ー奇談ー學校へ行こう7

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「あんちん、あんちん」

悠「んー?」

千世子「その服、もしかして買ったばかり?」

悠「正解だ。いい感じだろ背中一面の般若」

千世子「やっぱり」

悠「そういえば、なんで分かった?」

千世子「値札ついてるのだ」

悠「なぬっ?!」

【ショヴィハニ】
出身地:ヨーロッパ各地
出典:ジプシー(ロマ)の伝承

千世子「はーい、じゅぎょーしますなのだ。ヨーロッパには、特定の土地に住むことなく世界を放浪し続ける、「ジプシー」と呼ばれる民族が居るのだ。このジプシーとは彼らが「エジプトから来た民族だ」と誤解されたことから付いた名前で、彼ら自身は自分たちの言葉で人間を意味する「ロマ」「ロマニー」と自称しているのだ。」

悠「気がつかずに一日過ごしてた……」

摩耶「きっと気がついた人は何人もいただろうけどこんな恰好してる人には声かけづらいよね」

悠「おれがイケメン過ぎて声かけづらいって?」

神姫「……はぁ」

悠「なにも言われずにただ、ただ、溜息つかれるのってすごくつらいです」

千世子「ジプシーの文化には魔術が深く根づいていて、その使い手はほとんど例外なく全員が女性であるのだ。なかでも「ショヴィハニ」と呼ばれる魔女が、民族の中で深く尊敬されているというのだ。」

亘理『もっとおしゃれしようよ』

悠「おれのどこがオシャレじゃないというんだ。シャレレレだろ」

雨「シャレレレってなによ」

亘理『背中に般若背負ってる人をオシャレとは言えない』

摩耶「パンダだったら良かったのにね」

悠「逆に怖くね?」

千世子「ショヴィハニの多くは醜い容姿で、相手を睨みつけるだけで呪うことができるという「邪視」の能力を持っているのだ。その他にも占い、治療、呪いなどの魔術をあやつり、中でも特に占いを得意とするものが多かったのだ。水晶占い、手相術、カード占いなどショヴィハニの特技であり、彼女たちはこれでジプシー以外の民族から代価を得るのだ。」

悠「じゃあ、明日から痛いTシャツ着てこようか」

摩耶「スプラッタ?」

悠「そんなグロい意味の痛いじゃないよ」

神姫「そういうの趣味なの?」

悠「んー……むしろ逆に着れないかな」

神姫「は?」

悠「いや、汚したくないし」

神姫「なめてるわね」

千世子「彼女たちはジプシーの共同体のなかで特権的な地位をもっていて、狙った相手を癒すのも呪い殺すのも、ショヴィハニ自信の意思で自由に行うことができたが、これはショヴィハニたちが、占い技術で多民族から金銭を稼ぐことができるからだというのだ。」

摩耶「コレクターってそんなものだよ」

悠「摩耶もあるか?」

摩耶「僕はないけど」

悠「即答された」

神姫「好きな相手から貰ったクッキーとかとって飾っておくタイプ?」

悠「いや、それはガンガン食うけど……」

千世子「ジプシーという民族は、もともとインド北部に住んでいた民族が10世紀ごろから放浪を開始し、14~15世紀ごろにヨーロッパに到着。その後欧州全土、アメリカ合衆国などにも広がったのだ。一説によれば、14~15世紀にヨーロッパで魔術が盛んになった原因の一つは、このジプシーたちが使った魔術だというのだ。以上、ショヴィハニのじゅぎょーだったのだ。」
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