ー奇談ー學校へ行こう6

ー教室ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業が始まろうとしていた。

【曹丕】
本名:曹・丕・子桓
生没年:187~226

悠「小さい扇風機ってバカにならないな」

摩耶「っていうと?」

悠「あまりにも夜寝苦しいから、寝るときだけ回してみたんだが……めちゃ快適」

亘理『自室にエアコンないの?』

悠「あるよ。けど、おれはエアコンかけて寝るとお腹痛くなるの」

千世子「三国のひとつ「魏」の初代皇帝は曹操と思われがちだが、実は違うのだ。確かに魏の基礎を作った人物だが、立場上は漢王朝の臣下に徹していたのだ。帝王となり魏の王朝を開いたのは、曹操の後を継いだ曹丕なのだ。」

神姫「変なところでナイーブで気持ち悪いわね」

悠「繊細な部分を気持ち悪いと言われた」

摩耶「正露丸飲んどけばよくない?」

悠「夏のあいだ正露丸漬けはイヤだ」

雨「ジャンキーだわね」

千世子「曹操とその側室のあいだに生れた曹丕は、曹操から見ると三人目の子供なのだ。幼いころから剣術や馬上での弓術を得意としていた曹丕は、わずか十一歳のころから曹操の軍に従軍していたというのだ。」

悠「十一と言えば馬鹿やってたな」

神姫「十一歳といえば……五龍を会得できた頃だったかしら」

摩耶「思いだしたくないなぁ」

亘理『同じく……。』

雨「……まだ、人型にはなれなかったわね」

千世子「また詩人や文人としても才があり、現代でも詩人として名高い父曹操、弟曹植(そうしょく)にも負けない優れた作品を残しているほか、中国最初の文学評論書「典論」を書き残しているのだ。まさに文武両道の人物だったのだ。」

悠「おれにぴったりな言葉が出たな」

神姫「そうね」

悠「……」

神姫「……」

悠「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

摩耶「自分の発言に耐えられなくなってる」

雨「めんどくさっ」

千世子「曹操は子宝に恵まれ、先ほど説明した曹植をはじめとして、曹丕以外にも才能ある男子がいたが、曹丕は協力者の助言をよく聞き、苛烈な後継者争いを勝ち残ったのだ。」

摩耶「神姫さんところは後継者争いとかないの?」

神姫「ないわ。ただ、長兄が継がないことだけは確かね。継がせもさせないだろうけど」

悠「神姫んところももめてるんだよな」

神姫「悠みたいに全方向から敵意を向けられてるわけじゃないわよ。兄が私と父の敵なだけ」

悠「全方向って……」

千世子「政治にも軍事にも精通した曹丕だが、後世の歴史家による評価は非常に厳しいなぜなら曹丕は非常に陰険で残忍な性格だったからなのだ。」

神姫「いるわよね。ひどい性格のヤツ」

悠「ですね」

神姫「なに?」

悠「なにもいってませんよっ?!」

千世子「曹丕は若い頃、年上の親戚「曹洪」金を借りようとして断られたことがあるのだ。曹丕はこれを根に持っており自分が曹操の後を継ぐと、曹洪を無実の罪で処刑しようとしたのだ。また、父の時代に敵に降伏した「于禁」という武将が解放されて帰ってくると、彼自身が無様に命乞いしている絵を見せて、その誇りを辱めたのだ。そのほかにも後継者の座を争った弟に無理難題を押し付けて殺そうとしたり、自分の妻に自殺を命じるなど、曹丕の陰湿さを示す逸話は「正史」「演義」とともに数え切れないほど多いのだ。」

亘理『正史とか演義って何?』

摩耶「歴史書が正史で、小説が演義だよ」

悠「ああん、ボケれなかった」

千世子「人格面が批判される曹丕だが、その政治者としての才能はすぐれていたのだ。曹操が築いた魏の地盤を固めるべく内政に力を入れ、学問を奨励し法律の整備を進めたのだ。軍事面では単独に動かず、蜀と呉が争ったときに漁夫の利を狙うなど、堅実で抜け目のないところを見せているのだ。」

神姫「漫画でもあるけどね。」

悠「げぇっ、関羽!?」

摩耶「っの、元ネタは横山光輝作品ね」

亘理『へぇー、悠ちゃん持ってる?』

悠「そんなの全巻あるよ」

亘理『今度よろしく』

千世子「39歳の若さで病死したためその治世は7年と短かったが、魏の地盤を固めた功績は大きいのだ。日本では、曹丕は優秀な二代目の例として徳川幕府の基礎を固めた二代将軍徳川秀忠と並び称されることが多かったのだ。以上、曹丕のじゅぎょーだったのだ。」
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