ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(1/5/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

教室のドアを開けて入ってきたのは悠と神姫だった。二人は隣どうしに席についた。

悠「ここ最近はろくな目にあわんな…」

神姫「日頃の行いのせいじゃない?」

悠「散歩好きで音楽の趣味がいい小市民の日頃の行いなんか良くも悪くも無いだろ」

神姫は悠を無視して膝の上でノートを開いた。

悠「無視かよ」

花描「まぁ、無視られても仕方ないような戯れ言だったし。」

摩耶「受ける~♪」

悠「受ける~♪じゃねぇよ!っか、戯れ言とはなんだぁ!」

悠は両手を上げて叫んだが、神姫にうるさいっ!と一蹴されて椅子のうえで小さくなった。

千世子「神姫ねーちんはすごいのだ。じゃ、悠のあんちんが静かになったところで昨日の続きをするのだ。」

摩耶「たしか「王書(シャーナーメ)」の話が出たところだったよね」

花描「ゾロアスター教の神々がみんな人間になってるんだよな」

千世子「そうなのだ。イスラム教は唯一神「アッラー」を進行する宗教で、神はこの世にひとりしかいないと教えているので、アッラー以外の神は存在してはいけないというわけなのだ」

悠「唯一神といえばタシロだよな」

神姫「意味は解らないけどたぶん、そういうのが日頃の行いの悪い部分だと思うわ。」

花描「ズバリいい当てられたな」

摩耶「受ける~♪」

悠「受ける~♪じゃ、ねーっーの!」

千世子「じゅぎょーをきくのだ!」

生徒全員にチョークを投げ付けた。

花描へ向かったチョークは目の前で真横に反れる。

摩耶へ向かったチョークは指先一本で弾いた。

神姫へ向かったチョークは見えない壁が押し潰したように粉々に砕け散った。

そしてそのすべてのチョークや破片は悠に直撃した。

悠「痛、痛、痛っ痛たたたた!?なにこれフルヒット!?」

摩耶「せーの…受ける~♪」
花描「受ける~♪」
神姫「受ける…」
千世子「受ける~♪」

悠「それは、もうええちゅんじゃい!」

千世子「っで、アジ・ダハーカは「王書」に「ザッハーク」という名前で登場するのだ。ザッハークはアラブの国の王子で、悪魔に魅入られて父親を殺し、王位を奪った人間なのだ。」

摩耶「悠くんは色んなのに魅入られてそうだよね」

悠「うるさいよ」

千世子「ところがなのだ。悪魔の差し金により、ザッハークの両肩からは黒い蛇が一匹ずつ生えてきたのだ。もちろんザッハークはこの蛇を取り除こうとしたが、何度斬ってもすぐ再生してきたのだ」

花描「呪いだな」

千世子「底意地の悪い悪魔は、医者の姿に変装して「蛇を殺すには、毎日人間の脳みそを与え続けるしかない」と説明したのだ。ザッハークはこの言葉を信じ、国民を毎日ふたり殺して蛇に食べさせたのだ。けどそんな彼も最後は英雄に倒されて、アジ・ダハーカの神話とおなじ山に幽閉されるのだ。はい、今日のじゅぎょーはここまでなのだ」

悠「はぁ、今日もひどい目あったぜ…」
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