ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(1/6/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

千世子「はーい、じゃあ今日のじゅぎょーはこれなのだ。」

昨日でアジ・ダハーカの授業が終わったので、千世子は新しいドラゴンの名前を書き出していく。

【ムシュフシュ】
生息地域:バビロニア(イラク)
出典:バビロニア神話

摩耶「ムシュフシュって前に少し話しにでたよね」

悠「あぁ。」

千世子「ムシュフシュはドラゴンのなかでももっとも古い由来を持つドラゴンなのだ。なんとムシュフシュの伝承のうち、もっとも古いものは現在から4000年前、日本がまだ縄文時代だったころに文献に記されたものなのだ。」

花描「4000年ねぇ」

悠「1万年と2000年前から愛すこともある。」

神姫「意味不明」

千世子「ムシュフシュは、中東のイラク共和国がある地域にかつて存在した国「バビロニア」の神話に登場するドラゴンなのだ。その名前は「怒りの毒蛇」を意味し、頭と胴体、尻尾はヘビだが、前足はライオンの足、後ろ足はワシの足に似ていて、目の上には二本の角があるのだ。」

摩耶「ドラゴン?」

悠「ま、キマイラやキメラにも近いわな。」

千世子「別の神話では、サソリの尾や翼が生えていることもあるのだ。バビロニアでは、ムシュフシュは神聖な獣と考えられていて、海と水の神「マルドゥク」や、多産や知恵の神「ニンギシュジダ」などの神と一緒に描かれることが多いのだ。」

花描「怒りの毒蛇なのに神聖な獣か」

千世子「また、ムシュフシュには魔除けの力があると信じられてるのだ。神殿などの入り口に、ムシュフシュをかたどった像を置くことも多かったのだ。けど、ムシュフシュが神聖なドラゴンになったのは、バビロニアに神だけでなく人間が暮らす時代になってからの話なのだ。それよりははるか昔の神話時代では、ムシュフシュは神々と対立する怪物だったのだ」

摩耶「じゃあ、敵対してたのに殺されも封印もされてないドラゴンなんだね」

千世子「バビロニアの天地創造神話「エヌマ・エリシュ」によれば、大地も天空も存在しなかった昔、世界には男神アプスーと、その妻ティアマトだけが存在していたのだ。」

花描「イザナギ、イザナミみたいなものか」

千世子「この夫婦はたくさんの神を生み出すが、子供たちによって夫のアプスーが殺されてしまった。怒り狂ったティアマトは、復讐のために11種類の怪物を生み出すのだ。このうちの1体がムシュフシュだったのだ。」

摩耶「盛大な親子喧嘩だね」

悠「親子戦争だろ」

千世子「この戦いはティアマト側の敗北に終わるのだ。ムシュフシュはマルドゥクという神に敗れたけど生き残り、マルドゥクの乗り物になったのだ。こうして聖獣となったムシュフシュは、魔除けとして壁画などに描かれるようになったのだ。じゃ、今日のじゅぎょーはここまでなのだ。」
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