ー奇談ー學校へ行こう7

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「クリスマス・イヴなのだ!」

悠(女)「そうだなー、生憎の雨だが」

千世子「雪が降ったらホワイトクリスマスだったのだ」

悠(女)「死のクリスマスだな……」

千世子「ねーちんは寒さに怯え過ぎなのだ」

悠(女)「そうかもなぁ。だから、ピヨコにあっためてもらうとするか」

ピトッ!
千世子「ひゃっ!もー冷たいのだ」

悠(女)「ひゃひゃひゃ」

【オルトルート】
英字表記:Ortrud
出身地:フリースラント(ドイツ、オランダ)
出典:オペラ「ローエングリン」

千世子「ったく、じゅぎょーしますなのだ。ドイツ史上最高のオペラ作家と名高いリヒャルト・ワーグナーの代表作のひとつ「ローエングリン」は、パートナーに無償の愛を求める聖騎士ローエングリンと、純粋で夢見がちのエルザ姫の悲恋の物語なのだ。ふたりの恋路に立ちふさがり、その領土を奪おうと画策するのが、本作の悪役であり、王国の有力な領主テルムラント伯爵の妻、魔女オルトルートなのだ。」

亘理『ゆうちゃん顔だらしない』

悠(女)「可愛いの間違いだろ」

神姫「へっ」

悠(女)「鼻で笑われた」

摩耶「大丈夫。カワイイヨー」

悠(女)「何でカタコトなのかなー」

千世子「森の中の荒れ果てた館に住んでいたオルトルートは、キリスト教によって勢力を失った古い神々を信仰していたのだ。彼女はキリスト教を信じる者たちを憎み、復讐の機会をうかがいながら長年魔術の修行を積んでいたのだ。」

亘理『ゆうちゃんは可愛いって思われたいの?』

悠(女)「もちろん、美人でもいいが?」

神姫「ふっ」

悠(女)「まーた鼻で笑われたな。なに、そんなにあーしのこと好きなんだったらホテルでも寄っていくか?」

神姫「なに?ホテルで絞めあげて欲しいの?」

悠(女)「そういうプレイはノーサンキュー」

千世子「オルトルートは、ブラバンド公国の後次であるゴットフリート公子を魔法で白鳥の姿に変えると、夫のテルムラント伯爵に「公子の姉エルザが、森の中で王子を殺した」という自作自演の裁判を起こさせ、公国の後次を排除することで国の実権を握ろうとするのだ。」

摩耶「でも、神姫さんは普通に此処来てるけどいいの?」

神姫「えぇ、別に問題ないわ」

悠(女)「とか何とかいって実は何人も男と付き合ってたりして」

神姫「……」

ピシッ!ぷしゅっ!
悠(女)「痛ぇぇっ!」

摩耶「おー、相変わらずのデコピンの切れ味」

悠(女)「デコピンの切れ味じゃなくて爪の切れ味だろ!!」

亘理『ゆ、ゆうちゃんとりあえず傷抑えて傷』

千世子「この策略が、突然エルザ姫のパートナーとして現れた「白鳥の騎士」に阻止されると、オルトルートは予言の力で白鳥の騎士の弱点を探り出し、エルザ姫の疑心暗鬼に陥らせて、みごとに白鳥の騎士を国から追い出すことに成功しているのだ。」

神姫「ふざけたこというからそうなるのよ」

悠(女)「んだよ……あーしはモテるだろって褒めただけなのに」

摩耶「どこがだろう」

亘理『さぁ……』

悠(女)「実際どうなんだ?」

神姫「いるわけ無いでしょ。百歩譲ったら見合いした悠だけね」

悠(女)「結局あれは決着つけてないんだろ」

神姫「お見合いの決着ってなによ」

雨「結婚じゃない?」

亘理『にゃんですと?!』

神姫「馬鹿馬鹿しいわ」

千世子「作中で何度か魔術を使っているオルトルートだが、彼女の最大の武器は魔術ではなく、巧みな言葉の力なのだ。彼女は夫のテルムラントに「王の娘を訴える」という大それた行いをさせたり、白鳥の騎士が「パートナーにあなたは何者かと聞かれると力を失う」という弱点を持つことを知ると、あの手この手でエルザ姫に疑いの心を植え付け、彼女が騎士の正体を気づくように仕向けたのだ。オルトルートは舌先ひとつで、聖騎士と姫の幸せな未来を打ち砕いたのだ。以上、オルトルートのじゅぎょーだったのだ。」
24/100ページ
スキ