ー奇談ー學校へ行こう6

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

悠「んーなんか眠い」

摩耶「膝枕してもらう?」

悠「誰に?」

摩耶「神姫さん、ほら、普通に今本読んでるからチャンス」

悠「なにその新手の自殺」

雨「睡眠じゃなく永眠になるわね」

千世子「もうじゅぎょーするから寝ちゃダメなのだ」

悠「はいはい、今日はなんすか。」

【甘寧&凌統】
本名:甘・寧・興覇
生没年:189~217

本名:凌・統・公積
生没年:189~237

千世子「個性豊かな呉の武将たちの中で甘寧と凌統は父の仇、ライバル、戦友という複雑な関係で後世にも知られている武将たちなのだ。」

神姫「膝枕くらいしてあげるわよ」

悠「どうせ本当に膝で枕ってオチだろ」

神姫「太股に首置いていいわよ」

悠「……無事は保障されてますか?」

神姫「……」

悠「黙られたよ……。」

千世子「甘寧は無法者の頭領として暴れ回っていたが、後に改心して、劉表の配下黄祖の下で働いたのだ。甘寧は戦場で活躍したが、ふたりは甘寧をまったく評価しなかったため、同僚の勧めで呉に寝返ったのだ。孫権のもとで一軍を預かった甘寧は、曹操や関羽という当代の英雄を相手に一歩も引かない戦いを繰り広げたのだ。」

亘理『膝枕ならあたしがしてやんよー!』

悠「いや、もう恐怖で目が覚めたし」

亘理『うー!』

悠「なんで激おこぷんぷん丸なんだ」

摩耶「……」

悠「無いわーって目で見ないで」

千世子「劉表や黄祖が甘寧を高く評価しなかった理由は、甘寧が小さな理由ですぐ人を殺す暴れ者だったからなのだ。しかし甘寧は他人に心を開き、優秀な人物に多くの褒美を与えたため、兵士たちに慕われていたのだ。また義理堅い性格で、受けた恩義は必ず返そうとしたのだ。こういった性質が孫権に好まれ、高い地位を得たのだ。」

神姫「無いわ」

悠「こっちからはハッキリ言われた」

雨「キモイ」

悠「次いったら本気で舌ねじ込む。絶対にだ」

雨「なんでだよっ!」

亘理『がるるっ!』

千世子「一方、凌統は父の凌操の代から孫家に仕えるエリートだったのだ。父の死後に軍勢を引き継いだ凌統は、戦の最中でも賢者と交流し、有能な人物を大事にしたのだ。戦場では切り込み隊長として活躍し、生傷が絶えなかったというのだ。」

神姫「悠こそ少し黙らないとねじ切るわよ」

悠「どこを?!」

摩耶「唇かな」

悠「ひぃ、想像しただけで痛い」

神姫「……」

雨「なにも言わないのが怖いな……。」

千世子「凌統は大真面目で、責任感のある人物だったのだ。ある時凌統は酒の席で、仲間の武将に父を侮辱され、怒りのあまりその武将を切り殺してしまったのだ。責任を感じた凌統は死んで詫びようと最前線で戦ったが、勝ってしまったので帰国してから自首し、自分を裁くように頼んだというのだ。」

悠「ごめんなー、雨、いいこいいこ」

雨「やめろキショイ!」

悠「これでもおれが舌ねじ込まないんだから、ねじ切られはしないだろう」

神姫「……」
ベシッ!

悠「ぶぎゅっ!」

千世子「『正史』のひとつ『呉書』の記述によると、凌統の父凌操は、黄祖の部下だったころの甘寧に殺されたため、凌統は甘寧を恨んでいたというのだ。甘寧は凌統を警戒して凌統とあおうとせず、孫権も凌統に仇打ちを禁じていたのだ。ある宴のとき、凌統が刀を持って舞い始めると、甘寧も危険を察知して「戟を持って舞う」と言い始めた。この二人が同じ席で武器を持っては大変と、呂蒙が止めに入らねばならなかったのだ。」

摩耶「鼻デコピンはされたね」

悠「な゛っどぐいがん……」

亘理『悠ちゃん、血出てる。血!』

悠「ズッ!!」

雨「啜るなよ……」

悠「ふんっ!ほら止まった」

千世子「『演義』では、その後戦場で危機に陥った凌統を甘寧が救い、二人は親友となるのだが、『正史』にはそのような記述はないのだ。孫権が二人を遠ざけ、同じ任地に赴任させなかった、という話しが伝わるのみなのだ。以上、甘寧&凌統のじゅぎょーだったのだ。」
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