ー奇談ー學校へ行こう7

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

亘理『ついに十二月!』

千世子「クリスマスが近いのだ!」

悠「クリスマスっか、忘年会シーズンだよな」

摩耶「っといっても、僕らにはそんなに縁は無いけどね」

神姫「あら、あの力士像みたいなのとそういうことはしないの?」

悠「力士像っていうのなら金剛もいってやれよ。っか、金剛力士像だから、力士像ってより普通に金剛って単語のが先に……」

神姫「……」

パコォォォン!!

悠「っぉぉぉ……」

摩耶「スリッパっていい音するよねー」

悠「寒いからしなりが半端なく痛い……」

【アリス・カイテラー侯爵夫人】
英字表記:LadyAliceKyteler
生没年:1280~1325以降(没年不詳)
出身地:キルケニー

千世子「じゅぎょーなのだ。14世紀序盤、日本では鎌倉幕府が滅亡したころから、ヨーロッパでは「悪魔と契約した魔法使い」を断罪する宗教裁判が始まったのだ。この裁判は、のちに女性をターゲットに過激化して「魔女狩り」と呼ばれるようになり、その終結までに数万人の犠牲者をだす惨事となったのだ。」

悠「痛い。痛いよぉ」

摩耶「きっとおでこがスリッパ型に赤くなってるね」

亘理『え、分かるの?』

摩耶「音的にね」

悠「なにもしばくこたぁないだろ」

神姫「蚊が居たのよ」

悠「時期はずれなうえに蚊に対してはオーバーキルすぎやしませんかねぇ」

千世子「だが魔女狩りの盛り上がりには地域によって違いがあり、イギリスの西に浮かぶアイルランド島では、魔女狩り終結までに、魔女裁判はわずか8件しか行われなかったのだ。その最初の事件が、アイルランド南東部の大貴族、アリス・カイテラー侯爵夫人が魔女として告発された事件だったのだ。」

神姫「まぁ、本当はごちゃごちゃうるさくてイラっときたんだけどね」

悠「はっきり言いやがったな」

亘理『ちょっと可哀想だよ』

神姫「気のせいよ」

雨「気のせいで片づけ出したわね」

千世子「フランスで学んだ司教レドルドの告発によれば、カイテラーはキルケニーの呪術師たちの頭目なのだ。彼女は神を否定し、悪魔に生贄をささげたり、斬首された泥棒の頭蓋骨で大釜を作り、そこに赤ん坊の脳などのまがまがしい材料を入れて煮詰め、魔法の軟膏と粉薬を作ったというのだ。彼女が持っている多くの財産は、彼女が夫を毒殺して財宝を奪ったり、悪魔を使って集めたものだというのだ。」

摩耶「まぁ、悠君相手だししかたないね。」

悠「しかたないくないよー」

神姫「でもね、叩きやすいのは本当に叩きやすいの」

悠「いや、なんにも嬉しくない」

摩耶「まぁ、悠君も好き勝手言ってるしトントンかな」

千世子「アリス・カイテラーが、無実の罪で殺された魔女裁判の犠牲者たちと違っていた点は、彼女には富と権力と民衆の支持があったことなのだ。彼女はレドルド司教の告発を完全に無視すると、あらゆる手段でレドルド市況と対決したのだ。」

悠「今回の件に関しては悪くないっしょ。ただの訂正なのに……」

神姫「いいかたがねちっこかったのよ」

摩耶「ねちっこいって」

悠「エッチはねちっこくないから」

亘理『なっ///』

神姫「腰振るだけなら犬と同じね」

悠「こんな屈辱は初めてだ……」

千世子「司教がアリスを破門(キリスト教の加護が与えられないという宣言)すれば、アリスは司教を逮捕監禁し、教会に圧力をかけてレドルド司教のアイルランドでの地位を奪う。しかし司教は構わず大量の部下とともに裁判所に乗りこんだのだ。」

摩耶「これでは殴らなかったんだ」

神姫「なんかストレートすぎて呆れも通り越したのよ」

悠「ちょっと待ておれは色々と上手なはずだ!」

亘理『上手?!』

雨「アンタも反応しない。ってか、食い下がるなよ」

千世子「泥沼化する事態に、アリスは財産をもって海の向こうのイングランドへと逃れるのだ。彼女に手をだせなくなった司教は、アリス不在の裁判で有罪を出したり、アリスのメイドを逮捕して拷問を加え、アリスが魔女だったと自供させて火あぶりにするなどで溜飲を下げるしかできなかったのだ。逆にレドルド司教は、彼自身が異端だとしてアイルランドを追放されているのだ。」

神姫「あらそう興味ないから」

悠「ぬぬっ!」

摩耶「実践してみたらいいんじゃない?」

神姫「……」

ブンッ!
ひょい!
摩耶「おっと」

バチィィィン!
悠「痛でぇっ!?」

雨「ナイス回避ととばっちりね」

千世子「はい、ひこの三人うるさいのだ!コホン、アリスと司祭の戦いのあと、2度目の魔女裁判がアイルランドで行われたのは、事件から約160年もたった1578年になってのことなのだ。以上、アリスカイテラー侯爵夫人のじゅぎょーだったのだ。」
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