ー奇談ー學校へ行こう6

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

摩耶「んー……」

悠「どした、珍しく眉を八の字にして」

亘理『蜂の字?!』

悠「……」

亘理『無視されたよ』

悠「虫だけにな」

亘理『きぃー!』

【荀彧】
本名:荀彧:文若
生没年:163~212

千世子「乱世の世において、君主と軍師は一心同体の存在なのだ。軍師は君主に知恵を授け、君主はその知恵を活用して軍師の夢を実現するのだ。だがなかには、軍団を勝利に導きながら、夢叶うことなく散っていった悲劇の軍師も居るのだ。」

悠「それでどした?」

摩耶「ちょっと汗疹がイタ痒くてね」

悠「あー、摩耶は皮膚が弱いからな。皮膚科行くか?」

摩耶「大丈夫、まだ漢方油膜軟膏あるし」

亘理『漢方?』

摩耶「臭い塗り薬」

亘理『えっ?』

千世子「荀彧は、漢王朝の重臣を出した名家に生まれた。王を補佐する才能「王佐の才」の持ち主だとさえ言われた天才荀彧の望みは、漢王朝に忠誠を誓う有力者を補佐して、衰えつつあった漢王朝を再建する事だったのだ。」

摩耶「漢方の油膜軟膏は豚の脂とかゴマ油を混ぜたりしてるからね」

悠「効果はあるんだよな。ステロイドとか混ざってないし」

亘理『でも、臭いのかぁ……』

悠「っか、神姫も汗疹とかならないのか?」

神姫「なんで?」

悠「その谷間。絶対に汗溜まるだろ」

千世子「はじめ荀彧が目をつけたのは、漢王朝の名門貴族で、中国北方に大きな勢力を持つ「袁紹」だったのだ。荀彧は袁紹に仕えることになったが、しだいに袁紹の器の小ささが目につくようになったのだ。そして荀彧は袁紹の元を離れ、曹操の軍師となったのだ。曹操は袁紹にかけている決断力を持ち、部下の意見をよく聞いたのだ。曹操こそ漢王朝をたてなおす大人物だと見込んでいた荀彧は、曹操に多くの人材を紹介し、「皇帝を保護して政治的に強い立場を得る」という重要な策略を献上したのだ。」

神姫「そうも、正直気を着けとかないと汗疹が出来ちゃうわね。こことか……」

悠「おおぅ……絶けぃぃっ?!」

神姫「……」

ギリリリッ……ギリッ!!
悠「……っ~~!!」

摩耶「あー、窒息するねアレ」

神姫「……」

千世子「曹操にとっても荀彧は、唯一弱音を吐ける友人であり、自分の背中を任せられる、信頼できる部下だったのだ。曹操は荀彧を、漢王朝建国の立役者になった軍師、張良に例えて「我が子房である(子房は張良の字)」と誉めたというのだ。」

ギリリリ……スッ…
悠「……」

亘理『動かなくなった……けど、幸せそうな笑顔だ』

摩耶「まぁ、胸で呼吸停止なら本望かもね」

神姫「首の骨も狙えば良かったかもね」

亘理『それって本気で死んぢゃいません?』

千世子「曹操に漢王朝再建の夢を託した荀彧だったが、その夢はかなわなかったのだ。曹操は袁紹を倒して中国最強の実力者になると、漢王朝を滅ぼし、自分が皇帝になる野心を持ち始めたのだ。もちろん荀彧は反対したが、聞き入れられなかったのだ。夢破れた荀彧は、苦悩のあまり身体を壊して病死したというのだ。」

摩耶「こういう場合は乳死とでもいうのかな」

亘理『乳圧死?』

悠「なかなかの桃源郷だったよ。」

亘理『復活早?!』

神姫「やっぱり首をしっかりと絞めないとダメね……。」

千世子「荀彧の死の経緯には、もっとドラマティックな逸話もあるのだ。曹操が皇帝になることを反対したあと、荀彧は曹操から空の弁当箱が送られて来たのだ。曹操の意図を知った荀彧は、みずから命を絶ったというのだ。空の弁当箱の意味は資料には書かれていないけど、中国古典文学研究家の渡辺清一がおもしろい推測を発表しているのだ。弁当箱をもらった荀彧が、正直に箱はからだったと言えば「空の箱など渡すわけがない、無礼な奴め」と処刑されるのだ。適当な中身をでっちあげれば「そんなものは入れていない、嘘つきめ」と処刑されるのだ。どちらにしても荀彧は処刑される、つまり死ねと言う意思表示だというのだ。以上、荀彧のじゅぎょーだったのだ。」
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