ー奇談ー學校へ行こう
ー教室(1/7/夜)ー
毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。
トテトテと教卓の前まで歩いていき、千世子はコホンと咳払いした。
千世子「はい、みんな。じゅぎょーの前にお知らせがあるのだ。」
悠「なんだ?女の子にでもなったか?」
千世子「千世子は女の子なのだ?」
悠「あー、いや、そうじゃなっ…ぐぶっ!?」
神姫の裏拳が悠の顔面にめり込んだ。
花描「今のはピエロくんが悪いな。」
摩耶「うーん、ちょっとデリカシーが足りなかったかな」
千世子「よくわかんないけど、今日で「ドラゴン」の授業は最後なのだ。それで最後のドラゴンはこれ…」
千世子はいつものように黒板に書き出していく。
【ピアサ】
生息地域:イリノイ州(アメリカ)
伝承:ネイティブアメリカンの伝承
悠「痛っ…神姫さすがに裏拳はダメだろ。」
神姫「子供に妙なこというからよ。」
悠「ふぁい…」
千世子「ピアサはアメリカ合衆国を南北に横切る大河、ミシシッピ川の上流に伝承の残るドラゴンなのだ。このドラゴンは伝承によって外見が微妙に違い、そのなかには鳥に近い外見のものもあるから「ピアサバード」と呼ばれることもあるのだ。」
摩耶「どんな外見なの?」
千世子「子牛ほどの大きさの全身が鱗に覆われ、頭部はひげ面の人面に鹿の角。かぎ爪のある四本の足と三色の翼を生やし、長い尻尾は先端が二股に分かれているのだ。」
花描「あんまりドラゴンって感じはしないな」
悠「バードって呼ばれてるしな」
千世子「ただしこの姿は、ネイティブアメリカン「イリニ族」の伝承をもとに、想像で復元されたものなのだ。1673年にピアサの壁画を発見した神父たちの記録では、ピアサに翼があるという記述はないのだ。」
摩耶「なら、その壁画を確認したらいいんじゃない?」
千世子「残念だけど、神父たちが発見した壁画もすでに失われているのだ。だから、本当にピアサに鳥の翼があったかどうかはわからないのだ。別のネイティブアメリカン「アルゴンキン族」の伝承では、イリニ族のピアサと違って水棲の怪物であるなど、壁画のピアサとイリニ族のピアサが同じ存在だった保証もないのだ。」
花描「どんな伝承なんだ?」
千世子「イリニ族のピアサ伝承は、イリニ族の生存をかけた戦いの物語りなのだ。かつてピアサはイリニ族と仲良く暮らしていたのだ。あるときイリニ族の領地に別の部族が戦いをしかけ、たくさんの死者が出たのだ。肉食動物であるピアサは目の前に転がる新鮮な人肉にかぶりつき、その味の虜になってしまったのだ」
悠「据え膳食わねばだな」
神姫「それ、使い方違うから」
千世子「ピアサはそれ以来イリニ族の天敵となったのだ。このドラゴンは老若男女の区別なく上空から襲いかかり、かぎ爪で捕らえると別の場所に運んでむさぼり食うのだ。」
花描「まるで百舌鳥だな」
摩耶「やっぱり鳥っぽいね」
千世子「イリニ族はピアサを退治するため、おとり作戦を使うことにしたのだ。武装していない戦士の近くに精鋭20人を伏せておき、ピアサが戦士に襲いかかったところを逆襲するのだ。戦士は木を盾がわりにして上空から襲いかかるピアサの一撃目を防ぐ。そこに20人の戦士が襲いかかり、なんとかピアサを倒すことができたというのだ。」
悠「英雄や神じゃなくてもドラゴンを倒せるのはなんかいいな。」
摩耶「悠くんも出来るね。」
悠「そりゃまた話が別だ」
千世子「これでドラゴンのじゅぎょーは終わりなのだ。明日からは「飛竜(ワイヴァーン)」のじゅぎょーに入るのだ」
毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。
トテトテと教卓の前まで歩いていき、千世子はコホンと咳払いした。
千世子「はい、みんな。じゅぎょーの前にお知らせがあるのだ。」
悠「なんだ?女の子にでもなったか?」
千世子「千世子は女の子なのだ?」
悠「あー、いや、そうじゃなっ…ぐぶっ!?」
神姫の裏拳が悠の顔面にめり込んだ。
花描「今のはピエロくんが悪いな。」
摩耶「うーん、ちょっとデリカシーが足りなかったかな」
千世子「よくわかんないけど、今日で「ドラゴン」の授業は最後なのだ。それで最後のドラゴンはこれ…」
千世子はいつものように黒板に書き出していく。
【ピアサ】
生息地域:イリノイ州(アメリカ)
伝承:ネイティブアメリカンの伝承
悠「痛っ…神姫さすがに裏拳はダメだろ。」
神姫「子供に妙なこというからよ。」
悠「ふぁい…」
千世子「ピアサはアメリカ合衆国を南北に横切る大河、ミシシッピ川の上流に伝承の残るドラゴンなのだ。このドラゴンは伝承によって外見が微妙に違い、そのなかには鳥に近い外見のものもあるから「ピアサバード」と呼ばれることもあるのだ。」
摩耶「どんな外見なの?」
千世子「子牛ほどの大きさの全身が鱗に覆われ、頭部はひげ面の人面に鹿の角。かぎ爪のある四本の足と三色の翼を生やし、長い尻尾は先端が二股に分かれているのだ。」
花描「あんまりドラゴンって感じはしないな」
悠「バードって呼ばれてるしな」
千世子「ただしこの姿は、ネイティブアメリカン「イリニ族」の伝承をもとに、想像で復元されたものなのだ。1673年にピアサの壁画を発見した神父たちの記録では、ピアサに翼があるという記述はないのだ。」
摩耶「なら、その壁画を確認したらいいんじゃない?」
千世子「残念だけど、神父たちが発見した壁画もすでに失われているのだ。だから、本当にピアサに鳥の翼があったかどうかはわからないのだ。別のネイティブアメリカン「アルゴンキン族」の伝承では、イリニ族のピアサと違って水棲の怪物であるなど、壁画のピアサとイリニ族のピアサが同じ存在だった保証もないのだ。」
花描「どんな伝承なんだ?」
千世子「イリニ族のピアサ伝承は、イリニ族の生存をかけた戦いの物語りなのだ。かつてピアサはイリニ族と仲良く暮らしていたのだ。あるときイリニ族の領地に別の部族が戦いをしかけ、たくさんの死者が出たのだ。肉食動物であるピアサは目の前に転がる新鮮な人肉にかぶりつき、その味の虜になってしまったのだ」
悠「据え膳食わねばだな」
神姫「それ、使い方違うから」
千世子「ピアサはそれ以来イリニ族の天敵となったのだ。このドラゴンは老若男女の区別なく上空から襲いかかり、かぎ爪で捕らえると別の場所に運んでむさぼり食うのだ。」
花描「まるで百舌鳥だな」
摩耶「やっぱり鳥っぽいね」
千世子「イリニ族はピアサを退治するため、おとり作戦を使うことにしたのだ。武装していない戦士の近くに精鋭20人を伏せておき、ピアサが戦士に襲いかかったところを逆襲するのだ。戦士は木を盾がわりにして上空から襲いかかるピアサの一撃目を防ぐ。そこに20人の戦士が襲いかかり、なんとかピアサを倒すことができたというのだ。」
悠「英雄や神じゃなくてもドラゴンを倒せるのはなんかいいな。」
摩耶「悠くんも出来るね。」
悠「そりゃまた話が別だ」
千世子「これでドラゴンのじゅぎょーは終わりなのだ。明日からは「飛竜(ワイヴァーン)」のじゅぎょーに入るのだ」