人公「人魚姫」に足の生える薬を与えた海の魔女は、数多い童話のなかでも特に有名な魔女なのだ。彼女は、触れたものを全て粉々に砕く渦巻きの中心を泳いだ先にある海中の沼に、溺死した人間の骨で家を建てて暮らしているのだ。」

神姫「ふぁぁ……む」

悠「めずらしく眠そうだな」

神姫「少し寝不足なのよ」

悠「なんで?」

神姫「別に」

悠「エロい事?」

神姫「……」

きゅっ……ベシッ!
悠「なるがっ!?」

摩耶「消しゴムも超威力でぶつけたら凶器だね」

千世子「海の魔女は他人をだましたりする邪悪な性格ではないが、困っているひとを無償で助ける善人でもなく、魔術の行使には対価を求めるのだ。人魚姫が欲しがった「足の生える薬」の対価は「人魚姫の舌」だったのだ。魔女が説明するところによれば、人魚姫の素晴らしい美声という代償によって呪術的な効果が発揮され、薬の効き目がいっそう確実になるのだというのだ。」

亘理『今の……消しゴムがぶつかる音?』

悠「うごご……額も痛いが衝撃が頬まで通じて、そっちのが痛い」

摩耶「シップのかえいる?」

悠「なんとか平気だ……」

雨「シップ持ち歩いてるの?」

摩耶「シップと絆創膏はね。昔はソーイングセットも常備してたけど」

亘理『女子力高っ……』

千世子「また薬の効果そのものにも副作用があり、王子が別の女性と結婚するようなことがあれば、人魚姫の心臓が張り裂け、彼女が海の泡になってしまうことが事前に説明されていたのだ。」

神姫「あふっ……。」

悠「眠かったら寝たらいいのに」

神姫「眠くなったら寝るわよ」

悠「肩貸してやろうか?」

神姫「限界が来て借りたくなったら借りるわ」

悠「あら、珍しく素直」

千世子「その後、王子が別の女性と結婚することになり、人魚姫の破滅が決まると、人魚姫の姉たちは魔女に頼んで魔法のナイフを作ってもらっているのだ。人魚姫がこのナイフで王子の胸を突き刺し、その血を足にかければ、人魚姫の足は魚の下半身に戻り、死の運命を回避できるのだ。このとき魔女は代償として人魚姫の姉たちの美しい長髪を斬りとっているのだ。」

神姫「……」

ポスッ
悠「あれ、本当に寝た」

摩耶「よっぽど眠かったんだね」

亘理『いいなーいいなー。悠ちゃんの肩いいなー』

悠「むしろご褒美は神姫の頭を触り放題なことだろ」

そーっ……

神姫「んんっ……」

キュバッ!プシッ……

悠「……指の腹が裂けた」

摩耶「寝ててもガードは高いね」

亘理『いやいやいやいや、すっごい血でてるよ?!』

悠「絆創膏くれ」

摩耶「はい。」

千世子「アンデルセンの「人魚姫」は、主人公が愛する人を射とめられずに死亡するという、お伽噺の定石を大きく外した構成になっているのだ。そこでアメリカのディズニー映画は、王子が悪の魔女を打倒して人魚姫と結ばれるという、新しい形の人魚姫「リトルマーメイド」を制作したのだ。この作品では海の魔女はアースラと呼ばれ、下半身がタコになった姿で描かれているのだ。以上、人魚姫の魔女のじゅぎょーだったのだ。」
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