ー奇談ー學校へ行こう

ー教室(1/3/夜)ー

毎夜行われる、浮き世離れした夜の授業。
今日も取り壊されないまま、時代から取り残された廃校で授業がはじまろうとしていた。

千世子「はぁーい。それじゃあ、出席をとるのだ。悠のあんちん、まーや、神姫ねーちん、かびょー。」

悠「へーい」

摩耶「はーい、元気でーす」

神姫「いるわ」

花描「いるぜ。」

千世子「全員いるな~。じゃ、今日のドラゴンはこれなのだ」

千世子は黒板に文字を書き出していく。

【アジ・ダハーカ】
生息地域:ペルシア
出典:ゾロアスター教、ペルシアの英雄物語

摩耶「ペルシアってどこだっけ。」

神姫「現在のイランよ」

千世子「そうなのだ。今から約3000年ほどまえ、中東の国イランが「ペルシア」と呼ばれていた頃、この地に「ゾロアスター教」という宗教が誕生したのだ」

花描「ゾロアスター教か…たしか「光と闇」「善と悪」とかが対立する世界が成り立ってて、最終的に善の側が勝つっていう思想の宗教だったな」

悠「ゲロ吐きそうな思想だな」

神姫「吐き気のするくらいにしときなさい」

摩耶「どっちも同じ意味だよね」

千世子「アジ・ダハーカはゾロアスター教の経典「アヴェスタ」に登場する悪の竜で、善の英雄によって倒される運命を与えられているのだ。」

悠「はは、ますますゲロ吐きそうだ」

花描「ピエロ君は正義アレルギーかなんかか?」

千世子「アジ・ダハーカの「アジ」は、竜や蛇を意味する言葉なのだ。そのためアジ・ダハーカを「ダハーカ竜」と表記する書籍もあるのだ。その外見や能力は、よく「3つの頭と3つの口、6つの目があり、1000の術を使いこなす」と表現される。また巨大な翼を持っていて、羽を広げると空が隠れてしまうのだ。」

悠「神姫の親戚に九頭竜アジ・ダハーカさんはいるか?」

神姫はゆっくりと立ち上がって悠の後ろに立つと、悠を椅子ごと真後ろにぶん投げた。

悠は床板を割りながら教室の端まで投げ飛ばされて、サイバイマンに自爆されたヤムチャのように動かなくなった。

千世子「あんちん、後で直しとくのだ」

摩耶「今の無げはプロレスだね」

花描「ひゅ~、アグレッシブだな」

悠の心配は誰もせずに授業は再開された。

千世子「ゾロアスター教の世界では、世界最後の日がくるまで、神が率いる善の軍団と悪の軍団が戦い続けているのだ。アジ・ダハーカは悪神がつくった怪物たちの中でも悪名高い実力者であったのだ。アジ・ダハーカの目的は、この世に存在するすべてのものを破壊することであり、まさに悪役と呼ぶにふさわしいのだ。」

摩耶「破壊神ならぬ、破壊竜だね。」

千世子「だけど「善が勝利する」というゾロアスター教の基本理念のせいか、アジ・ダハーカが善の神に勝利したことは一度もないのだ。現在は、アジ・ダハーカは善の英雄に倒され、聖なる山の地下に閉じ込められているというのだ。さて、今日のじゅぎょーはここまでなのだ。続きは明日なのだ」

摩耶「よぉし、悠くんを起こそうかな~」
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