ー奇談ー學校へ行こう6

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

千世子「蒸し暑いのだぁ」

悠「暑いのならマシだろ」

摩耶「蒸し暑いのもセーフ?」

悠「不快指数が高くてナメクジが沸きそうな湿度だとアウト」

亘理『悠ちゃんの弱点のナメクジね』

悠「弱点じゃない大っ嫌いなだけだ」

神姫「同じでしょ」

【山のビログ】
英字表記:Biroge
出身地:アイルランド
出典:アイルランド神話「侵略の書」

千世子「はーい、じゅぎょーしますなのだ。かつてヨーロッパの広い地域で暮らしていた「ケルト人」という民族は、「ドルイド」という自然崇拝の宗教をもっていたのだ。ドルイドとは宗教の名前であると同時に、ドルイド教の司祭の呼び名でもあるのだ。」

悠「人間嫌いなものの10や20あって当然だろ」

なのは「おおいですね……。」

悠「大人になれば分かるよ。ああ、こんなの嫌いだなーってこと」

摩耶「なんて事は聞かなくていいから無視してね」

フェイト「は、はい」

悠「ひゃっひゃひゃ。ブロックされたよ」

千世子「自然を触媒とした呪術を操るドルイドには、女性もいたのだ。イギリスの西に浮かぶアイルランド島では、ドルイドは神話時代から存在していたことになってなっており、山のビログという名前の女ドルイドが活躍しているのだ。」

神姫「悠という存在をブロックすべきね」

悠「あれ全否定?」

雨「教育上は良くない」

悠「人を有害図書みたいに言うなよ」

摩耶「上手い!」

悠「わーい」

神姫「自分で自分を貶めたのも喜ぶのね」

千世子「山のビログは女性のドルイドだが、その正体は人間ではなくリャナンシー(妖精の女)だとする文献もあるのだ。風を操って空を飛び、呪文で人間を眠らせるなど多彩な魔術を使うことが出来たのだ。」

亘理『悠ちゃんにもいっぱいいいところはあるし!』

神姫「例えば?」

亘理『……お、お金には汚くない』

悠「人格とかじゃなくてそこか」

摩耶「人格は歪んでるからねじれきって一回転してるよ」

悠「今日は摩耶の毒が冴えわたってんなー」

千世子「アイルランド島の神話の中でも最古の時代を扱う「ダーナ神話」は、複数の種族が、アイルランド島の覇権をめぐって戦った歴史物語の形を取っているのだ。山のビログは、神の一族、トゥアハ・デ・ダナーンが島の支配を確定させた戦いで、総指揮官を務めた「光の神ルー」の誕生に深くかかわった人物なのだ。」

なのは「あの、でも、悪い人じゃないですよ?」

悠「なの……」

神姫「いい人ではもっとないわ」

悠「おー、またブロックされた」

摩耶「ブロックする方がこれほど簡単なのもないよね」

悠「だろうっ!」

亘理『なんで……ドヤ顔?』

千世子「アイルランド島を支配する邪悪な巨人族「フォモール族」の王であるバロールは、見るだけで相手を殺すという強力な邪眼の持ち主だったのだ。しかしバロールは配下のドイルドたちから「孫によって殺される」という予言を受けていたため、バロールは娘のエスリンを幽閉し、誰にも合わせないようにしていたのだ。」

フェイト「やさしい所もありますし」

摩耶「同時に存在する下心」

悠「正解っ!」

亘理『悠ちゃん、褒められたいの?貶されたいの?』

悠「褒められたいに決まってんだろ!!」

亘理『えぇ……』

千世子「同じころバロールは、変身魔法を使って、トゥアハ・デ・ダナーンの鍛冶師三兄弟が飼っていた魔法の牛をだまし取ったのだ。末の弟であるキアンがドルイド「山のビログ」に相談したところ、バロールが死ぬまで牛は戻らないというのだ。そこで彼はビログの助けをかりて、バロールの死の予言を実現させることにしたのだ。」

雨「なんでへこたれないんだコイツ」

悠「こうやって話題に上ってるうちが花だしな。悪いようにいわれても、良いようにいわれても有りかなって」

神姫「達観してるけど死ぬの?」

悠「もうちょっと頑張るよ」

摩耶「っていうか、基本死なない人だしね」

悠「そんなことはないですけどね」

千世子「魔法でバロールの娘エスリンを(合意のうえで)妊娠させて塔を去ったのだ。この子供こそ、のちの光明神ルーであったのだ。激怒したバロールは産まれた子供を海に捨てるが、山のビログがこれを救いだして父キアンのもとへ運ぶのだ。すくすくと成長したルーは、戦場で予言とおりにバロールを殺したのだ。以上、山のビグロのじゅぎょーだったのだ。」
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