ー奇談ー學校へ行こう7

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠(女)「ポテチってやっぱりコンソメがいいよな」

摩耶「九州しょうゆが美味しいかな」

神姫「シンプルイズベストに塩」

亘理『サワークリームオニオン』

悠(女)「それは無いわ」

亘理『ええぇっ?!』

【アラディア】
英字表記:Aradia
出身地:イタリア?
出典:「アラディアあるいは魔女の福音」(著チャールズゴッドフリーリーランド1889年)

千世子「千世子はのりしおがいいのだ。それは置いといてじゅぎょーしますなのだ。アラディアは19世紀末の魔女研究書で「魔女の女神」と紹介されていた存在なのだ。しかし現在では、この研究書「アラディア、あるいは魔女の福音」は、取材対象となった女性の作り話を元に書かれたとする説が有力になっているのだ。もちろんこの本に紹介された女神アラディアも、実在しない女神ということになるのだ。」

亘理『じゃ、じゃあ、ピザポテトは?』

悠(女)「はぁ」

亘理『溜息つかれた?!』

摩耶「僕は結構好きだよピザポテト」

悠(女)「だったら梅味だろ」

神姫「あぁ、それは私も好きだわ」

千世子「「アラディア、あるいは魔女の福音」によれば、この世界に最初に出現したのは、ギリシャ・ローマ神話で月の女神とされている女神ディアナ(アルテミス)なのだ。ディアナはまず闇と光を分け、闇をディアナ自身が、光を新たに創造したルシファーが管理することにしたのだ。」

亘理『ゆうちゃんはお菓子好きなの?』

悠(女)「だって女の子だもん」

神姫「……ポテチと辛子明太子なら」

悠(女)「辛子明太子」

摩耶「ケーキと塩からなら?」

悠(女)「塩から」

雨「おっさんね」

千世子「ふたりが世界と人間を創造してしばらくすると、人間の中に貧富の差があらわれ、富める者が貧しい者を迫害するようになったのだ。この裕福な者がキリスト教徒、貧しいものが異教徒(ペイガン)なのだ。アラディアはこのペイガンたちを救うために、肉体を持つ魔女として降臨したディアナとルシファーの娘なのだ。」

悠(女)「こんな乙女を捕まえておっさんとはなんだ蜘蛛っ娘」

雨「絡めて吊るしてやろうかしら…」

悠(女)「あーし、常に殺虫剤持ってたりするんだけど」

雨「冗談でもこっちに近づけるな!」

神姫「……」

雨「なんでそっちもキンチョール机においた!」

摩耶「……蚊取り線香でいい?」

雨「蚊じゃないわよ!っていうか、そろいもそろって殺虫道具を常備してんじゃないわよ!」

千世子「アラディアは、ペイガンたちがクリスチャンに対抗するための武器として、闇の女神ディアナを崇拝して妖術の奥義を授かる方法を教えたのだ。みのディアナ崇拝の儀式が、魔女の集会であるサバトとなったというのだ。魔女は邪悪な存在ではなく、キリスト教に抑圧された、古代宗教の名残だというのがこの本の思想なのだ。」

亘理『まーやくんの蚊取り線香って……なんでそんな物が』

摩耶「夏から机の中に終いっぱなしだったから」

悠(女)「あーしの机のなかには……なんだこりゃ?」

摩耶「充電器の束だね」

悠(女)「3DSにパソコン、PSP、PSV……なるほど、どこでも充電できるようにか」

亘理『よくお借りしてます』

千世子「ヨーロッパを震撼させた魔女狩りが18世紀の下火になると、歴史学者のあいだでは「結局魔女として処断された人々は何者だったのか」という議論が盛んになったのだ。その議論の中で出てきた説のひとつが、「魔女の福音」でも紹介された、魔女は古代宗教の信者だったという説が有るのだ。」

雨「亘理はゲームばかりしてるものね」

亘理『だって、悠ちゃん達来てくれないとヒマなんだもん』

摩耶「でも、そのせいかやりこみが半端ないよね。」

悠(女)「あーしもやりこみが半端ないぞ」

神姫「ゆう達の場合はただの廃人でしょ」

悠(女)「あー……半廃人かな」

雨「半分は自覚ありなのね……」

千世子「「アラディア、あるいは魔女の福音」は、この「魔女=古代宗教の信者説」を信じていた、チャールズ・ゴッドフリー・リーランドが、イタリアに住む魔女マッダレーナから教わった話を元に書かれたものなのだ。現在では、リーランドの取材目的を聞かされたマッダレーナが、リーランドが喜ぶような都合のいい話を創作し、それを真に受けたリーランドが書籍にまとめたものではないかと考えられているのだ。以上、アラディアのじゅぎょーだったのだ。」
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