ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(1/9/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

摩耶「こんばんわ」

神姫「……こんばんわ」

摩耶「ニコニコ」

神姫「……摩耶君はいつも笑顔ね。疲れない?」

摩耶「ぜんぜん。」

神姫「そっ。」

悠「……(摩耶とは少し打ち解けてるけど壁あるなぁ)」

花描「ピエロ君は忙しいな。あっちこっちの女の子にちょっかいだして」

悠「忙しいのは認めるが、後半のは無視する。」

雑談していると教室のドアが開いて、千世子が入ってきて教卓の前にたった。

千世子「みんなー、集まってるなー。じゃあじょぎょーをはじめるのだ。最初にべんきょーする飛竜はこれなのだ」


【リントヴルム】
生息地域:ヨーロッパ各地
出典:ドイツ、北欧の民間伝承

摩耶「リントヴルム?」

神姫「ドイツ語でドラゴンをさす言葉ね。」

摩耶「そうなの?」

悠「この単語はやさしさを意味する「lind」に、蛇や虫を意味する「wurm」が組合わさってできてるけど「lind」は古いドイツ語で虫や蛇をあらわす「lint」から来てて、蛇を意味する単語を重ねた二重表現って説もあるんだ」

花描「神姫ちゃんにピエロくん、千世子ちゃん泣きそうだぞ」

千世子「ぐすっ…ちよこがせんせぇなのに…」

悠「悪かった」

神姫「ごめんなさい。続けていいわよ」

悠「神姫が謝った!?」

神姫「投げられたいの?」

悠「いえ、なんでもございません」

千世子「……別名としてリンドワーム、リンドオルム、レンオルムなどという呼び方も使われるのだ。ただ単にリントヴルムという場合、この言葉には二種類の意味があるのだ。ひとつはさっき、悠のあんちんと神姫ねーちんがいったように、単なるドラゴンを意味する一般名詞である「リントヴルム」。もうひとつは北欧の民話の登場人物で、竜王と呼ばれた人物「リントヴルム王子」なのだ」

悠「どうだ世界の半分をお前にやろう」

摩耶「竜王だね。」

花描「一般的な意味のリントヴルムはどんなんだ?」

千世子「リントヴルムはドラゴン一般をあらわす言葉だけあって、その特徴は個体ごとに大きく違うのだ。lindwurmという単語のなかに蛇を意味する単語が二つも入っていることから、蛇の姿が基本に思えるけど、そうとは限らないのだ。ある伝承ではワニのような口に鋭い牙、背中にコウモリの翼、矢のようにとがった尻尾という姿だし、別の伝承には馬に似た頭に、燃える赤い目を持つ巨大な蛇という具合なのだ。」

花描「ふぅん。」

千世子「じゃ、今日のじゅぎょーはここまでなのだ。」
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