ー奇談ー學校へ行こう7

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

冥「にゃは♪」

悠「お、管理人ちゃんご機嫌だな。尻尾触っていい?」

バリッ!バリッ!

摩耶「おー、悠君の頬で○×できそう」

悠「これ……跡のこるかな」

摩耶「たぶん、今日帰るころには治ってるよ」

神姫「なかなか気持ち悪いわね。」

悠「踏んだり蹴ったり……いや、掻かれたり罵声ったり」

亘理『語呂悪っ?!』

【マザー・シプトン】
英字表記:motherShipton
本名:ウルスラ・サウセイル
出典:シプトンおばさんの奇妙で不思議な歴史

千世子「はい、じゅぎょーですよなのだ。日本では預言者といえばノストラダムスばかりが有名だが、イギリスでは「マザー・シプトン」という魔女の預言者も広く知られているのだ。」

摩耶「でも、どうしてご機嫌なの?」

冥「アイパッド買ったのナ」

神姫「あら、いいわね。私も欲しいわ」

悠「……え、どうやって動かすの?」

冥「当然手でナ」

千世子「シプトンは、円形のつばがついた黒いとんがり帽子をかぶった、典型的な魔女の姿で描かれるのだ。文献によれば、曲がりくねったかぎ鼻に、赤と青を混ぜたような色の輝くほくろ、ぎょろりとした目に鋭い眼光、などの特徴が列挙されていて、後世のお伽話にあらわれる魔女とそっくりなのだ。」

悠「超見てぇ」

冥「別にいいのナ。こうツイーっとナ」

摩耶「おー、器用だね」

悠「おれなんて普通のスマホですら違うところ押すのに」

摩耶「金剛君も指が大きくてそうなるっていってたよ」

千世子「シプトンの死後に書かれた文献によれば、彼女は、治療、透視、嵐の操作などの力を持つ魔女の娘として産まれたが、母親は彼女を産んだ時に「奇妙な恐ろしい音」とともに死亡したため、地元の女性に引き取られたのだ。彼女の周りでは家具がひとりでに動く、食事の皿から食べ物が消える、家人が小悪魔にむりやり踊らされるなどの不可思議な現象が多発するなど、幼いころから魔女としての才能を発揮していたというのだ。24歳になるとトバイアス・シプトンという男性と結婚し、以降彼女は「マザーシプトン」と呼ばれるようになっていくのだ。」

神姫「でも、本当に良いわね。画質綺麗だし」

悠「サンタさんに頼んでみたらいい」

神姫「チッ」

悠「舌打ちしなくたって……ちょっとしたおちゃめなのに」

摩耶「新しい傷が増えなくて良かったね」

悠「ホントにな……」

千世子「伝説によれば、シプトンの隣家のパーティの参加者に子鬼(ゴブリン)をけしかけ、会場から追い出したことがあるのだ。彼女はこのイタズラのせいで法廷に呼び出されたが、「自分を起訴すればさらに恐ろしいことが起きる」と関係者を脅迫し、翼のあるドラゴンを呼び出して空に飛び去ったというのだ。」

亘理『私は新しい服が欲しいなー』

悠「なんでおれに向かっていうのかなー」

摩耶「悠君のいいところがみたーい的な」

悠「わかった。じゃあ、おれのスタジャンをやろう」

亘理『そんな背中で般若がドアップの服なんかいらないし』

悠「ひでぇ」

千世子「シプトンの予言は、解釈次第でどんな意味にもなるノストラダムスの予言とは違って具体的な内容(つまり的中する可能性が低い)にも関わらず、発明や新技術(自動車、電話、鋼鉄の船)、戦争、政治的事件などの大事件をいくつも的中させているのだ。だが、シプトンの予言を読むときは、その予言が「いつから世間に登場したのか」に注意しなくてはいけないのだ。」

摩耶「酷いのは悠君だけどね」

悠「花瓶……あっ、濁点つけわすれた。がびん」

神姫「……」
チキチキチキ…

悠「カッターの刃を出すな出すな。」

神姫「傷がふさがってきてるから開こうと思って」

悠「血が乾いて来ただけだからやめれ」

冥「それでも速いのナ」

千世子「じつは現在世間に知られている「シプトンの予言」のほとんどは、後世の執筆家たちの創作なのだ。シプトンの予言を紹介する最古の本でさえ彼女の死後100年以上あとに書かれており、彼女がどの程度予言に力を入れていたのかすら、正確には分かっていないのだ。以上、マザーシプトンのじゅぎょーだったのだ。」
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