ー奇談ー學校へ行こう6

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「寒いさむい」

摩耶「ほとんどそれしか言わなくなったね」

神姫「頭ね。」

悠「ひとを病人扱いしなさんな!」

千世子「あんちんの寒がりレベルは毎回衰えることを知らないのだ」

悠「寒がりなんでな……。」

【バーバ・ヤーガ】
英字表記:BabaYaga
出身地:ロシア
出典:ロシア、北欧の民間伝承

千世子「はい、じゅぎょーしますなのだ。日本人が山に現れる妖怪婆を山姥と呼ぶように、ロシアでは森や山にあらわれる魔法使いの老婆のことをバーバ・ヤーガという総称で呼んでいるのだ。彼女たちはロシアの民話にたびたび登場し、人間を食料として狙う危険な存在なのだ。」

悠「うー……この校舎全体をもっとあったかくしてくれるよう頼んでおかないと」

摩耶「でも、揺光さんとメフィストさんの二者がいないとダメなんじゃない?」

悠「うー……」

雨「そこまで寒いかしら」

悠「寒いよ。おれの財布の中身くらい寒い」

神姫「それは切実なのね」

亘理『悠ちゃんはいったい何にお金使ってんの?』

千世子「さまざまな民話の記述からもっともよく見られる特徴を抽出すると、バーバ・ヤーガは痩せこけて、髪の毛をふり乱した老婆であるのだ。寝そべれば部屋の隅から隅まで届くほどの長身で、足の骨が丸見えなのが最大の特徴なのだ。」

悠「娯楽品」

摩耶「エッチな本とかエッチなゲームだって」

悠「それにも使うけどそればかりみたいに聞こえるから!」

亘理『じー』

悠「なんか家畜を見る目で見られてる」

摩耶「家畜っていうか……淫獣?」

千世子「森の中の「ニワトリの足と犬の踵の上」に建てた小屋の上に住んでおり、大変残酷な性格で、好物は人間の丸焼。ペチカという暖炉の中に人間を放りこんで焼き上げ、食べ終わった後の人骨を床に並べて、その上に寝転がるのも大好きだというのだ。」

悠「フィギュア、ゲーム、本がメインだな。あとはご飯代」

神姫「その一部を防寒具にまわしたらいいんじゃない?」

悠「それは無理」

神姫「……」

亘理『悠ちゃん、すっごい眼で睨まれてるよ』

悠「振り向かない!振り向かないぞー!」

千世子「物語の中のバーバ・ヤーガは、呪いや変身の魔法を使う程度で、手の込んだ魔術を使っている民話はそれほど多くないのだ。そのかわり人間を軽く上回る身体能力を持っていて、障害物を鋭い歯で噛み砕きながら高速で走り、全速力で走る馬にさえ楽々と追いつくことができるのだ。」

摩耶「まぁ、悠君の場合は厚着したくらいじゃどうにもならない気もするけどね」

雨「どういうこと?」

摩耶「もはや条件反射的に寒さに身体も心も参ってるからね。本当に寒いかどうかっていうより精神の問題」

悠「気持ちでどうにかなるんなら、おれは燃えるほどヒートなはずだ」

神姫「吹けば消える程度の火でしょ」

千世子「また、西洋の魔女の代名詞である箒にまたがることなく、そのかわりに臼や大鍋に乗るのだ。ボートのオールのように杵を動かすと、臼や大鍋は少しだけ空中に浮き上がって移動し始めるのだ。バーバ・ヤーガは箒も使うが、空を飛ぶためではなく地面を引きずって移動する臼のひきずり跡を掃き消すために使われるのだ。」

悠「だれが風前の灯火だ」

摩耶「落語の死神?」

悠「得意だが?」

神姫「死神に連れていかれたらいいのにね」

悠「さらっと死の宣告はやめてくれ」

亘理『死んだら妖怪になろうね!』

悠「そういう誘いもやめれて……」

千世子「バーバ・ヤーガには娘がいることもあるが、物語中で娘が魔術を行使したり、抜群の身体能力を発揮する場面はまず見られないのだ。どうやら偉大な魔女の才能は、遺伝するとは限らないもののようなのだ。今日はここまでで続きは次回なのだ。」
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