ー奇談ー學校へ行こう7

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「カチカチ……」

摩耶「歯の根がかみ合ってないよ」

悠「さ、さむい……」

亘理『今日は昨日よりあったかくない?』

悠「そ、そうか?」

神姫「……上着脱いでみなさい」

悠「へ?」

神姫「いいから、脱げ」

バッ!
悠「やぁん!」

亘理『なんでなか半袖……』

悠「長袖がちょうど無くって」

【ランツュジハ】
出身地:ウクライナ
出典:ウクライナの民間伝承

千世子「じゅぎょーしますなのだ。ランツュジハは、ウクライナの伝承や、ロシアの作家オレスト・ソーモフの「キエフの魔女たち」に登場する魔女の個人名なのだ。彼女は自分から魔女になりたいと願い、川の中から現れた悪魔と「毎月悪魔とダンスを踊る」という契約を交わして、魔女になった女性なのだ。」

摩耶「そりゃ寒いよね」

悠「スタジャンの装甲なら平気だと思ったんだけど」

雨「スタジャンには荷が重すぎるでしょ」

神姫「それだったら、上着二枚きなさいよ」

悠「……!?」

摩耶「その発想はなかったって顔してる」

千世子「ウクライナでは、魔女たちは夏至の祭(イワン・クパーラ)の前夜に、キエフ(現ウクライナの首都)近郊の禿山で行われる魔女集会にとんでいくのだ。このとき魔女たちは自分の身体に「魔女の軟膏」を塗り、箒や火かき棒に乗って暖炉の煙突から飛び出していくのだ。なお、もし普通の人が魔女の秘密の行動を見てしまった場合、その人は魔女に心臓から血を吸われて死ぬといわれているのだ。」

悠「うー、もう岸部露伴にへヴンズドアーで小鳥遊悠は寒さを感じないって描きこんで欲しい」

摩耶「小鳥遊悠は動かない」

悠「ドドドド」

神姫「馬鹿言えるってことは元気なのね」

悠「元気はあるけどスタミナは最低値」

千世子「魔女ランツュジハには娘がいて、村人は彼女も魔女だと噂していたが、それを信じない一般人の男性と結婚して幸せに暮らしていたのだ。ところがある日、夫の青年は、彼女が魔女の軟膏で空を飛んで集会に向かうところを目撃し、自分も妻が残した軟膏を使って使って集会の会場に飛んでいったのだ。」

亘理『そこまで寒がるって何かの病気じゃない?』

悠「病気って」

摩耶「心の」

神姫「頭の」

悠「なんか違う意味でいってるだろそれ」

千世子「このあとの結末は物語ごとに異なるのだ。ウクライナの伝承では魔女の娘は「自分は母に無理やり集会に参加させられているのだ」といい、白い杖を魔法で馬に変えて夫を乗せ、家へと逃がしたのだ。しかし「キエフの魔女たち」では、正体を見られた魔女の娘に心臓の血を吸われて死んでしまったのだ。」

雨「ぶるぶるにでも取り憑かれてるとか」

悠「ぶるぶるって妖怪ぶるぶる?」

雨「そう」

摩耶「最強狐と狸おやじと貞子たんには取り憑かれてるよね」

悠「取り憑かれてはいない!……はず」

千世子「ウクライナや隣国のロシアでは、魔女には「生まれつき魔女として産まれるもの」と「志願して魔女になる者」に2種類がいて、ランツュジハは校舎であるなのだ。両者を比較すると、生まれつきの魔女よりも、志願した魔女の方が性質が悪いというのだ。こうして後天的に魔女になった者は非常に長生きするが、その代償として死に際にとてつもない激痛を味合うこととなるのだ。」

神姫「あっ」

悠「どした」

神姫「寒いのなら雲水の伯父様に相談してみたら?」

悠「なんで鬼のおっさんに?」

神姫「鬼状態の応用で体温上昇の術を知ってるかもしれないわよ」

悠「オー、マジでか。ちょっと話してみよう」

摩耶「ぽそぽそ(ホント?)」

神姫「ぽそぽそ(適当よ。うるさいから静かになると思って)」

千世子「生まれつきの魔女は、一家に10人目の娘、あるいは13人目の娘として産まれた女の子が成長した姿で、生まれつき小さな尻尾が生えているのだ。この尻尾は魔女が中年になるころまでに20センチ程度まで伸び、魔女が何に変身しても消えないというのだ。以上、ランツュジハのじゅぎょーだったのだ。」
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