ー奇談ー學校へ行こう6

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「八月が済んだと思ったら台風連打だな」

摩耶「悠君はテンションあげあげでしょ?」

悠「大嵐になるたびにクシャルダオラが降ってくるんじゃないかとドキドキする」

神姫「あれが完璧な風壁よね」

悠「風衝壁ならおれもパワーアップしたが?」


千世子「はーい、関羽のじゅぎょーしますなのだ。『演義』において、関羽は顔が赤く、九尺(2m以上)の長身だと書かれているのだ。武器は巨大な薙刀である「青龍偃月刀」なのだ。一日に千里を行くという名馬「赤兎馬」に乗った姿は中国のみならず世界的に有名なのだ。」

神姫「ふぅん……」
すっ…

悠「構えないで、無理だから、神姫さんには容易に破られますから」

摩耶「というか、わりとバリバリ割られてるよね。光子力研究所のバリアー並に」

悠「……」

亘理『笑顔でフリーズしてる』

千世子「過去の歴史書などによると、関羽は死の直後からずっと勇猛な武人として語り継がれていたらしいのだ。『演義』が、蜀を漢王朝の正当な後継者と考える作品であることも手伝い、関羽は実物象よりもかなり美化して描かれているのだ。」

神姫「情けないわ」

悠「情けないって……」

神姫「応用を利かせるなり、より強度をあげるなり方法はあるのに」

悠「そんな易々と出来ませんての」

摩耶「まぁ、むしろバリア使わずに肉の盾で受け切るほうが楽でしょ」

千世子「まずは、関羽が美女に執着した話など、関羽の「義理堅い」猛将というイメージを損なう話しを無視しているのだ。さらに関羽の武将を強調するため、他の武将が立てた武功が関羽の手柄に変更されているところもあるのだ。」

悠「金剛じゃあるまいし、全部受けるなんて無理。おれ痛いの嫌いだし」

亘理『うそぉ』

悠「なんで意外そうな顔してるのか詳しく説明してもらおうか」

神姫「マゾじゃない」

摩耶「一行完結」

千世子「そして関羽の義理堅さを強調するため、ふたつのエピソードが追加されたのだ。ひとつは「関羽千里行」と呼ばれたものなのだ。劉備が曹操に破れて散り散りになったとき、関羽は敵の捕虜になるという不名誉を受けてしまっているのだが、『演義』の作者はこの不名誉を脚色することで関羽の名声に変えてしまったのだ。」

悠「完結してへん。マゾやないです」

神姫「関西弁のエセ東京人が」

悠「そんな怒られ方されたの初めてだ」

亘理『悠ちゃんて何人?』

悠「日本人だよ」

神姫「日本語が不自由なね」

千世子「『演義』で関羽は、曹操に捕えられた劉備の家族を守るために、「劉備の行方がわかったら去る」という条件付きで降伏したのだ。そして曹操と袁紹の決戦で敵将ふたりを斬って曹操に恩を返し、その後劉備の居場所を見つけて曹操のもとを去っていくのだ。このとき関羽は曹操から通行許可所を受け取らずに出発したため、関羽を通さない五つの関所を、劉備の家族を連れたまま強引に突破することになったのだ。」

悠「おいおい、おれは舌先八寸な男だぞ?」

摩耶「うん、すごく、かっこ悪い」

亘理『けど、後楽のおじさまとかのが口先だけって気がする』

悠「後楽、ミハイルは寸借詐欺師と同じ本職だからな。いっしょにしないでくれ」

摩耶「カテゴリー別にすると嘘つき、ジゴロ、詐欺師?」

悠「大雑把に全員嘘つきでもいいけどな……だれが嘘つきだ!」

神姫「自分を客観的に見れてるわね」

悠「ああ、すっごいいい笑顔なのに褒められてないのは分かる。」

千世子「もうひとつは「赤壁の戦い」での曹操追撃戦なのだ。『正史』の曹操は巧みな戦術で追っ手を振り払ったが、『演義』では諸葛亮の五段構えの追撃で残り数十騎まで打ち倒されるのだ。関羽はその曹操にとどめを刺す役だったのだが、曹操は「関羽千里行」で関所の役人を斬った罪を不問にしたことを持ちだして助命を願ったのだ。関羽はこの恩義を返すため、曹操一行を見逃してしまったのだ。今日はここまでで続きは次回なのだ。」
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