ー奇談ー學校へ行こう6

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「……」

摩耶「治ってるね。さすが悠くん」
ぺちぺち

悠「もろ傷口だったところをぺちぺちしないでくれ」

神姫「……」

悠「神姫は神姫でデコピン構えるな。」

亘理『あー……』

悠「亘理は噛もうとするな!いつからそんなキャラになった……」

亘理『いや、なんか影薄い気がして』

悠「十二分に濃いっての」

千世子「はーい、劉備のじゅぎょーのつづきをはじめますのだ。『正史』に書かれている劉備の人物像は、『演義』の劉備とは大きく違うのだ。『演義』において、劉備は完璧な人格者として描かれているが、これは『演義』の脚色であって実際とは異なるのだ。」

亘理『悠ちゃん達って夏休みもう終わりだよね』

悠「まぁな」

摩耶「え、呼んだ?」

悠「キミは「まぁや」おれがいったのは「まぁな」」

摩耶「あっ、そっかー」

悠「もう、こいつぅ~」

神姫「……」

ピッ…ヒュッパン!
悠「ぎゃぴっ?!」

千世子「例えば劉備が黄巾族討伐の功績によって地方の役人になったとき、劉備は仕事の見回りにやってきた上位の役人が劉備に会わなかった事に怒り、棒でこの役人を200回も叩いたうえで木に縛り付けたのだ。もし劉備が漢王朝に忠誠を誓う人格者なら、これは絶対に許されない暴挙なのだ。」

摩耶「おー、いま大きくホーミングして悠君にあたった!」

悠「うぉぉ……今月はもう龍剄くらわずに済んだと思ったのに……」

神姫「いや、なんか悠の顔がムカついて」

亘理『なんて理由…』

悠「ぐうっ…焼けるような痛みぃ…」

千世子「もちろん劉備を人格者として描く『演義』ではこの話しは改変され、見周りの役人は賄賂を要求する悪人となり、役人を捕えて棒でたたいたのも劉備ではなく張飛の仕業に変えられているのだ。」

悠「これも神姫のやったことじゃなく他の誰かがやったことになるのだろうか」

神姫「じゃあ、雨」

雨「急にあたしに振るなよ」

悠「よくもやりやがったな!」

雨「やってないし何かの精神攻撃受けてんのかお前!」

千世子「『演義』では戦闘をほとんど関羽と張飛に任せきりにしている劉備だが、『正史』では特筆されるほど武勇に優れた人物とされており『演義』の軟弱なイメージはあまり感じられないのだ。中国では、人格的に優れている君主を有能な家臣が支えるのが理想とされていたので、『演義』は劉備の豪傑的な一面を抑えて描いたと思われるのだ。」

摩耶「悠君は精神攻撃効かないから」

雨「なんでよ?」

摩耶「既に歪んでるし」

神姫「考えかたもねじ曲がってる」

亘理『天邪鬼』

悠「なんだお前ら全員おれが大好きなのかこの野郎」

千世子「三国志研究家の坂口和澄は、著書『正史三国志群雄銘銘』で、劉備は生まれながらの「人徳の人」ではなく、そう見えるように演技した名役者だと主張しているのだ。」

ピッ……ドドドドドドドドン!
悠「かっ……!!」

摩耶「わぁ、ジョジョラッシュ並みに龍剄プレス連打で悠君がめり込んだ」

神姫「お前って言ったからね」

亘理『容赦ない&加減ない』

神姫「……私はもともと口より先に手が出る方だけど、悠に対しては普段の数倍くらい早く出しちゃうのよね。なぜか…」

千世子「はーい、そこドタドタしないでくださいなのだ。『正史』でも幼い劉備は「自分は皇帝になるんだ」と言っており、大きな野心があったことが窺えるのだ。その後自分に「人をひきつける魅力」があることに気づいた劉備は、大物を演じることで、その魅力を高めようとしたというのだ。以上、劉備のじゅぎょーだったのだ。」
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