ー奇談ー學校へ行こう6

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「ふー……」

神姫「はー……」

摩耶「どしたのダブルで溜息なんてついて」

悠「友利に振り回された」

神姫「あの娘は私も苦手だわ」

亘理『神姫さんが苦手な人って……』

悠「純度100%の変態」

雨「お前と同じか」

悠「おれと友利を同じステージ思うなよ」

【グローア】
英字表記:Groa
出典:北欧神話『詩語法』

千世子「じゅぎょーしますのだ。北欧神話では、ヴォルヴァ(巫女の意味)という職業の女性が、魔法を使っていくつもの奇跡を起こしているのだ。今回じゅぎょーするヴォルヴァ「グローア」は、癒しの魔力を持つことで知られていたのだ。」

悠「おれも癒してほしい」

摩耶「はい、バファリン」

悠「わーい、半分がやさしさ」

神姫「100%薬よ」

悠「あ、はい……。」

千世子「13世紀の詩の参考書「詩語法」に例文として紹介された神話によれば、雷神トールがフルングニルという巨人と戦って勝利したとき、フルングニルが投げた磁石の破片が額に食い込み、トールは頭痛に悩ませるようになってしまったのだ。」

悠「やっぱり頭痛にはバファリンだよな」

摩耶「ビスティーEX」

悠「総合風邪薬か。」

亘理『やたら薬に詳しいね』

悠「薬が効かないから効く薬を探すのに一苦労して知識がついた」

摩耶「薬でアレルギー症状がよく起こるから大丈夫な薬を探すのに超苦労して知識がついたんだよ」

神姫「真反対ね」

千世子「頭痛に苦しむトールを助けるべく、神々に呼び出されたのが、癒しの術を持つグローアだったのだ。彼女が魔法の歌を歌うと、トールの額の石は徐々にゆるんできて、これで助かると機嫌を良くしたトールは、治療の最中だというのに、グローアにお礼として大事な情報を話し始めるのだ。」

悠「まぁ、薬なんて飲まなくても女の子抱っこしてたら色々と元気になるけどな」

神姫「メスのナメクジでも落としてあげようか?」

悠「ナメクジは雌雄同体だ。だからやめてください」

摩耶「マジ震えしてるんでそのくらいで」

亘理『ナメクジは本当に嫌なんだね』

千世子「グローアにはアウルヴァンディルという夫がいるのだが、長く留守にしており、グローアは夫の消息を気にしていたのだ。トールは少し前に巨人の国でアウルヴァンディルに出会い、その旅を助けたことを知らせ「もうすぐ帰るから安心していい」と話したのだ。」

悠「考えただけで悪寒が止まらない。なのは、フェイトちょっと抱っこさせてくれ」

亘理『ちゃっかりなにいってんのかな?』

悠「ちょっとしたおちゃめですよ」

なのは「おちゃめの割には目が本気だったの」

悠「いや、抱っこさせてくれるなら全然ウェルカムだし」

亘理『がぶっ!』

千世子「夫の無事を聞いたグローアは、喜びのあまり癒しの呪文を忘れてしまったのだ。そのため治療は失敗、食いこんだ磁石は今でもトールの頭に埋まっているというのだ。」

悠「痛い痛い痛い」

フェイト「大丈夫なんでしょうか?」

摩耶「バファリンあげとこうか頭噛まれてるし」

悠「頭痛と外部的な痛みは違うっしょ?!」

千世子「北欧の神話誌であるエッダ詩には、トールの物語よりもあとの時代を舞台に、グローアの息子であるスヴィプドラークが、死せる母グローア呼び出して助けを求める「グローアの呪文」という作品があるのだ。スヴィプドークは継母の命令で、メングラドという美女の愛を手に入れる必要があったのだ。彼は呼び出した母から、災いを避ける9個の呪文を教わり、メングラドの愛を手に入れるための長い旅に出るのだ。以上、グローアのじゅぎょーだったのだ。」
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