ー奇談ー學校へ行こう7

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ふー、身体がダルイ」

摩耶「じゃあ、まだまだ余裕だね」

悠「なんで?!」

摩耶「人間ダルイとかいえるウチは全然余裕っていうのが鉄則だから。」

悠「なるほど、一理あるな」

亘理『じゃあ、悠ちゃんが寒い寒いいってるウチは平気なんだね』

悠「それは平気じゃない」

【ドロテア・ツェンテス&ダルヴァリ】
英字表記:DorottyaSzentes/Daruvala
生没年:不明~1611年(?)
出身地:トランシルヴァニア

千世子「じゅぎょーしますなのだ。東ヨーロッパの国々は、古くから魔術と縁の深いお国柄だ。例えばヨーロッパの東の果てにある国ルーマニアは、現代でも政治闘争に呪いが用いられているのだ。そして今から約400年前、16世紀後半の東欧では「ドロテア・ツェンテス」という魔女と森の魔女の異名を持つ「ダルヴァリ」のふたりが、ある高級貴族の使用人として、悪しき魔術をとり行っていたというのだ。」

神姫「寒さなんか慣れてくると思うんだけど」

悠「なれないし、なれる頃には夏だ」

摩耶「それは周りがあったかくなってきたってだけだよね。」

悠「そうとも言う。」

神姫「一度アイヌの涙でも振りかけてあげたいわ」

悠「本気で死ぬぞ」

千世子「彼女たちの主人の名前は、「エリザベート・バートリー」。現在のハンガリー、ルーマニア、スロバキアなどにまたがる地域を支配した大貴族「バートリー家」の当主であり、「血の伯爵夫人」の異名で知られる大量殺人者だったのだ。」

亘理『アイヌの涙って何?』

悠「入浴剤みたいなもんだな」

神姫「エッセンシャルアロマオイルでほんの二、三滴でいいものだけど……それを塗ったりしたら」

悠「極寒状態になって本気で死ねる」

摩耶「多分嫌がらせに持ってこいの一品だよ、湯船に溶かしこんどいたら絶対に気がつかれないだろうし」

悠「おれなら死ぬ」

神姫「なんかいいってるのよ」

千世子「エリザベートの一族であるバートリー家は、残忍な性格の人物が多いことで知られていたのだ。エリザベート自身もその性質を強く受け継いでおり、屋敷に仕えるメイド達に虐待を繰り返していたのだ。」

悠「メイドにお仕置きってなんかドキッとするよね」

摩耶「誰もいってないけどね」

神姫「でもアレでしょどうせ刀持ってたり銃乱射したりするんでしょ」

悠「世界広しといえど凶暴なメイドを生み出してるのは日本だけだろうな……」

摩耶「座敷童子の掃除婦がいるのもレアだろうけどね」

千世子「そんなエリザベートの残虐性を魔術の方面に向けてしまっていたのが、屋敷で働くツルコという男だったのだ。彼は呪術についての知識があり、エリザベートは彼とともに地下室にこもって怪しげな儀式をくりかえすようになるのだ。さらに彼女は本格的な魔術師として、女魔術師ドロテアと、森の魔女ダルヴァラを白に招き入れたのだったのだ。」

悠「そのかわり詐欺狸も居るぞ」

摩耶「ペットでしょ」

悠「あんなペットはいらん」

神姫「ペットって肩書きならいいかもだけど、それじゃなかったら……ニートでしょ」

悠「うーわー、いっきに邪魔もの」

千世子「ドロテアとダルヴァリは、城内での黒魔術儀式を取り仕切るだけでなくエリザベートの望みを叶える陰謀の実行者でもあったのだ。」

悠「年末の大掃除の時に処分できないかな」

神姫「同時に悠も捨てられるんじゃない?」

悠「アイアム屋主!」

雨「っていうか、根本的にアンタ大掃除するの?」

悠「おれはしないよ。監督監督」

摩耶「生ごみかな」

神姫「そうね」

千世子「ドロテアたちはエリザベートの乳母や執事と共謀して、エリザベートの奇行をとがめる夫の母親に対して、夫の母の連れて来たメイドを地下室に閉じ込めて拷問の末に殺すなどの、常軌を逸した嫌がらせを行ったのだ。そして結婚から25年後、エリザベート44歳の時に夫が亡くなると、彼女はドロテアたち使用人に夫の母を毒殺させるのだ。こうしてエリザベートの行動をとめられる者は、城内に一人も居なくなったのだ。今日はここまでで続きは次回なのだ」
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