ー奇談ー學校へ行こう6

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「秋って言えば山だよな」

摩耶「キノコ狩り」

悠「くいたくねぇ……」

摩耶「栗拾い」

悠「そっちがいいな。栗をクリっと拾いたい、つまみたい」

神姫「……」

ダァンッ!
悠「がびゃっ!!」

千世子「あんちんは今何で蹴られたのだ?」

摩耶「大人になると分かるよ」

【馬謄】
本名:馬・謄・寿成
生没年:?~212

千世子「じゅぎょーしますなのだ。中国の西北、シルクロードの出発点「涼州」。この地域に住む有力者たちは独自の兵士たちを保有し、後漢政府から半分独立した立場だったのだ。蜀の猛将馬超の父である馬謄も、涼州で独自の軍事力を持っていた有力者なのだ。」

悠「わき腹に、衝撃が…衝撃が……」

神姫「それだけで済んだのに感謝しなさい」

悠「……」

摩耶「まぁ、今のはちょっとねー」

悠「クリっと拾いたいって言っただけなのに」

千世子「馬謄は「漢民族」という中国の大多数を占める民族の父親と「羌」というチベット系の民族の間に生まれたのだ。『正史』によると、馬謄は八尺(約190センチ)ほどもある長身で、頼もしい体つきをしていたと書かれているのだ。しかし体格に似合わず温厚な性格で、頭も良く、多くの人に慕われたと言うのだ。」

神姫「もう一回いく?」

悠「やめてください」

亘理『悠ちゃん、ちょっと下品』

悠「ちょっとなら全然まだイケるな」

雨「おかしなところに前向きよね」

千世子「若いころの馬謄は貧しく、山に入っては木を切り、それを売ることで生活していたのだ。大平道という宗教の教祖「張角」が起こした黄巾の乱が起きたのと同じころ、馬謄の住む涼州でも異民族や平民などによる反乱が起こったのだ。馬謄はこの反乱をしずめる軍に参加して活躍、朝廷にひと目置かれる存在となったのだ。」

悠「ドン引かれるくらいになったら自重する」

摩耶「相手に寄った普通にドン引きな人多いと思うよ」

悠「身内にしか言わないからおっけーね」

亘理『蹴られたけどね』

千世子「その後、馬謄は朝廷に仕えるが、戦乱の世ということもあり、結局涼州に戻って独自の軍勢を率いるようになったのだ。」

悠「確かに蹴りが出るとは思わなんだ」

神姫「その割にはガードしたわよね」

悠「なんか……肋に対してやたら過剰防衛しちゃうんだよ、何故か」

千世子「『演義』での馬謄は『正史』と違い、漢王朝の敵を倒すと言う、漢への忠義心あふれた人物として描かれているのだ。袁紹を倒して中国北方の覇者となった曹操も、他国に攻撃するときは常に馬謄を恐れていたのだ。手薄になった本国を、強力な馬謄軍に攻められてはひとたまりもないからなのだ。」

摩耶「きっとそのうち肋に途轍もないダメージ受けるんだよ」

悠「やめてよーもー。」

神姫「ちっ」

悠「舌打ちされたよ……」

亘理『激おこ状態』

千世子「『正史』と『演義』では、馬謄の死ぬ敬意も大きく違っているのだ。どちらも曹操に殺されること自体は変わらないのだが、『正史』では馬謄が朝廷に仕えるため都に行ってる時に、本国で息子の馬超が曹操を攻撃し、怒った曹操によって処刑されているのだ。息子の暴発のせいで命を落としたと言えるだろうなのだ」

神姫「激おこぷんぷん丸って……ふざけてるわよね」

悠「なんか可愛くね?」

神姫「そう思う?」

悠「いや、全然」

雨「なにそれ……」

千世子「曹操を悪役と位置付けている『演義』では、処刑と反乱の順番が逆に描かれたのだ。朝廷に仕えるため都にいった馬謄は、漢王朝の忠臣や劉備と共に曹操を暗殺する計画に参加しており、これが露見したため曹操に殺されたのだ。父を殺されて怒った馬超は、ライバルと手を組んで曹操に攻撃を仕掛けたのだ。馬謄を騙して殺した曹操は極悪人、父の敵を討つために軍をおこした馬超は孝行息子と読めるようになっているわけなのだ。以上、馬謄のじゅぎょーなのだ。」
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