ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(1/4/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

千世子「あんちん、直し終わったのだ?」

悠「あー、なおしたよ」

神姫「これに懲りたら妙なことは言わないことね」

悠「その前に問答無用で投げるのをヤメロや」

神姫「ふん。」

摩耶「あはは、仲がいいね。」

悠「さすがに投げられて仲が良いはないぞ。」

花描「ま、いんでね?誰も怪我ないし」

悠「擦り傷だらけだよ!」

千世子「じゅぎょーをするのだ!」

「「「はーい」」」

千世子「さて、昨日の続きで…善の神に破れたらアジ・ダハーカがとどめを刺されず、地下に閉じ込めるという中途半端な手段で封じられている理由は、この竜の体そのものにあるのだ。」

摩耶「不死身系?」

千世子「ハズレなのだ。じつはアジ・ダハーカの体の中にはトカゲやサソリなど、ゾロアスター教の教義で邪悪とされている生物が無数に詰まっているのだ。」

花描「病気を振り撒く蜘蛛なら地下に居るけどな」

摩耶「なんの話し?」

花描「ま、こっちのことかな」

千世子「アジ・ダハーカの体に傷をつけるとこれらの生物が外界にあふれるので、神はこの竜を殺すことが出来なかったのだ」

神姫「臭いものに蓋ね」

悠「手厳しいな神姫は」

千世子「地下に幽閉されているアジ・ダハーカは、世界が終わるときに必ずよみがえるというのだ。このとき世界は一時的に闇の勢力に支配され、アジ・ダハーカは人間や動物の1/3をむさぼり食って暴れまわるのだ。しかし、最終的には善の勢力が力を取り戻し、アジ・ダハーカも善の英雄に殺される運命にあるのだ」

悠「結局善が勝つオチなんだよなぁ」

摩耶「正義は勝つてね~」

千世子「ちなみに、ゾロアスター教がペルシアの主な宗教だったのは、日本の古墳時代にあたる4世紀までだったのだ。その後ペルシアではイスラム教が国の宗教となり、ゾロアスター教徒は迫害されるようになっていくのだ。」

花描「宗教は怖いな。」

摩耶「じゃあ、アジ・ダハーカはなくなったんじゃないの?」

千世子「そうじゃないのだ。アジ・ダハーカの物語はイスラム化したペルシアで、その後も長く生き残ったのだ。これがイスラム教の国教化から約700年後、11世紀に誕生した物語集「王書(シャーナーメ)」なのだ」

摩耶「王書?」

悠「ゾロアスター教の物語をイスラム教の教えにしたがって改変した書物だよ。ゾロアスター教の神々がみんな人間として登場してるのがとくちょうぢぃ~」

悠の垂れ下がった前髪を千世子が思いきり引っ張って口弁を止めた。

千世子「ち~よ~こ~が~せんせ~なの!」

悠「痛たたたたた!?抜ける抜けるから!」

摩耶「あはは、今日はここまでかな」

神姫「終わりなら私は先に帰るわよ」

花描「俺はもうちょい見てるかな。」
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